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第六十話 聞き間違いに気をつけよう



物騒な単語に、星影は少女を見てから横目で琥珀を見る。

琥珀は無言でうなずくと、少女に声をかけた。


「それは・・・どういう意味でしょうか、お嬢さん?」

「え!?」


琥珀の問いに少女は顔をあげる。


「あ・・・あの、私・・・・私・・・!」

「お嬢さん、あなたは今、『殺される』と仰ったが・・・一体誰にです?」


琥珀の言葉に、少女は無言で首を振るばかりで答えなかった。



これはつまり――――――――――



「答えられない・・・のですか?」

「私、私・・・!」


時折(ときおり)、蚊の鳴くようなか細い声で、なにか言おうとする少女。

だが、それが言葉になることはなかった。

その様子を見るうちに、星影は相手の心理状況を理解する。




彼女は、【答えられない】んじゃなくて、【答えられる状況じゃない】んだ!




そう判断した星影は、素早く少女の前まで行く。

そして、視線を相手に合わせながら言った。



「大丈夫ですから、落ち着いてください。私の名前は安林山。最近、高級宦官になった者です。」



その言葉で、相手の震えはとまった。下に向けられていた視線も、星影の方へと向けられる。そこには、目を輝かせながら自分を見る少女がいた。



「安、林山・・・・!?も、もしやあなた様は―――――――賊から陛下をお救いした武烈(ぶれつ)宦官・安林山様!?」


「武烈?」


「は、はい!陛下を賊からお助けした武を極めた宦官武人! (こう)()(仙女)のような美しさを持ち、文武に優れ、古今東西の数万の書物を学び、素手で虎を殺せるほどの豪傑とお聞きしています!!」





・・・・・・・・なんかすっごく、尾ひれがついてない・・・・?





そう思って、琥珀を見れば、あいまいな顔をして首を横に振るだけだった。


「いや・・・虎は素手では倒せませんが――――・・・・私がその安林山です。こっちにいるのが、私の友で同じ高級宦官の王琥珀と言います。あなたの名前は?」

「わ、私は・・・(れい)(しゅん)(じょ)(れい)(しゅん)と申します。」

「年は?」

「あ、はい・・・十四になります。」

「十四?」


三つも年下じゃない。妹よりも、空飛よりも幼い娘。

そんな子供を怖がらせるなんて、どういった相手だろう。


「玲春さん、私は宮中に来て日が浅い人間だが、あなたの発言に戸惑っている。」

「え?」

「茶器一つで殺されるなんて話、聞いたことがない。はっきり言って、そんな馬鹿な話はない!」

「安様・・・。」


驚いたように、声を漏らす少女。


「あなたの主が、あなたになんと言ったのかは知りませんが、それはきっと脅しですよ。壊さないように、脅しで言っただけです!本当に殺すわけが―――――」

「・・・・殺されました。」

「・・・・・・・・・はい?」

「殺された?」

「私の・・・・先輩に当たる方が、茶器を割ってしまい・・・・折檻(せっかん)の末に、殺されました。」

「はぁぁあ!?」

「だから―――――――私も、茶器を割った(とが)で殺されるのです!」


わっと、叫ぶとそのまま泣きはじめる徐玲春という名乗る女官。

あまりのことに、呆気に取られる星影。しかし、すぐに気持ちを切り替えると言った。


「落ち着いてください!仮にそうだとしても、君に責任はないよ!悪いのは、ぶつかってきた私なんだから!」

「いいえ!いいえ・・・!前を、前を見ていなかった私が悪いです!私が―――――――・・・・!!」

「違う!悪いのは私だ!」

「いいえ!私が――――――――」




「―――――と、言うよりも!この事態をどうするか、協力して考えるのが先じゃないかい?」




激しく意見をぶつける星影と少女の間に、割って入りながら琥珀が言った。


「どちらが悪いにせよ、茶器が割れてしまったことに変わりはないよ。」

「こ、琥珀・・・。」

「王様・・・。」

「そのためにも玲春殿、あなたにお聞きしたい。あなたの主はどなたです?」

「それは――――――――・・・・・・・・」

「あなたのお話をお聞きする限り、あなたやあなたの主人が、ここの人間とは思えません。もしそうなら、茶器一つ、備品一つ壊しただけで、なぶり殺してしまうような気性の激しいお方を、私が知らないはずがない。」

