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第八十七話 すべては林山(星影)のために

「それはそうと魏忠殿、こんな時間にいかがされました?」



不審者と警戒されてもおかしくない時間にやってきた訪問者・魏忠

昼間知り合った虎の世話係を部屋に招き入れ、茶を差し出しながら尋ねる琥珀。


「お礼を述べても帰られないということは・・・なにかご事情があるとお見受けしましたが?どうぞ。」

「え?は、あ・・・!?こ、これはすみません・・・」


出された高価な茶を、恭しく受け取りながら頭を下げる男。


「あ、あの・・・お茶だけでは味気ないので、なにか甘いものでも・・・」


二人のやり取りに、おずおずとした様子で空飛が干した杏子を持ってきた。


「空飛。」

「ど、どうぞ。」

「ああ!これは、申し訳ありません!!」


空飛の心遣いに、慌て頭を下げる魏忠。

先ほどまで、林山をめぐって修羅となっていたがそれももう落ち着いていた。

こうしたやり取りも、空飛が落ち着いたのを見計らってから起こした行動だった。

魏忠が杏子を受け取ったのを見届けてから、さりげない口調で琥珀は聞いた。


「そもそも、このような時間に尋ねてこられるということ事態、何やら仔細があるとお見受けいたしましたが?」

「え・・・えぇ、はい・・・!」


相手の言葉に、いろんな意味で流した涙をぬぐいながら男は言う。


「実は・・・お礼を述べたかったのはもちろんですが、今宵このような時間にお尋ね致しましたのには、それなりのわけが・・・」


そう言いかけた男は、何かに気づいたように部屋の中を見回しながら言った。


「あの~」

「いかがなさいました?」

「安様はどちらへ?」

「え?」

「・・・林山に何かご用で?」

「は、はい。安様にお願いしたいことがございまして、失礼を覚悟でこの時間に押し掛けたのですがーーーー・・・こちらは、安様のお部屋ですよね?」


(あれ?これってまずいですか・・・!?)


虎の世話係の言葉に固まる空飛。

林山が毒で倒れたことは、自分達のみしか知らないこと。



「この件は、他言無用とします。安林山殿が毒を盛られたなどと宮中に知れ渡れば、高貴な方にあらぬ嫌疑がかかりますからね!よろしいですね・・・!?」



そうきつ~く、元上司である黄藩様から命じられた。

彼の言う通り、ただでさえ林山は宮中で目立っていた。

それが良い意味ばかりとは限らない。

黄藩が言う『高貴な方』が誰を指しているのか、要領の悪い空飛でもわかっている。


【皇帝陛下の姉ともめた宦官が、その直後に毒を盛られて倒れた。】


そう聞けば、誰もが毒を盛った犯人が宦官に負かされて、恥をかいた元・皇女だと単純に思うはずだ。

証拠がなくても、噂のみで罪人にされることなど、宮中ではよくあること。

しかも、その相手が相手である。

林山が毒を盛られたこと以上に、大きく騒ぎ立てられるのは目に見えている。

なによりも、それが何者かの罠であったとしたら、それによる犠牲者を出してはいけない。


だから、秘密にする必要があった。

今の時点で、周囲はこの事実を知らない。

絶対に知られてはいけないのだ。

いけないのだが―――・・・・・



「安様のお部屋だとお聞きして参ったのですが・・・安様はどちらに?もしや、厠でございますか?」



早速その秘密が、バレそうになっている。


(こ、これはまずいですぅ~!!)


ここで迂闊なことを言えば、怪しまれるどころか、林山が暗殺されかけたことがばれる可能性があった。



(何とか誤魔化さないとっ!!)



