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第六話 入れ替わり大作戦

同じ服を着た人々が門の前を行きかう。それに混じるように、地味な服装の人々が一列に並んでいる。その先頭の前には机が置かれており、身なりの整った男性が腰を構えていた。


「あそこが宦官の受付をしてところか!?」

「おい、あまり大きい声出すな!怪しまれるだろうが。」


場違いな明るい声と、それを咎めるような低い声。―――(りゅう)星影(せいえい)安林山(あんりんざん)だった。

「なんか長安の役人って、やけになよなよしてるんだな?」

「馬鹿、ジロジロ見るな!ここにいるのは俺達が普段見ている役人じゃない!・・・全員宦官の方々だ。」


そう言うと、楽しそうに辺りを見回す星影の首根っこを掴む林山。


「わぁっ、わあ!?何するんだよ!?」

「・・・少し口を慎め。目立つだろーが!」

「だって、あまりにもこの役所が広いから・・・。」

「宮殿だ、宮殿!しっかりしてくれよ・・・!」


星影の首根っこを掴んだまま、林山は木陰(こかげ)に移動する。


「いいか、せっかくここまで来れたんだから・・・ボロを出すような真似はするなよ・・・?」

「なに余計な心配してるんだよ?ここまで何事も無く来れたじゃないか!?」

「だからこそ心配なんだ!」


強めの口調で言う林山に、星影も思わず肩をすくめる。


「わかってるさ。もちろん気を付けるよ!それにしても長安って、本当に華やかな場所なんだな。」


上機嫌に答える星影を見ながら、深いため息をつく林山。


「お前本当に呑気だな・・・。」

「そんなに心配するなよ。いいだろう、せっかく上手く入れ替われたんだから・・・ねぇ、星影さん?」

「ああそうだな、林山殿!!」


星影のちらつかせる紙を見ながら嘆く林山。星影の手には、しっかりと宦官の証明書が握られていた。


「まさか・・・本当にバレずに宦官になるなんて・・・・。」


深くため息をつく林山の脳裏に、藍田での出来事がよみがえる。

故郷・藍田を出発し、後宮がある長安へとやってきた星影・林山の義姉弟。星影の提案で、自分の名前を貸すことにした林山だったが、半場当てにはしていなかった。


「厳師匠!無理を承知でお願いいたします!!どうか私たちのわがままをお聞きください!!!」

「それは・・・・・本気で言っているのか?」


そう言って、膝を突いて頭を下げる星影を静かに見据える厳師匠。


(ほらな、思った通りだ・・・。)


内心悪態をつきながら、上目遣いで自分達の武術の師匠を見る林山。

厳師匠、本名を(げん)飛龍(ひりゅう)といって星影と林山の武道の師匠である。武術・剣技を得意とする彼は、藍田では有名な実力者だった。今は藍田に居を構えているが、元は各地を流浪しながら武道を教える侠客だったらしい。ただ、藍田に来てからは、【変わり者】の名称が定着してしまっていた。しかも、何を隠そうその原因は劉星影にあった。彼は女性である星影に武芸を教えたことで、【変わり者】と呼ばれるようになってしまったのだ。最も、星影が山賊を撃退して以来、星影の師匠として一目置かれるのは事実である。現在でも門下生は年々増加し続けているが、相変わらず【変わり者】として見られていた。


「林山、お前はどうなんだ?首が飛んでもかまわないのか?」


その横で硬い表情をしている林山に、彼はぶっきらぼうに問いただす。

知らない仲ではないとは言え、自分が師と崇める人物に身分偽造・・・犯罪行為をお願いするのは、さすがに気が引けた。


「・・・常識で考えれば、星影の言っていることは大罪です。」

「ほお、知っていて星影の案に賛成するのか?」


いつになく厳しい厳師匠の口調に黙り込む林山。この時代、自分の身内が罪を犯せば、その罪が重ければ重いほど一族は残酷に、そして大勢殺される。そのことと照らし合わせて考えれば―――星影と林山が今行おうとしている事は間違いなく大犯罪であった。それについては、二人とも十分にわかっているのだが・・・


