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第百四話 売られた喧嘩は買ってしまう

※お詫び※


こちらの手違いで、一時、百四話の小説のデーターが消えてしまいました・・・!!

なんとか修復しましたが、内容が一部変わっていたらすみません!!

失礼いたしました(土下座)

賊を追い払った直後、突然、協力者に刃を向けた衛青。

その行動に、困惑する星影達を尻目に、武人は殺気を緩めることなく彼らに告げた。


「そなた達は・・・何者だ?」

「何者・・・と、申しますと?」

「とぼけるな。武官でも、文官でも・・・ましてや、宦官でもないそなた達が、どうやってここまで来た?」


刀を突きつけている相手に、眼光を鋭くしながら衛青は言い放つ。



「男子禁制の後宮に、どうやって侵入した・・・・・・!?」



(そういうことね!?)



衛青の真意を察すると同時に、しまったと星影は思った。

宮中は、一般人は絶対に入れない場所。

ましてや、皇族のいる内部となれば、ごく限られた身分の高い臣下しか入れない。

これに質問された側は、楽しげな口調で答えた。



「お戯れを・・・!不届きものでしたら、皇太子様達をお助けしてませんぜ?」

「それとこれは別だ!身なりからして、怪しいとしか判断できぬぞ・・・!?」


((そりゃあ、そうだ・・・!!))



大将軍の言葉に、彼でなくてもそう考えるだろう思う星影と林山の義姉弟。


(服装だけでも、宮中らしい格好してきてくれれば誤魔化せたものを・・・!この愚弟っ!!)

(完全に、コソ泥の恰好で来てしまったからな・・・。うわー・・・すっごく俺を見てくるなぁ~星影お義姉様は・・・)


引きつる顔で林山をにらむ星影に、視線をそらしながら同じ顔をするしかない林山。

この見るからに、官位ある人間とほど遠い服装をした義烈と本物の林山。

それだけでも怪しいのに・・・


「身なりだけでも不自然だが、お前達の武術の腕・・・!我が配下にも匹敵する。」


尋常ではない強さ。

それがますます、衛青の警戒心を強めていた。


(林山っ・・・・!!)

(睨んでる、睨んでる・・・・というか、関係者だとわかるから、見ないでほしいな・・・)


衛青の背後から自分を見る星影の顔は、目は、完全に怒っている。

大将軍の言うように、先ほど見せた林山達の腕っ節の強さは普通ではない。

ある意味、漢帝国最強の武人からの誉れも高い褒め言葉だが、今はそれを喜んでいる場合ではないだろう。

加えて、真夜中という時間帯を合わせれば、どんなに甘く見ても宮中関係者とは判断できない。



(私だって衛青将軍と同じ立場なら、林山達を怪しい奴と・・・悪く言えば、さっきの奴の同業者だと思ってしまう。)



未だに顔の半分は隠したままの林山。

素顔を隠している時点で、不審者扱いされても仕方がないのである。


(どうしよう・・・下手に私が口出しをすれば、怪しまれるからな・・・)


迷った末、2人の出方をうかがう星影。

そんな彼女の前で、刃物を向けられている黒衣の男が言った。


「いえいえ。怪しくなどありません。」


雲散臭い顔で義烈は語る。



「後宮の皆様と昵懇のある商人でしたら、ここにいてもおかしくはございませんよ?」



((こいつっ!?))



衛青の問い対して、動揺することなく軽い口調で返事をする男。

その態度に、星影も林山もあきれるしかない。

質問した方も、かすかに眉間にしわを寄せる。


「ほぉ・・・近頃の商人は、黒装束に、顔まで隠して商いをするのか・・・?」

「はい。特に、夜のイトナミ道具を扱うとなりますと、それはもぉ~」


「ふざけるな!!」



不真面目な義烈の答えに、衛青の目がかっと見開く。



「どこの世界に、闇に通じ、武に長けた商人がいる!?」


(闇!?)



衛青の言葉に、体ではなく、思考が動く星影。


(闇・・・?どういう意味なの・・・?)


