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第十三話 幸せの影に。

「最近、純元気だよねー。」


俺は部活帰りに美貴と下校していた。いつもの並木道を二人で手を繋いで歩いていた。だけど突然、何を言い出すんだい美貴?最近は必ず一緒に帰るのが日課になっていた。毎日一緒なのに急に何だよ?相変わらず予想外な美貴。意味がわからないから聞き返した。


「俺は最近元気なかったかい?」


美貴は握った俺の手を振りながら、何回も頷きながら答えた。


「純の事なら美貴は何でもわかるのだ!最近悩んでたでしょー?そんで最近解決できた!でしょ?」


図星だった。ったく。母さんと雄司に続いて、美貴にまで考えてることがバレてやがる。人間が凄いんじゃなくて、単に俺がわかりやすいだけじゃないか?


「凄いな、美貴。大正解だよ。」


美貴は微笑む。手を離しスキップをして俺の数歩先を歩いた。ご機嫌だ。


「でしょー!それに気付いて毎日純に元気づけてたんだよ!美貴のおかげだね!」


……ん?やっぱ美貴は母さんや雄司までにはいかないな。何か大きな勘違いをしている。


「あれー?美貴のおかげじゃないのー?」


美貴はスキップを止めて後ろ歩きになった。バックを両手で後ろに持ち、前屈みになって俺の顔を覗く。完全に勘違いしてる。けど面倒臭いし、美貴と一緒にいて元気になったのは事実だ。ここは嘘をつこう。


「美貴のおかげだよ。ありがとな。」


それを聞くと満面の笑みになった。そしてやっぱりスキップを始めた。


「えへへー。やっぱ美貴様は凄いね!」


ったく。可愛いな。俺も笑みがこぼれる。


「純ー。今、美貴のこと可愛いって思ったでしょー?」


え?顔も見てないのに何でわかった?美貴は俺の数歩先でスキップをしてるのに。ドキッとして、顔が赤くなった。


「あーやっぱりそうなんだ!純、顔赤くなってるし!」


美貴は振り向いて俺の顔をまじまじと見ていた。完全にからかってやがる。くそっ。負けてられない。


「そうだよ。美貴を可愛いって思った。」


真剣な顔して言ってやった。恥ずかしいけどな。いつもおちゃらけてる美貴だけど、こうやって恥ずかしい事を言うと――


「で、でしょ!やっぱぱ、そうだよね!」


絵に描いたように照れる。一瞬にして茹でダコみたく赤くなった。やっぱり可愛い奴だ。


気が付くと美貴の家の前だった。あっという間だ。俺達は何時ものようにキスをして抱き合った。


「私達、付き合ってもう三ヵ月だねー。」


俺の腕の中で美貴が言った。


「そうだね。早いもんだな。」


すると美貴は俺の胸に頭をこすりつけた。


「………いないんだー。」


「え?何?聞こえないよ?」


すると美貴は俺の胸を叩いた。何回も。


「だからー!今週末、両親が旅行で誰もいないんだーって言ったの!バカ!」


……え?それって?美貴の顔を見ようとしたら美貴は俺の胸に顔をうずめていた。表情は伺えなかった。でも、俺が想像している意味に違いない。鼓動が高鳴る。息が苦しい――。




――ピリリリッ


携帯が鳴った。こういう時は出たほうがいいのか?無視するべきか?頭が混乱している。携帯は止まらない。


「出ていいよ?」


「え。あ、ああ。ちょっとごめんな。」


美貴を離して背を向ける。携帯を開く。親爺かよ。ったく。タイミング悪いな。


「――もしもしぃ?」


「純。今すぐ帰ってこい。」


「はぁ?なんだよ、いきなり。」


「いいから早く帰ってこんかっ!!」


親爺の怒号で反射的に携帯を耳元から離してしまった。何なんだ?激昂してんじゃないか。意味がわからない。一体何事だよ?でもただ事じゃない。尋常じゃない。これは従うしかない。


「……わかったよ。今すぐ帰る。」


そう言って携帯を切った。美貴を見る。心配そうだ。親爺の声は美貴にも聞こえたみたいだ。


「大丈夫??」


「俺にもよくわからないけど、とにかく帰るわ。悪いな。あ、あの話はまた今度な。」


「う、うん。気を付けてね。」


俺は美貴に別れを告げ、家に向かい走った。一体、何事なんだ?


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