アーケード内での事件
---プルル。プルルルル。---
普段はマナーモードのはずの俺の携帯がけたたましく鳴った。
「はい?」
寝起きの俺の声は最悪に暗い。
「尚ちゃん?狸小路にいるからおいでよ。」
広也からだ。どうやら俺が寝ている間に出かけたらしい。
「了解。シャワー浴びて行くわぁ。」
眠い目をこすりながら外を見ると、あたりはすっかり暗くなっていた。
広也のいる岬小路までは、俺の家からタクシーでも10分位。
夜の仕事をしていると、タクシーにすぐ乗る怠慢な癖がついて困る。
(あのアホ、がっちりネタ吸わせやがって。体がダルイ。。。)
そしてシャワーを浴び、簡単に身支度を整え、香水を振り、外へ出た。
ジャケット一枚羽織るだけで外に出れるこの気温は、この地域ではひと時の夏を感じれるいい季節だ。
タクシーに乗り込んだ俺は、運転手に行き先を告げた。
「狸小路まで。」
狸小路とは、決して路地ではなく、この町の繁華街の少し手前にあり、もともとは商店街が並んでいた場 所だが、カラオケ、ゲームセンター、クラブ、ドン・キホーテ。基本的に若い奴の集まるアーケード街に なる。良くこのこの街の悪ガキがよく溜まる。
近くまで来たので、広也の携帯を短縮で探した。
履歴からすぐ見つかりコールする。
「はいよ。」
広也だ。出るのがいつも早い。
「狸のどこにいるの?」
狸小路は東西に長く伸びているので、詳しく聞かないとどこか全く分からない。
「クラブのとこ。」
「わかったよ。」