大将軍の言葉の意味が読み取れず、星影は思案したが、すぐにそれは中断される。

彼女の目の前で、義烈に向けられた刃先が動いたからだ。


「あ!?」

「危ない!」


本物の林山が叫ぶよりも早く、その動きに反応する侠客。

それをいち早く察すると、男は――――義烈は軽々と衛青の頭上を飛んだ。


「きゃ!?」

「と、飛び越えた!?」


その光景に、玲春と皇太子が叫ぶ。

少しばかり武術をかじった一般商人・・・とは言えないほどの身こなし。



「おいいい!?」

「何やってんだ馬鹿――――!?」

「ズラかるぞ!」



怒鳴る星影と、怒る林山の言葉に続くように、飛び越えた本人が飄々と言う。


「ズラって・・・に、逃げるのか!?」

「なによ?居残りでもしたいのか?」


林山の問いに、舌を出しながら義烈は告げる。


「お前がここで死にたいなら、俺一人でおさらばするけどなぁ~」

「なっ!?こんの・・・俺は死なない!まだ死ねない!」


相棒の言葉に怒鳴りながら、林山も林山で素早く大将軍達から距離を取って離れた。


(これで本当にもう、言い訳できないっ!)


この期に及んで誤魔化そうとしていた林山の考えは、義烈の行動によって断念される。

その証拠に・・・



「やはり・・・侵入者であったか?」



鋭い眼力で自分達を見てくる漢帝国の大将軍。

先ほどまで、自分達に向けていた顔とは違う表情。

自分の頭の上を飛び越え、背後に舞い降りた義烈へ、向き直りながら武人はつぶやく。



「そなた達が、皇太子殿下を守ってくれたことには感謝している。しかし、それとこれとは話が別!」



そう叫ぶ大将軍に、嫌な予感しか覚えない星影と林山。



(まさか――――――)

(衛青将軍・・・・!?)



「宦官でも、武官・文官でもない以上、悪いが捕縛させてもらう!」



((やっぱり―――――――!!))



予想通りの言葉を発した衛青に、衝撃を隠せない義姉弟。

皇太子の叔父の言葉に、星影と林山は思う。



(最悪の予感的中!衛青将軍の性格を考えれば、恩を感じつつも、規則・決まりについては絶対に曲げないお方!そうなれば・・・いくら、協力者と言っても、侵入者と言える林山達を見逃すはずがない!!)


(衛青将軍が、俺達を見逃さない以上、俺達に出来る最善策は逃げることだけど・・・)


「逃がさんぞ!」


手にして剣を地面に突き立てると、近くに散乱していた弓に手をやる大将軍。


「衛青将軍!?」

「叔父上何を――――――!?」


星影が名を呼び、何をするのかと皇太子が聞く前に、その手から数本の矢が放たれた。


「うお!?」

「わっ!?」


それらは、逃げていた義烈と林山の足元に刺さり、2人を足止めすることに成功した。


「いい腕してるぜ・・・!」

「感心してる場合か!?」

「その通り・・・次は、急所だ・・・!」


本物の林山の言葉に、キリリと弓の弦を引きながら通告する衛青。


「お、おい、義烈・・・!」

「面白れぇ・・・!」


弓を引く武人に聞こえないように林山が名を呼べば、にっと笑いがなら義烈は叫ぶ。


「万里の長城越えをしたあの衛青大将軍様に、ここまで引き止められちゃあ、男がすたるってもんだよな・・・?」

「はあ!?お前何言ってんの!?」

「いい男ってのは、他の雄にはできないことをやってのけるからこそ、男振りも上がるもんなんだぜ?」

「本当に何言ってんだぁ!?」


立ち止まった義烈を問いただせば、ニヒルな笑みで侠客は言った。


「予定変更!捕まえられるもんなら、捕まえてみな!阿青ちゃんよ~」

「はあああ!?」

「挑発するなぁ――――――!!」


義烈の言葉に星影はギョッとし、林山は叫んで怒るしかない。


「お、お前っ!逃げるんじゃなかったのか!?」

「気が変わった~あのくそまじめと喧嘩してみたくなったんだ。」

「この気分屋が!しかも闘る気満々かよ!?」


呆れ返った林山をよそに、戦う道を選んだ百面夜叉の義烈。

しかし、呆れたのは林山だけではなかった。



(ああいうのを、戦い馬鹿というのね・・・!!)



成り行きを静かに見守っていた星影も、そうだった。


(よくわからないけど、血の気が多いと言うか、血気盛んと言うか・・・)


林山てば、なんて面倒な奴を連れてきてくれたのよ・・・!!


(完全に足手まといにしかなってないじゃない!?)