「建前では、悪いことだと理解しています・・・!」

「『建前では』だと?」


厳師匠の問いに頷きながら林山は言った。


「しかしこの国の法では、私の心まで取り締まることはできません。」

「それはつまり、国の法を犯してでも、自分の婚約者を取り戻したいと?」

「悪いことだとは思っていません!」


林山の代わりに星影が答える。


「今回、中華全土で行われている宮女の対象は、『未婚の女性』のはず。それを何処(どこ)で嗅ぎ付けたのか、『藍田の蝶花』と呼ばれているということで有無を言わさず連れて行かれたのです!」

「しかし宮中に上がる事は、この国の女性なら誰もが夢見る最高の名誉だぞ?」

「愛する者がいるのに、無理やり引き剥がされて見さされる夢など、悪夢以外の何ものでもありません!!」


星影の言葉に林山も頷く。そんな様子を、(あご)(ひげ)を撫でながら眺める厳師匠。


「私達だけじゃない!きっと星蓮だって・・・!今頃、辛く悲しい思いをしているに違いありません!!」


そう言って、声を荒げる星影に厳師匠はなだめる口調で言った。


「・・・まあ落ち着け。肝心なのは当人同士だ。林山、お前は本当にそれでいいのか?」


星影から視線を反らしながら尋ねる厳師匠。


「若気の至り、という言葉がある。お前がまさにその状態だ。恋に走るあまり、事の善悪がわからなくなってはいないか?」

「厳師匠!?」

「星影、お前は少し黙っていろ。わしは林山に聞いているんだ。」


どうなんだ?と、尋ねる厳師匠に林山は口ごもる。

師匠の言っている事は正しい。本当は自分でも、間違ったことをしているとわかっている。


「自分の命や、愛する星蓮の身を脅かしてまで、(つらぬ)き通す愛か?」


ことが露見すれば、自分の身内ももちろんだが、愛する星蓮の命だって危ない。それはわかっている。


「両親や一族を危険にさらしてもか?なんの落ち度もない族子を、巻き込むことになってもか?」


わかってはいるが、


「・・・俺は好きなんです。」


忘れるにはあまりに辛く、諦め切れない大きな存在――――


林山は拳を強く握り締める。


そう、好きなんだ。だから助けたい。

理由は単純で、言葉はありきたりかもしれないが、


「俺は・・・星蓮を愛しています。」


意味はとても重たいもの・・・!