「私がって・・・・・そうは言っても、宮中は広いんだぞ?いくら物知りなお前でも、聞いたことのない、知らないことぐらいあるさ。」

「それはないね。」


星影の言葉を、即答に近い形で琥珀は否定する。


「宮中は確かに広いが、人の出入りは限られている。おまけに閉鎖的な場所だから、外に情報が漏れることなどない。だがその反面、そんな閉ざされた場所だからこそ、些細(ささい)な情報でもすぐに広がってしまう。ここの人間は、おしゃべりや噂話が好きだからね。」


最後の方は、少しだけ茶化すような口調で言う琥珀。そしてさらに言葉を続ける。


「それだけ気性が激しいとなると、仕える立場の私達は気をつけなければいけない。そうなれば、自然とそういう話は伝わってくるものだよ。特に、黄藩様あたりが、教えてくださらないはずがないじゃないか?」

「それも・・・・そうだな。」


あの意外と律儀な黄藩さ・・・殿が、先に釘を刺さないはずがない。


「じゃあ君は――――――――」


「・・・・はい。王様が仰るとおり、私も主人も、宮中の者ではありません。」


と、琥珀の予想通りの答えを口にしたのだが・・・。



「ですが・・・私の主人は、元々は、ここのお方でございました。」



「え?」


ここのお方?


「それはつまり――――――――」



「元は、宮中にいた人間ということですか・・・・・?」



琥珀の問いに、少女は無言で頷く。

予想と反することを付け足す少女。



「ですから・・・どうか私のことはかまわないでください。そうしなければ、あなた方も・・・・」

「馬鹿なことを言うな!それならますます、放っておくわけにはいかないよ!」

「じゃあ、君はどうするつもりだい、林山?」

「決まっているだろう?私が彼女の君の上司にわけを話して、お()びするだけさ!」

「ええ!?」

()びるって、林山・・・・!」

「誠心誠意で、直接謝罪に行く。そして、命だけは勘弁してもらうようにしてもらう!」


胸を張りながら、自信満々に言った星影。それに対して外野は、厳しい意見を述べる。


「い、いけませんわ!そんな!あなた様まで、殺されてしまいます!!」

「そうだよ。第一、元宮中の住人という高貴中の高貴なお方が、君に会ってくれるとは思えないぞ?」

「大丈夫だよ。大事な茶器の破片を手形に、お目通りを願えばいい。」

「相手を刺激してどうするんだい!?そんなことをしたら、そのまま処刑場に連れて行かれても文句は言えないよ?」

「引き返して、もう一度面会を求めたらいい。」


拳を前に突き出しながら言う星影。

その姿は、【いざとなったら、実力行使で押し入る】という彼女の意思を物語っていた。


「君は正気で言っているのかい!?もしそうなら、君の考えは無茶苦茶だよ!相手を挑発するようなことばかりじゃないか!?それが、謝罪に行く者の心構えかい!?」


星影の考えを察して、すかさず注意する琥珀。

これに対して星影は、なだめるような口調で言った。


「落ち着け、怒ると頭の筋が切れて早死にするぞ。とにかく!起きてしまったことは仕方ないじゃないか!?わざとじゃないんだし。謝ればわかってくれるさ。」

「なにを言っているんだ、君は!誠心誠意で謝って許してもらえるなら、玲春殿が、ここまえ取り乱すはずがないだろう!?」

「王様の仰る通りです!駄目・・・!駄目ですよ、安様っ!!謝ってお許しいただけるわけが――――――・・・!!」

「おいおい、ずいぶん物騒なことを言うね。君の主というのは、一体どういったお方なんだ?」


星影の問いに、徐玲春は声を震わせながら言った。


「・・・普段は、とてもお優しい方です。でも、一度お怒りを買ってしまえば――――許しては下さりません。」

「なんだから面倒な男だな。」

「違います。」

「え?」

「私の主は、男性ではありません。女性・・・御夫人でございます。」


「「夫人?」」


「はい。宮中から、名だたる名家に嫁がれ、今に至るのでございます。」

「つまり――――降嫁(こうか)されたということですか!?」


驚いた様に琥珀が問う。それに、少女は頷く。


降嫁(こうか)って・・・琥珀。玲春さんの主人というのは―――!?」

「皇女ということになるね・・・。」


小声で言えば、相手も小声で返しえてきた。


嫌な予感がする。


「・・・・・・玲春さん。」


嫌な予感がするが、聞かねばならない。


「良いにくいでしょうが、教えていただけませんか?」


話を進めるためにも、問題を解決するためにも



「君の女主人はどなたですか?」



聞かなければならない。



「・・・・こう・・・様です・・・。」



星影の真剣なまなざしを受け、徐玲春の唇がゆっくりと動く。


「・・・・なに様ですか?」


少女が言った名前は聞き取れなかった。星影は出来るだけ優しい声を出しながら、再度問いかける。


「―――――――・・・様です。」

「はい?」



「―――――――――平陽公主様です・・・・・!」



「平陽公主?」



平陽公主?