自分もその分類に入るのだと気づいていない星影は、額を抑えながら頭を痛める。

本来ならば、林山共々逃がすのが一番だが、運命は皮肉だった。



「おら!かかってきな!」

「ちょ、やめろよっ!!」



その場で構える姿をしながら衛青を挑発する義烈に、口元の布が取れる勢いで大口開けながら制止する林山。


「なんだよ?何する気だよ?」

「お前だよ!お前馬鹿!?なに考えてんの!?何したいの!?」

「あん?だから、闘うに決まってんだろう?オメーは、甘ちゃんだから見学してな。」

「そうじゃねぇよ!将軍相手に何言ってんの!?なんで喧嘩を売るんだよ!?」

「馬鹿!大将軍様だろう?」

「だったら、なおさら悪いだろう!?ここで戦ったら、洒落にならないぞ!?殺されでもし―――――――」

「誰が?」

「むう!?」


義烈の言葉に、怒りながら林山が言えば、その言葉が途中で遮断される。


「むううう~!?」

「だぁ~れが、殺される方かな、坊や?」


音もなく林山に近寄った男が、片手でその両頬を掴んでくぼみ口を作りながら言う。


「坊や、お兄さんを舐めてもらっちゃ困るぜ?いい子だから、逃げれる準備だけしときな。なぁ~に・・・殺しはしねぇ。」

「貴様・・・!」


林山の顔で遊びながら言う義烈の言葉に、衛青の眉間がかすかに歪む。


「・・・私も気持ちは同じだ。生きて、貴様をとらえよう・・・!」

「おっさんが、無理してんじゃねぇぞ?」


険悪な空気は広がり、この様子に本物の林山も皇太子も玲春もうろたえる。

しかし、あの人物だけは違っていた。



「いい加減にしろよっ!!」

「安様!?」



言ったのは、安林山と名乗っている美貌の宦官。



(せ、星影!?)


「衛青将軍に対して無礼であろう!?」



自分の親友の顔を触りまくっている男に、声を荒げながら彼女は言う。


「皇太子殿下たちを守るため、加勢してくれたことは私も感謝している!だが・・・衛青将軍を侮辱することは私が許さない!」

「あ、安様!危のうございます!自重なさってくださいませ・・・!」

「止めないでください、玲春殿。危ないですから、おさがりを。」

「安様!」

「紅嘉、玲春殿を安全な場所に・・・皇太子殿下のお側へ・・・!」

「へ?わ、私?」

「ガルル!」


星影の命を受け、小虎は玲春の服の袖を引っ張って連れていく。

指名された皇太子の側へと向かわせる。


「あ、安様・・・!」

「大丈夫だから。」


心配そうに名を呼ぶ少女に男前な顔で声をかけると、恭しく皇太子殿下に目くばせする宦官。

これで、不意を突かれていた皇太子も表情を引き締めた。


「安林山殿の申す通りだ・・・。さあ、玲春こちらへ・・・!」

「皇太子殿下・・・!」


そんな星影の態度に、叔父から少しだけ離れ、少女を守るように自分の方へ抱き寄せる皇帝の息子。

それには衛青だけでなく、侵入者とみなされた男2人も・・・特に本物の林山が驚いた。


(なにあいつ!?いつから、皇太子を顎で使えるような存在になったの!?)


そう言いたかったが、立場上そんなことは言えない。

そんな林山に気づくことなく、問題の宦官は凛々しい顔で義烈に言った。


「どこの馬の骨か知らないが、衛青将軍相手に大見栄きれたものだな!?」

「安林山殿・・・」

「安林山とおよび下さい、大将軍・・・!あなたが手を下すまでもございません。」

「ちょっ・・・!?」


(ちょっと星影!?お前も何言ってるの!?)



まさか――――――――!?



林山の冷汗が背中に流れたのと、星影がその言葉を発したのは、ほぼ同時去った。



「ここは、私にお任せ下さい!」



そう言うと、収めた刀を抜きながら言った。



「賊の一人や二人、私が追い払って見せます。」


(星影―――――――――!?)



宣言した星影の瞳と、林山の目が一瞬交差する。


(そういうことか・・・!?)


彼女と目があった時、体に流れていた嫌な汗が止まる。


(そういう意味か!)


「あ、安様!追い払うなど、犬猫ではございませんのに―――――!?」

「いいえ、必ず痛めつけて追い払います。」


(考えてくれたな、星影!)


その言葉で、彼女の本心を知ってホッとする本物の林山。

彼女が『捕える』ではなく、『追い払う』と言ったことで、自分達を逃がそうとしてくれているのだと知る。


(その気持ちはありがたいが・・・お前自身が危なくなる行為でもあるんだぞ、星影!?)