顔をあげ、背筋を伸ばしながら林山は言った。



「俺の妻は、星蓮だけと心に決めております。」



星連を愛しているからこそ、助けたいと思う気持ちは本物。


「だから星連を連れ戻します―――。」


他の男なんかに渡したくない。相手が自分より上であっても許せない。許したくない。


「お願いします・・・お力お貸しください・・・!」


そう言って、深々と頭を下げる林山。


「師匠、私からもお願いします!どうかお力をお貸しください!」


そんな林山に続けるように星影も言う。



「厳師匠!責任はすべて、私が取ります!決して、厳師匠に御迷惑をかけるような事はしません!!ですからどうか・・・・!」



頭を下げる弟子二人を無言のまま見つめる厳師匠。しばらく二人を見つめていた厳師匠だったが、大きく息を吐くと静かに言い放った。


「お前らの性格はよく知っている。せいぜい、バレずにもっても一ヶ月ぐらいだ・・・。それまでになんとかするのだぞ。」

「師匠!?」

「それでは!!」


同時に二人が顔をあげると、そこには口の端だけあげて笑う厳師匠の姿があった。


「やるなら、徹底的にやれ!逃げ場所は作っといてやる!!」

「厳師匠・・・!」

「ありがとうございます、師匠!!」

「コラコラ、喜ぶのはまだ早いぞ?そういうことは、星蓮を取り戻してからにしろ。」


そう言うと、おもむろに立ち上がり、部屋の奥にある棚の方と向かう。


「師匠それは・・・。」


戻ってきた厳師匠の手には、紙と墨と筆、そして子袋が握られていた。


「行くなら、早い方がいい。すぐに宦官証明書を書くから、しばらく待っていろ。それと・・・」


鼻の頭をかきながら、厳師匠は言った。


「向こうにしばらく滞在するなら、なにかと物入りだろう?少ないが持って行け。」


そう言いながら、子袋を林山に手渡す。


「こ、こんな大金を!?」

「少し早いが・・・林山と星蓮へのご祝儀代わりだ。」

「厳師匠・・・!」


ニシシ、と笑う厳師匠に、星影と林山の二人からも自然と笑みがこぼれる。


「師匠のお心遣い、本当に感謝いたします・・・!なんとお礼を申していいのやら・・・」

「厳師匠、妹に代わって、お礼申し上げます!ただでさえ、厳師匠には御迷惑をかけているというのに・・・!」

「わしの事は気にしなくていい。情のない連中を敵にまわすんだ。義を重んじなくて人と言えるか!そのためにも星蓮を取り戻し、皆が幸せになる必要がある。」

「師匠!」

「遠慮はいらん。星蓮を助けるためのわずかな足しにしてくれ。」


厳師匠に言われるままに、差し出されたご祝儀(!?)をありがたく受け取る林山。


「必ず星蓮を取り戻します!!」


ワハハ、と笑いながら膝を叩く厳医師に、二人は深々と頭を下げたのだった。

「・・・厳師匠があんなにあっさり協力してくれるとはね・・・。」

「そりゃ義を重んじる侠客だからね、先生は!」


その時のことを思い出しながら、しみじみと頷く二人。ただ、林山に関しては、呆れ気味に頷いていたと言っていい。


「世の中そんなに甘くないというが・・・」


こんな常識外れの作戦が簡単に成功とは正直思ってもみなかった。他の方法を考える必要があると、思っていただけに、厳師匠の賛成は嬉しい予想外だった。


「なに言ってるんだ、林山!この世の中、信じるものは救われるようにできてるんだぞ!?」


そんな星影の言葉に、ため息交じりで林山は言った。


「つまり世の中、無理を通せば道理も通るってことか・・・。」

「その通り!ちゃんと天は見ていてくださるってことだよ!!」


自信満々に答える星影に、林山は苦笑いする。


「だが、お前とはここでお別れだ、せ・・・林山。くれぐれも気を付けてな。」

「わかってるよ。すぐに星蓮を見つけて、迎えに行くから待っていてくれよ!」

「しっ!!あまり大声で言うな・・・!」

「はい、はい、わかってます。」

「本当かよ・・・。こんな調子で大丈夫か?しかもお前1人で・・・」


心配そうに言う林山の肩を軽く星影は叩きながら言った。


「林山は大人しく、宮殿近くの宿で待ってればいいんだよ!確か・・・『(げっ)(ぺい)()』だっけ?」

「・・『月仙(げっせん)()』だ!」


星影の言葉に、ますます不安が積もる林山。


「私のことは大丈夫よ!宿代がなくなる前に帰ってくるから。それよりも・・・本当に無理を言って、ごめんなさい。」


改まったように、頭を下げながらわびる星影。


「なんだよ、急に?」


それに驚き、思わず聞き返す林山。


「だってそうだろう?いくら偽装のためとは言え、林山の両親に嘘をついてるわけだし・・・貴方にも迷惑はかけたけど、ご両親には本当に悪いと思ってる・・・。」


その言葉に林山は自分の父母のことを思い出す。本当のことは言わなかったが、自分が宦官になると言った時、普段は温厚な気の弱い父は烈火のごとく怒り、気が強くて気性が激しい母は大粒の涙を流して泣き続けた。親の反対を押し切って、半場逃げるように家を飛び出してきた自分。決して後悔はしていない。儒教で言うところの孝の道に反することは確かだった。嘘までついて、罪を犯そうとしているのだから。