どこかで聞いたことが―――――――――


平陽公主、平陽公主、平陽公主、平陽公主、平陽公主・・・・!?





「―――――――――平陽公主ぅ!?」


「あの平陽公主、様か・・・・!?」





同時に叫ぶと、互いの顔を見合わせる星影と林山。





「「陛下の実姉・平陽公主様!?」」





「・・・・・はい。私の主は、陛下の姉君、平陽公主様でございます。」




二人の問いに、はっきりと平陽公主は答えた。


「それじゃあ――・・・!君の、玲春さんの主とは、平陽公主様だったのか?」

「はい・・・。この度、衛皇后様のお加減が優れないとのことで、お見舞いのために宮中に参られているのです。私はそのお供として、参ったのですが・・・・」


彼女の声はそこで途切れる。


「玲春さん?」

「そ、それなのに・・・それなのに私・・・!お役に立つどころか、お気に触れるような真似を・・・・!」


しぼり出すように言うと、肩を振るわせる。


「なに言ってるんだい!?失敗なんて、誰でもすることだよ!それに陛下の姉君なら、話せば許してくださるよ!」


あの気分屋の皇帝の姉。

おだてて、持ち上げれば、なんとかなるはずだ。

最悪の場合は、私が陛下に頼めばいい。


「だから泣かないでほしい。君のような良い子を、このまま見捨てることはできない!第一、茶器が割れたのは、私にも責任があるんだよ?」

「安様・・・!」

「君が悪いんじゃないよ、玲春さん。廊下を走って、君にぶつかった私が悪いんだ。」

「そんな!そんな、安様・・・!」

「ほら、もう泣いちゃだめだよ。絶対に君を死なせないから。いざとなれば、私が罪をかぶる。」


袖から布を取り出すと、それで徐玲春の涙を拭く星影。


「何故です・・・?」

「はい?」

「何故、私をそこまで庇って下さるんですか・・・・?」


戸惑い気味に問う少女に、あっけらかんと星影は答える。


「だって君は、悪くないじゃないか。」

「え?」

「殺されるような悪事なんかしていない。それに、」

「それに・・・?」

「君は優しい子だよ。私のとばっちりで、ひどい目にあわせたくない。」



そう。私が年甲斐(!?)もなく、廊下を走った結果、起こった事件。



「そうだよな?琥珀?」



廊下を走る結果になった人物に、威圧的な笑みを向ける。



「琥珀様は賢いから、必ず力になってくれるよ!」


怪しい集団を持ってるし。


不適な言葉と思考で、相手を見る星影。


「・・・・・それは、遠まわしに脅してるのかい?」

「人聞きが悪いなぁ〜琥珀様?」

「協力しないとするのでは、どちらがいいかわかっているよ。だだね・・・」


協力の意思を表明しながらも、言葉を濁す琥珀。



「なんだよ?」



「・・・・相手が平陽公主様となると、陛下のお力でも納められないかもしれないよ?」





「「ええ!!?」」





星影の声と、甲高い悲鳴が重なった。



「な、なんだ!?」

「この声は・・・?」

「あ・・・!?」



驚く星影でも、琥珀でも、玲春でもない声。


「馬、馬様!?」

「え!?」

「ばあ・・様?」


自分の背後に向かって呼び掛ける少女。悲鳴にも近い声を上げる徐玲春。

声のする方を見ると、一人の老女が立っていた。




「な、なんてことなの・・・・・・!!?」




肩を震わせる老女の視線の先には、粉々の破片があった。



「玲春!!お前はなんていうことをっ!!」



甲高い声を上げながら、徐玲春に接近する老女。

そして、手を振り上げる。



(ヤバッ!?)