宦官の立場の星影が、将軍の代わりに賊を相手にするというのはおかしい話。

元々、宦官という存在が武術に優れ、武人に勝る活躍をしていることに問題がある。


(この場で衛青将軍や皇太子殿下を誤魔化せたとしても、あとで話を聞いた他の者が納得するはずがない・・・!)


すでに、星影には前科がある。

皇帝陛下を1人で賊から救ったという偉業がある。

彼女が知らないだけで、皇帝の近くに使える重臣たちは身元捜査をし直しているかもしれない。



(それさえもわかっていてお前は――――――――!)


(ここまできたら、破れかぶれよ・・・!林山を、必ず無事に逃がしてみせる・・・!)



真剣な思いで刀を構えた星影だったが、その思いは横道へとそれた。


「ぷっ!さぁ~すが、衛青大将軍様!」


好戦的な態度を装う宦官に、曲者である侠客は告げる。


「宦官風情に慕われるとは・・・よっぽど、可愛がって差し上げてるんでしょうな?」

「なんだと!?」

「あん?違うのか~?お前、衛青将軍の槍をケツに毎晩受けてんだろう~?テメーの槍がないから、人の槍でよがるなんざ、宦官の日常じゃあ当たり前なんだろう?」

「なっ・・・!?」


義烈の言葉の意味を理解し、真っ赤に顔を染めれば、そんな星影を見て挑発した本人はさらに言った。


「おいおい、思い出して感じてんのか?道理で、宮中の警備が緩いわけだ。宦官の尻の穴が、そんだけゆるければよぉ~」

「き、貴様ぁ!!」

「ぎゃあああ!本当に何言ってんだ侠客!」


本気で怒りかけている星影に気づき、林山が義烈の口をふさぐ。

しかし、わずかな差で・・・義烈は、自分の口が閉ざされる前に余計な一言を言った。


「霍将軍がいなくなって、やっと日なたに出れたんだろう?気を付けないと、また日陰に追いやられるぜ~?影薄大将軍様?」

「か・・・!?」



(―――――――影薄将軍・・・・!!)



義烈の放った一言が、星影の闘争本能にまで火をつけた。


(星影!?ま、まさか・・・本気で怒ったんじゃあ・・・!?)


「貴様!我が叔父だけでも許せぬのに、安林山にまで!!」

「ひどい!謝ってください!」

「あん?事実だろう?影薄いだろうが?」

「やめろバカ男!」


しかし、彼女を落ち着かせなければ、事態がもっと悪くなる。


「かげ、うす・・・・!」


林山の予想通り、星影の怒りの爆発が秒読みに入ってしまう。



(衛青将軍を陰薄将軍などと・・・・!!)



甥である霍去病と比べて、揶揄したのだとわかった。

ふつふつと静かに沸き起こる怒りで、静かになる星影。

これで、林山だけでなく、義烈も相手が怒っているのだとわかった。


「あれ~?怒っちゃったのかな、宦官ちゃん?」

「や、やめろ!」

「うるせぇ!くっつくなガキが!喜色悪りぃんだよ・・・!?」


止める林山を振り払うと、片目を細めながら星影を見る義烈。

そして、鎮めるどころか、煽る言葉を宦官に投げかけた。


「影薄いのは事実だろう?甥っ子の方が有名じゃねぇか?」

「それは早死・・・夭折されたからだ!!若く優秀なものが早く死ぬと、美化されることが多いだろう!?衛青将軍の方が、漢帝国のために貢献している!!」


(星影・・・!)


お前、そこまで衛青将軍のことを?


初めて見る星影の姿に、先ほどの『陛下のようになりなさい』発言よりも、はるかに感動を覚える林山。

しかし、事態は穏便には終わらなかった。



「ば~か!同じ国の代表にするなら、華やかの方がいいだろうが?誰が好き好んで、奴隷上がり将軍を慕うかよ?そんなこともわかんねぇのか、この玉無しが!」

「ど・・・!?」

「ば、ばか!!」



―――奴隷上がり将軍―――



その言葉が、新たな修羅場への合図となった。


最後まで読んでくださり、ありがとうございます!!


衛青VS義烈の流れが、星影VS義烈の予感となってきました。

自分が衛青将軍の代わりに対峙することで、林山達を逃がそうとする星影でしたが、雲行きが怪しくなってしまいました(笑)

次項、挑発された星影はどうするか・・・よかったら、読んであげてください(照)


※お手数ですが、誤字・脱字を発見した方、こっそりでいいので教えてください!!お願いします・・・!!


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