だがそれでも・・・・!星蓮のためなら、愛する彼女のためなら、きっと両親もわかってくれるだろう。


「気にするな。愛する人を取り戻すためだ!それより・・・お前に注意して欲しいことがある。」

「注意しておくこと?」


辺りを気にしながら、林山は星影の耳元で呟いた。


「星蓮が連れて行かれた日、劉家に来た(かく)勇武(ゆうぶ)と言う使者の男のことだが・・・。」

「お前と父上に暴行した男だな!?」


無言で林山は頷く。


「調べたのだが、奴は・・・郭勇武は、陛下のお気に入りとして()されるようになった将軍らしいのだ。」

「将軍ですって!?なんで将軍がわざわざあんなところまで来るわけ?しかも使者で?・・・変な話ね・・・。」


林山の話に、星影は訝しそうに片目を吊り上げる。


「ああ、詳しいことまではわからないが、その武力を買われて今では陛下のお気に入りだそうだ。最も宦官が推挙した男だからな。あまりいい奴じゃないだろうが。」


ふてくされた様子の林山に、星影は思わず首を傾げる。


(なんだか、いつもより機嫌が悪い。)


「だいたい宦官なんて、いつの時代においても国を惑わす元凶なんだ。」

「・・・林山、貴方なんかあまり宦官のことは良く思っていないみたいだけど・・・どうして?」

「決まっているだろう!やつらはいわゆる欲の塊なんだ!連中は遥か昔から、ろくでもないやつらさ!金に、権力に、あいつらのおかげで何度世の中が乱れた事か!!」


()くし立てるように言う林山に星影は驚いた。


「お、おい!落ち着け!少し声を抑えろ!」

「俺は冷静だ!」

「自分で冷静というときこそ、冷静じゃないんだよ!」


周りに聞こえるだろう、と周囲を見渡しながら言う星影。しかし、そんな星影にかまうことなく、林山は強い口調で話し続けた。


「悪国と言われる秦だって、宦官が滅亡する手伝いをしたようなものさ!あいつらが宦官になる目的はただ一つ、富と名声がほしいからだ!!どいつもこいつもみんなそうだ!!歴史でそう学んだだろう!?」


(・・・そう言われてもあまり歴史は学んでいないからな。さすがに厳師匠もそこまで教えてはくださらなかったし。)


女性に学問は不必要と言われていた時代、一般の女性の多くは字が読めず、字が読める女性は身分の高い女性や家が裕福な家柄の女性に限られていた。星影も家が大商家で裕福だったので、読み書きはできたものの彼女自身があまり学問に興味を示さなかった。星影は、あまり歴史を学ばなかった。あくまで歴史(・・)に(・)ついて(・・・)の話だが。


「兵法・・・孫子だったら完璧なのだが。」。


苦笑いをする星影に、いつになくまじめな顔になる林山。


「それならなおさら言っておく。いいか、宦官には気をつけろ!簡単に信用しないほうがいい。奴らの頭のなかは欲の塊だ!金もうけのためならどんなことでも平気でする腹黒だ!」


凄みを利かせて言う林山に内心呆れる星影。


冷静な彼をここまで怒らせるとは・・・宦官って、そんなに忌み嫌われる存在なのだろうか?


(でも林山、あなたは星蓮のために、一瞬でも大嫌いな宦官になろうとしなかったけ?)


「まともな奴がすることじゃない・・・なるとしたら、物欲か、変人か、罪人だけだ!」

「ふ〜ん・・・。」


安林山という男は間違っても人の悪口いう男ではない。まじめすぎる一途な性格だ。だから、星蓮を奪った郭勇武を、その男を推挙した宦官に対して、郭勇武同様の怒りが表れて怒っているだけなのだろう。


(・・・ここは下手なことを言わずに、黙って(うなず)いておくに限るな。)