「あ、あのですね!」

「あいにくここにはいません。」


何とか言いくるめようと、口を開いた空飛の言葉を遮ぎるように琥珀が言った。


「申し訳ない、魏忠殿。林山はここにはいません。」

「琥珀ぅ!!?」

「魏忠殿なら言っても大丈夫だよ。」


そう言うなり、不思議そうにこちらを見る男に向かって言った。


「実はですね・・・林山は今、私の部屋で酔いつぶれて寝ていまして。」

「えっ!?」

「王様のお部屋で!?」

「はい。実は、陛下からお酒を賜り、私達と一緒に飲んでいたのですが、したたかに酔ってしまいまして。おまけに、古傷も治っていない時に深酒をしたために一気に疲れも出てしまったらしく―――・・・今は私の部屋の寝台で夢の中ですよ。」

「それは・・・しかし、なんで王様のお部屋で?」

「どうしてでしょうね~なぜか、酒盛りをする際に私の部屋ということになりまして。その場の流れというやつでしょうか?けっきょく寝台を取られた私は、お返しということで今夜は林山の部屋で寝ようと、こうしてこの部屋に居座っているわけでして。」

「そ、そうなんですよ!アハハハ。」

「さらにいえば、我々二人は少しばかり飲み足りず、こうして林山の部屋で魏忠殿が訪ねてくるまで、酒盛りをしていたという次第です。」

「そうだったんですか。」


琥珀のウソにすっかりだまされる男。


(さすが琥珀ですね!だけど・・・よくそれだけ、嘘が思いつけますね・・・。)


友の弁舌に感心しつつも、内心では眉をひそめる空飛。



「では、安様にお願いごとをするのは無理なようですね・・。」

「お願い事ですか?」

「はい・・・。」

「林山に何を頼まれるつもりだったのですか?」


琥珀の問いかけに、男は口ごもる。


「あの・・・私達でよければ、お力になりますが?」

「いえ、張様。そのお言葉はありがたいのですが・・・」

「なにか?」

「・・・恐れながら、お二人ではちょっと・・・。」

「頼めないことだと?」

「あ、いえ!その・・・・」


琥珀の言葉を否定しつつも、あながち間違いではないようだった。


「わかりました。出来る出来ないは別としまして、お話だけでもお聞きしますよ?」

「王様。」

「いかがでしょう?」

「それでは・・・・失礼ながら言わせていただきます。」


そういうなり、突然その場に座り込む魏忠。

二人が驚く前に、男は頭を下げながら言った。




「お願いします!!どうか、安様を半刻だけでいいのでお貸しください!!」




「「はい?」」



それはあまりにも、突拍子のないお願いだった。



しかも内容が内容だけに、



「魏忠殿・・・」

「はい!!」

「あなた・・・林山を狙っているのですか・・・!?」

「空飛っ!」


震えながら言う張飛の言葉を、琥珀が強く制した。


「なにを言ってるんだい、君?」

「だってそうでしょう!?あの人、やっぱり林山を狙っー」

「よさないか。」


誤解を招きかねない親友の発言。

慌てて口をふさぐ琥珀。


「むぅ!?」

「やめるんだ。」


なんでです!?

だってそうじゃないですか!?

けが人を・・・建前で酔いつぶれたと言っているにもかかわらず、貸してくれなど言うのですよ!?


(刺客だと疑わない方がおかしいじゃないですか!?)


目で訴える空飛に、琥珀が口を開きかけた時だった。



「誤解ですっ!!」



叫んだのは魏忠。


「・・・・なにが誤解だと言うのですか?」

「むーむー!」


それに冷淡な口調で尋ねる琥珀と、琥珀に口を閉ざされつつも「そうだ、そうだ」と抗議する空飛。

空飛はともかく、琥珀の言葉を受けて、相手は赤面しながら言った。



「わ、私はー・・・安林山様に、横恋慕しているわけではございません!!」


「「はぁ?」」



「た、確かに見目麗しく、心根も美しい方ですが―――皇帝陛下の愛妾に、そんなっ!畏れ多い!!」



相手からの一連の発言で理解する。



(もしやこの男ー・・・)


(私達が、安林山に心奪われ、真夜中に忍んできたと勘違いしたと思って弁護をしている・・・?)



なによりも、


「あ・・」

「愛妾って・・」



林山が聞いたら、怒りますね・・・。


ああ、間違いなく怒るだろうね・・・。



目と目で語り合いながらうなずく親友二人。



「ですから違います!!誤解です!!そういう意味ではないです!!」



その様子をさらに誤解しながら弁護する男。

空飛の言葉を上手く誤解してくれた相手への安堵と、いつまでも騒がせておくわけにもいかないという思いから琥珀は口を開いた。



「ではなんと?」


「わ、私が言いたいのは――――・・・紅嘉のために、半刻お時間を頂けないかと思いまして!」


「「紅嘉の?」」



琥珀の問いに、言いにくそうに男は言う。

これに、再度化を見合わせる林山の親友達。


(虎が、林山になんの用だと言うのですか??)