老女の様子に、本能的に危機を察する星影。思ったと同時に、体が動いていた。


「おやめくださいっ!!」


徐玲春めがけて振り下ろされた手を、寸前で静止する星影。


「なっ!?」

「あ、安様!?」


驚く女性二人を交互に見ながら、星影は老女の方を見ながら言った。


「暴力はよくありません!おやめください!」

「なんですかあなたは!?関係ない人間は、引っ込んでいなさい!」

「いや、これでも関係あるんですよ!」

「関係ある!?」

「あなたこそ、彼女と関係あるんですか!?」

「ありますよ!小さい時からこの子の面倒を見ているのですよ!?」

「小さい時から!?」


再度、女性を交互に見る星影。


この老女がこの幼女の面倒をみていた?


(面倒を見たということは―――――――――)


相手の言葉に、一瞬返事に困った星影だったが、すぐに合点する。


(そうか!二人はそういう関係か!?)


自分なりに納得すると、老女に視線をもどす。その視線を受け、老女は厳しい口調で言った。


「早くこの手を離しなさい!こちらの問題に、他人が口を挟まないで頂戴!!」

「お怒りはごもっともですが、落ち着いて下さい、『ばあ様』!!」


「ば、ばあ様!?」


「叩いて問題が解決するわけではないでしょう、『ばあ様』!?」

「だ、だだだ、誰が『ばあ様』ですって―――――!?失礼なっ!!」

「失礼しました!お孫さんの話も聞かないで、いきなり叩くのはよくありませんよ、『おばあ様』!?」

「それも違います!『お』をつければいいというものではありませんよ!?誰がこの子の祖母ですか!?」

「え!?でも、『おばあ様』って言っていましたが?」


老女の否定を不思議そうに聞き返すと、視線を徐玲春に向ける。

老女が、徐玲春の祖母であると思い込んでの発言。

そんな星影の態度で、相手の勘違いを察する老女。


「それが違うのです!玲春は『馬様』と言ったのですよ!『ばあ』ではなく『馬』です!『馬』と書く!」

「ああ!それで『馬様』でしたか!?いやいや!失礼いたしました!」

「まったくです!なんなんですか、あなたは!?」

「これは申し遅れました。私は――――」

「おや?あなたその服は―――――宦官・・・!?」


相手の問いに、行為を正しながら口を開いた星影だったが、老女の問いに遮られてしまう。

仕方がないので、相手の言葉を肯定しながら言った。


「そうです。私は宦官の、あ――――――」

「そういうことだったのですか!?」


星影の言葉がいい終わらないうちに、老女はその会話を終わらせる。

突然のことに、驚いて相手を見れば、不機嫌そうにこちらを見ていた。


「宦官ならば、名乗らなくて結構!馴染みの宦官は間に合っております。」

「はあ?」

「その方の魂胆はわかっておる。そこの女官の粗相をネタに、我らに取り入るつもりであろう?」

「取り入る!?」

「誤解です、馬様!この方は、そんな方ではありません!」


老女の言葉に徐玲春が声を上げる。


「なんですか、玲春!?この宦官は、お前の知り合いですか?」

「あ・・・その、知り合いというか・・・・」

「まさか・・・馴染みの宦官じゃないでしょうね?」


皮肉るような口調で言う老女の言葉に、少女は赤面する。


「違います!私、私はそんな――――――!」

「まぁ、それはどうでもいいですが。どちらにせよ玲春、お前は主の宝物を割ったのです。取り入る方法を間違えたのです。」

「ちょっと待った!」


老女の言葉に制止がかかる。


「なんなんですか、さっきから!?取り入る取り入らないとか!?馬様、あなたなにか、誤解をしていませんか!?」

「白々(しらじら)しい!お前がそそのかしたのでしょう!」

「そそのかすもなにも、私達は初対面ですよ?」

「初対面!?」

「さらに言うならば、茶器を割ったのは徐玲春さんではない!」

「え!?」

「この私です。」

「なんですって!?」

「私が、徐玲春さんにぶつかって割れてしまったんです。彼女に罪はない。」


突然の告白に、老女は大きく目を見開く。それは徐玲春も同じだった。


「な、なにをおっしゃいます!私が落として割ったのです!あなた様は悪くありません!」

「私が早足で歩いた上に、前方不注意で割ったんだ!君は悪くないよ!だから馬様!!」

玲春から馬と名乗る女性に視線をうつしながら星影は言った。


「罪があるとすれば、玲春さんではなく、この私です。だからどうか、彼女を罰しないでください!」