星影が納得したかのように頷くと、案の定、林山は彼女が自分の意見に納得したのだと思い話を進める。


「わかってくれたのならそうで良い。くれぐれも、お前が俺と入れ替わっていることは(さと)られるなよ。」


この話にはさすがの星影も、真剣な面持(おもも)ちになる。


「ええ。こういう話だけは広まるのが速いし、バレたらただじゃすまないものね。そろそろ行くわ。遅れるといけないから。」


その言葉に合わせるように、星影の首根っこを掴んでいた林山の手も離れる。


「いいか、絶対に油断するなよ!言葉遣いと礼儀に気をつけろ!間違っても将軍に喧嘩を売るなよ!」

「わかってる!あなたの方こそ気をつけてね、星影(・・)!」

「ああ、健闘を祈っているよ、林山(・・)!」


互いに目配せをし、駆け出して行く星影。


「大人しくするんだぞ!」


そう言って声をかける林山に、星影は何度も手を振りながら、人ごみにまぎれていった。

そんな義理の姉の姿を見送りながら、林山はあることに気付く。


「しまった!星影にあのことを聞くのを忘れてた・・・。」


彼は少し顔をゆがめると呟く。


「この作戦のこと・・・もう父上達に連絡してくれたかな・・・?」


林山がそう言ってぼやくのには理由があった。

藍田を出発する前のこと。星影と林山はある話をしていた。


「星蓮を取り戻すためとは言え、父上達に嘘を言って家を出てきたことが、やはり気になるな・・・。」


そう言って、日に何度も同じことを言う林山。そんな林山を、見かねた星影がある提案をした。


「なぁ林山。そんなに心配なら、長安に着いてから、家族宛に書簡(しょかん)を出さないか?」

「書簡?」


不思議そうに尋ねる林山に、星影は言った。


「そう・・・これから私達が行う、『入れ替わり奪回作戦』について記した書簡をね。」

「なんだと!?」


途端に声を荒げる林山。


(秘密だと言っておきながら、なにを今さら・・・!?)


「そんなことしたら、連れ戻されるだろう!?」

「大丈夫だよ。宮中に入る前ならまだしも、宦官として私が宮中に入った後じゃ、連れ戻しも何も出来ないさ。」

「確かに・・・。」


一度宮中に入ると、どんな事情があっても身内が立ち入る事はできない。そこを逆手に取った良い考えだった。


「下手に騒げば、皆殺しにされるからな・・・。」

「その通り!むしろ、私達の帰りを黙って待っていた方が賢いからね?」


星影の言い分はわかりやすかった。連れ戻せないとわかれば、父上達も大人しくしているだろう。それにこちらの安否がわかるだけでも、これ以上の心配をかけることはないだろうし。


「もちろん読み終わったら、燃やしてもらうように書いておくけどね。」

「それはいい考えだ。」

「じゃあ長安に着いたら、さっそく書簡を書いて送ろう!」


そう言って肩を叩く星影に、林山は嬉しそうに頷いたのだった。

「ああ言ってくれたし、代わりに書いてくれたよな・・・?」

普段は人に頼らない林山だが、相手が親友・星影ということもあって任せきっていた。

「星影が言い出したことだし、出してくれてるだろう。」


そのまま踵を返し、門へと向かって歩き出す林山。


一方の星影も、人ごみをかき分けながらあることに気付いていた。


「しまった!林山に渡すの忘れてた・・・。」


彼女は頭をかきながら呟く。


「この作戦を書いた書簡・・・。」


そう言いながら、懐から一つの書簡を取り出す林山。長安に着いてから、身内へ宛てた自分達の作戦を記した書簡だった。内容は自分達の作戦と必ず変えるから心配しなくてもいいというものであったが・・・。


「渡しそびれちゃったな・・・。」


困ったように呟く星影。林山は知らなかった。星影がこの作戦のことを書いた肝心の書簡を、彼女の両親はもとより、林山の両親にもまだ送っていなかったことを。


「まあ、宮中に入ってから手紙を出せばいいか。」


星影は知らなかった。宮中に入った者は、外界宛に手紙などを出してはいけないという決まりがあるということを。



「「なにも心配ないよな。」」



お互いに勘違いしたまま、それぞれの目的地に向かう二人。しかしこの書簡を書いたことと、送るのを後回しにしたこと。これが後に、厄介な自体になることを、二人はまだ知るよしもなかった。こうして星蓮奪回作戦は、(あや)うさを含めたまま開始されたのである。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました!!

宦官について、この小説で書きましたが、最後の宦官は19世紀までいたらしいですよ!!

本編には関係ありませんが、小話と言うことで(苦笑)

空飛や琥珀を通りして、当時、宦官になった人々の事情を伝えてもらいました。

宦官という役職は、実際は過酷だったようです。

以上、余談でした。



※誤字・脱字・おかしい文のつなげ方を発見された方!!

 こっそり教えてください・・・!!

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