特に空飛など、まじまじと相手を凝視していた。

それを受けつながら、男はそう頼んだ理由を口にし始めた。



「実は・・・あれからずっと泣いているんですよ。」

「泣いているとは・・・」

「誰がですか?」

「紅嘉です。」

「吠えているということですか?」

「いいえ!悲しくて泣いてるんですよ!」

「え!?虎が、泣くのですか?」


鳴くのではなく、泣く。

あまり聞かない言葉に聞き返せば、相手は胸を張りながら答える。


「泣きますよ!!そりゃあ・・・人間のようには泣きませんが、ずっと低い声で悲しそうに泣いているんです!」

「はぁ・・・。」

「安様が別れ際に、あいつの頭や顔をなでてくださいました。それをあいつは嬉しそうにしておりまして。だから、安様が去って行かれてからずっと・・・どんなに私があやしても、泣き止まないのです。」

「つまり魏忠殿は、いかがなさりたいのです?」

「その・・・安様が現在、陛下を守る際に負った傷で苦しんでいらっしゃるのはわかります。わかりますが・・・!」


そう言って拳を握りしめると、意を決したように言った。


「どうかお願いします!!少しだけ、ほんの少しだけでいいので、紅嘉に会ってやっていただけませんか!?」

「ええ!?」

「ほんの少しでいいのです!ほんの少し、ほんの――――半刻でいいですから!」

「魏忠殿。」

「半刻の間だけでいいですから、お時間頂けないでしょうか!?その半刻の間で、なんとかなだめさせますから!!ですから、どうか!どうか・・・!!」

「それはー・・・!」

「無理ですよ!」


今度は、空飛が琥珀の言葉を遮った。


「空飛。」

「無理です!そんなことできません!!」


毒から回復したとはいえ、林山が重病人には変わりない。


(そんな体で歩かせたら、また具合が悪くなるじゃないですか!!)


「林山に無理はさせられません!」

「張様!」

「・・・・空飛の言う通りです。おまけに今は、酒を浴びている。まともに動けません。」

「王様!」

「なので、お引き取りください。」

「わかっています!ご無理はわかっています!」

「でしたら・・・」

「申し訳ありません・・・!本当はこんな非常識なことをお頼みするのは失礼と心得ております!ですが、紅嘉のいる小屋は、平陽公主様のいらっしゃる場所の近く・・・!『鳴き声を黙らせろ!』というお達しが下り、黙らせなければ、あの子に何をされるか・・・!」

「だからと言って・・・・林山を貸すわけには。」


(そうですよ!紅嘉より先に、林山の寿命が尽きてしまうじゃないですか!?)


否という返事をする琥珀に、口には出さずにそう思いながらうなずく空飛。

それでも魏忠は、諦めることなく食い下がってきた。


「そこをなんとか!!」

「・・・・無理ですね。」

「そこをなんとかっ!」

「酒づけになってしまっている怪我人は貸せません。」

「そこをなんとかぁ!!」

「お気持ちはわかりますが、魏忠殿、」

「いい加減にしてくださいませ!」

「空飛。」


繰り返される問答に、少し苛立ち気味に空飛は声を出した。


「あなたが、紅嘉殿を大事に思うお気持ちはわかりますよ!?ですが、それと同様に、私だって林山が大事なんです!」

「それは―――重々承知して・・・」

「でしたら、これ以上申されますな!ただでさえ林山は!!安殿は重―――」

「空飛!」


眉を顰めながら友の言葉を諌める琥珀。

その表情と声で、我に返る空飛。


「あ・・・!ご、ごめんなさい、琥珀・・・!」


(私、思わず余計なことをー・・・・!)