「安様!?」

「なんですと・・・・!?」


星影の言葉に目をまるくする二人の女性。



「林山・・・!」



それとは対象的に、額に手をあてて嘆く琥珀。呆れているようにも見て取れる。

しかし星影は、そんな友を気にすることなく、自分の意見を述べ始めた。


「だから玲春は悪くありません!罪に問うなら私を!」

「いけません!嘘ですわ、馬様!安様は悪くありません!罰するのでしたら、どうか私を!」

「それは違うよ、玲春さん。私が君にぶつかったんだ!その衝撃で、あなたは持っていた茶器を落とした。それで割ったとなれば、罪は私にあるはず!」

「なんと!」

「しかも、私の方が彼女よりも上背があるし、でかい。おまけに正面からぶつかっている。大柄な人間と小柄な人間が真正面からぶつかった時、どちらにふりか考えればーどちらに非があるかおわかりですよね?馬様?」

「それは・・・まことか!?」


星影の話にのまれ、徐玲春を問い正す老女。


この場合、気が弱い者や罪から逃れたい者はだれもが星影を肯定するだろう。

しかし徐玲春は、あえてそれを否定した。


「いいえ!違います!確かに…私は安様とぶつかりました。しかし、安様から私にぶつかったのではありません!その証拠に、私はぶつかった衝撃で、衝撃で・・・・・あ、安様の上に乗ってしまったのです・・・・!」


そう言うと、真っ赤な顔になる徐玲春。


「もし――――――安様からぶつかったのでしたら、私ははじき飛ばされてしまいますわ!安様の方が、私より上背もあって体が大きいのですよ!あるいは、安様が私の―――――――上に・・・・・・」


消え入りそうな声で言う。



「だから安様に罪はありません!」



顔を上げた少女は、真顔で続ける。



「ですから、この方は関係ありません!私を罰して下さい!」



そんな徐玲春の言葉に、すぐさま星影が反論した。


「なに言ってるんだ!?君は悪くない!!」


「私が悪いのです!」

「いや、私だ!」

「私です!」

「私だ!」


こうして、第二次庇いあい戦をはじめる二人。

普通では、宮中という場所ではありえない争い。

この光景に、若い二人より長く生きている女性は呆気に取られ、麗しい宦官は呆れ返る。



「「だから悪いのはー!!」」





「どちらでもかまいませーん!!」





一番大きく叫んだのは、馬と名乗る老女だった。


「いい加減にしなさい!なんなんですか、その茶番は!?騒々しい庇いあいは!?」

「茶番なんて・・・そんな、馬様・・・!」

「こっちは真剣にしてるんですよ!?それを茶番とは、あなたの方こそ無礼でしょう!?」

「下世話な宦官がえらそうに言うでない!お前の振る舞いの方が、はるかに無礼なのですぞ!?」

「下世話って、あなたね――――――!」

「お黙りなさい!いらっしゃい、玲春!!」


そう言うと、少女の手を掴む。



「ちょっと!玲春さんになにを――――」

「――――――――心配しなくていいですよっ!あなたも、一緒に来ていただきますからね・・・・・!?」



意味ありげな笑みを浮かべると、強引に星影の腕も掴む。

星影の反論する隙を与えることなく、さっさときびすを返す老女。

こうして、馬と名乗る女官に引きずられていく若い女官と宦官。



ただ、そこにはいるはずの星影の友は、何故かその場から姿を消していた。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました・・・・!!


小説に関する小話なのですが、話の中で出てきた『降嫁』とは、『皇族の女性・皇女などが結婚されて皇族の籍を抜けること』を言うそうです。日本で言えば、紀宮様(現・紀子様)がそうなります。

小説とは関係ないのですが、秋篠宮親王のご息女、眞子様が一部のAボーイ(秋葉系男子)の方々に人気だそうです。紀子様が好かれているというのは知っていましたが、「眞子様まで!?」と、かなりびっくりしました(苦笑)個人的にルパンが好きなので、紀子様は好きでしたが・・・つくづく、『萌えの文化』は深いと思いました。


最後になりましたが、よろしければ小説の感想を、教えていただけると嬉しいです(照)





※誤字・脱字がありましたら、お知らせください・・・!!ヘタレですみません・・・(土下座)


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