慌てて口を紡いだ親友を横目で見てから、床にひざまずいて頼む男に目を向ける琥珀。

そして、相手の側に膝をつきながら優しい声色で言った。


「紅嘉殿は・・・それほど嘆いているのですか?」

「はい!それはもう、大変な騒ぎようで・・・!だから、平陽公主様も!」

「それゆえ魏忠殿は、安林山殿と紅嘉殿を合わせれば、紅嘉殿が落ち着くのではないかと思われたのですね?」

「はい・・・。安様が去られた方角に向かってしきりに鳴くのです。顔につた香を落とす時も、嫌がって大変でしたから。」

「香を・・・ですか?」

「ええ。安様の臭いがついているみたいで・・・それで、おそらく。」

「・・・わかりました。では、こうしましょう。」


そこまで話を聞いてから琥珀は1つの提案をした。


「残念ながら、今の安林山殿の体調を考えれば、彼を紅嘉殿会わせることは絶対にできません。」

「そんな!!」

「ですが・・・・林山殿の臭いが付いたものを、紅嘉殿に届けることはできます。」

「え!?」

「姿かたちがなくとも、慕う者の臭いがするものならば、きっと紅嘉殿も大人しくなるのでは?」

「----ああ!なるほど!!その手がありましたか!?」

「いかがでしょう?」

「是非!是非お願いいたします!」

「では、そのように・・・。」


そう言うと、ゆっくりと立ち上がる琥珀。

その様子を心配そうに見守っていた空飛に向かって告げた。


「そういうわけだから空飛、林山に許可をもらいに行こう。」

「許可?」

「そうだよ。林山の臭いが付いた服を紅嘉殿に贈ることを、本人の了解なしにするのはよくないだろう?」

「え、ええ。」

「そういうわけですから魏忠殿、私は空飛と二人で、私の部屋にいる林山に聞いてきます。その間、申し訳ないのですが、この部屋でお待ちいただけませんか?」

「この部屋でですか?」

「なにか不都合でも?」

「いえ・・・実は・・・」


口ごもりつつも彼は言う。


「安様に、紅嘉の小屋までご足労頂くのは申し訳ないと思いまして・・・・」

「はい?」

「紅嘉を、そばの庭のあたりまで連れてきていまして・・・。」



「「え?」」



(虎を連れてきた・・・ですって!!?)



「そっ!?それ、危なくないですか!?」

「大丈夫です!首輪をしっかりしてますし、ちゃんと縄を木に巻きつけてますし、なによりも!!」

「なによりも?」

「うさぎの肉を与えていますので、空腹で人を襲うことはありません。食事中は静かですから!!」


自信満々に言う虎の世話係。


「・・・・あの。」

「なんでしょう、張様?」

「・・・・食事で静かになるんでしたら、林山に合わせなくてもそれで静かにさせればいいのではありませんか?」

「いいえ!そんなことをさせれば太ってしまいます!そうなれば、早死にの原因になるではありませんか!?」


(あなたの要求をのめば、林山が早死にしそうなんですけど・・・!?)


そう言いたいのを我慢して言葉を飲み込む。

代わりに、ため息をつきながら琥珀が言う。


「とにかく・・・林山に会ってきますので、待っていてください。」

「あの!でしたら、紅嘉の側で待っていてもいいでしょうか?その方が、あいつも私も安心しますので―――」


「「あぁ、はい。どうぞどうぞ。」」


こうして、部屋のまで男と別れる形で琥珀の部屋へと向かう二人。





「琥珀・・・」


しばらく歩いたところで空飛は親友に話しかける。


「林山は・・・今、私の部屋ですよね?」

「・・・予定ではそうだね。」

「ならば、どうしてあなたの部屋に向かってるんですか?」

「用心のためだよ。」


小さい声をさらに小さくし、隣にいる空飛にさらに近づきながら言った。


「いくら、林山が貰い受けうけた子猫の養い親とは言え、会って1日しかたっていない相手・・・信用はできないからね。」

「子虎でしょう?悪い人には見えませんでしたが・・・?」

「ここで、見かけで人を判断するとどういう目にあうか忘れたのかい?」

「あ・・・そ、れは・・・」

「目に見えることだけ、信用するのは危険なことじゃないかい?」


琥珀の言葉に、口ごもる空飛。

そう、ここは『宮中』という名の危険地帯。

皇帝の前では、仲睦まじい姿を見せていても、本当はそうでないこと。

にこやかに笑って談笑していたかと思えば、その直後にその相手の悪口を言う。

本人がいなくなったところで、散々ぼろくそに言うのだ。

口で言うだけならまだしも、時には罠にはめて、だまして相手を追い落としたりする。

自分が一番に出世したいがために、邪魔な人間を冤罪にかける。

時には上司に嘘の報告をして、相手の命までも奪ってしまう。

命だけではない。

その相手が所有している財産・家族までも奪い取ってしまう。

それらがバレないだけの地位や名誉、身分と権力者からの信頼を持ちながらも、さらなる高みを目指そうとする者達。


「ここは、そういう場所でしたね・・・。」


思えば、宮中に入ったばかりの頃、同じ年頃で仲良くなった子がいた。

何でも話し合い、今の林山や琥珀のように思っていた。

自分はそう思って信用していた。

ところが相手はそうではなかった。

その子は、自分を利用した。

気づいた時には、下級宦官の中でも一番下っ端でいじめられる立場。

そう仕向けたの信じていた友達。

友達だと思っていた相手。

彼がその後どうなったか・・・

高級宦官に近い立場になり、上手く立ち回っていると聞いた。


(私を・・・利用して・・・!)


それを思い出し、空飛は強くした唇をかんだ。



「空飛?」


その声で我に返った。


「あ!すみません、私・・・!」

「疲れたんだね?無理もないよ・・・林山と付き合いだしてから、いつも騒動に巻き込まれるからね。」

「そんなんじゃないですよ、大丈夫です!」

「ならいいんだけど。とりあえず、私の部屋についたら、君は休みなさい。あとは、私がうまくやるよ。」

「そんな!琥珀ばっかりに頼るわけにはー!」

「先に頼ったのは私だよ。林山の看病・・・ずっとしていてくれたじゃないか?本当は私も側についていたかったんだけど・・・黄藩殿への報告があったからね。君に任せきりにしてしまった。」

「そんなことないですよ!私はー琥珀と違ってテキパキできません!適材適所を考えれば、それぞれの役割をこなせるものがした方がー!あっ!?違いますよ!琥珀が看病をする役目に適してないという意味ではなくー!!」

「ハハハ!わかってるよ。」


必死で弁解する空飛に、表情を柔らげながら言った。


「わかってるから、借りを返させてほしい。・・・というよりも、一芝居打っていてほしいんだ。」

「一芝居?」

「部屋に、林山がいるようなそぶりをしていてほしいということだよ・・・。」

「え?」

「どうも私は・・・納得できなくてね。」

「・・・なにがですか?」

「・・・林山が、今どのような状況であるかは、私と空飛、黄藩殿に衛大将軍しか知らない。知らないはずなのだが・・・ここは宮中。油断はできない。」

「まさかー・・・・私達以外に、このことを知る者がー・・・!?」

「知ろうと・・・探ろうとしている者がいるかもしれない。」


とたんに空飛の体が固まる。

それを予測していたかのように、相手の肩に手を乗せる琥珀。


「あ、ほこりがついているよ。空飛。」

「こ、琥珀!?」

「・・・・静かに。自然なそぶりをして・・・!」


何もついていない肩で、何かを払う動作をしながら言う親友。


「・・・今も、私達を尾行している人物がいるかもしれない。だからこそ、部屋についたら、林山がいるものとして私と二人で芝居をしてほしいのだよ・・・!」

「琥珀・・・・」

「いいね・・・?」

「・・・わかりました。」


その言葉を合図に、「さぁ、取れたよ。」と言いながら、空飛から離れる琥珀。

相手からの指示を受け、必死で自然なふりをする空飛。

何でもないふりをするため、夜中にもかかわらず、昼間と同じ声の調子で会話を続けた。

部屋まで話し続けたのだがー



(ああ・・・会話が頭に入ってこない・・・!)



緊張と恐怖と警戒心で、彼の頭と心は真っ白になっていた。

呼吸するのが痛いぐらい、心臓の音が大きくなる。

自分が何を話しているのかも、相手が何を言っているのかわからない状態。



(早く、琥珀の部屋につきますように・・・・!!)



部屋につくまでの間、頭の中にあったのはその思いだけだった。


最後まで読んでくださり、ありがとうございます・・・!!



何とか魏忠をごまかした琥珀と空飛を書いてみました

何事にも動じない琥珀と、林山のために平静を装うように頑張る空飛なのでした。







※誤字・脱字・漢字の間違いがありましたら、こっそり教えていただけると、ありがたいです・・・!!

ヘタレですみません!!



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