第十二話 雄司の答え。
あれから二週間。インターハイまで残り一月を切った。
「違うだろ!今のワンドリブルはいらねぇよ!ダイレクトで打て!」
キャプテンの怒号が体育館に響く。後輩は怖じけることなく、雄司の指示を聞く。間違いを理解したからだ。
「ディフェンスも簡単に打たせるな!常にプレッシャーを与えろ!」
俺も矢継ぎ早に指示を出す。俺達の高校には監督はいない。俺と雄司が作り上げたチームだ。
さすがに一月を切ると、練習も厳しさを増してきた。だが、手応えはある。厳しく指導すれば純粋に答えてくるチームだ。確かな手応えを感じていた。
部活終了のチャイムが鳴った。暫らくすると、二人きりになった。
ここからが俺の練習だ。毎日の日課。雄司との一対一。
「いい目になってきたな!」
雄司からボールを奪おうとディフェンスをする俺に言った。
「いつまで雄司に負けているわけにはいかねぇよ!」
ボールを奪った。すぐさまドリブルを開始する。俺達の一対一は通常のハーフコートじゃない。オールコートでやる。実戦に近いし体力もつくからな。全力で走る。いける。跳び上がりレイアップをする。
「百年早ぇ!」
雄司は後ろか跳んだ。だが、俺よりも高く跳び、レイアップを叩き落とした。
雄司はボールを奪いゴールに向う。速い。追い付けない。いや、雄司と俺のスピードはほぼ同じ。違うのは体力だ。練習後でも体力が衰えてない。雄司は無人のゴールにダンクを決めた。
「惜しかったが、また俺の勝ちだな。」
「卒業する前には勝つさ。」
「楽しみにしてるよ。」
雄司はそう言ってバックからタオルを出した。汗だくの顔を拭く。俺はドリンクを取り、喉を潤す。
「純。この前の話、覚えてるか?」
「何の事だ?」
「あれだよ。純はまだ本気じゃないって話。」
ドリンクを飲むのを止める。雄司を見た。
「俺は今でもそう思っている。お前の目から、体から、俺にはない異質な力を感じる。前よりも強く、な。」
まだ諦めてないのか。死神だってバレる訳にはいかないんだ。吐く訳にはいかない。
「純が何かを隠しているのはわかってる。だけど明かさないって事は、それが答えなんだろ?」
俺は沈黙してしまった。雄司の言う通りだ。だけど認める事はできない。
「それが答えなら、俺はこれ以上詮索しないよ。それに俺の勘違いって線もあるしな。」
――プッ。
「ははははっ!何だよそれ!」
俺は爆笑してしまった。本当雄司は面白い。俺を本当に信頼しているんだな。嬉しいよ。
「まぁ論理もガタガタだし、証拠もないけど、そう思うならそう思っててくれよ。俺に本当にそんな力があればいいんだけどな。」
爆笑しているのがむかついたのか、雄司は俺の顔目がけてタオルを投げた。
「馬鹿にしがってー。まぁいい。話はそれだけだよ。」
雄司も笑っていた。少し顔が赤い。雄司も論理がメチャクチャなのを理解してたんだろう。恥ずかしいんだろうな。
俺達は腹を抱え笑いあった。久々に笑った。腹がよじれるほどに。ここ何週間か少し沈んだ気持ちになったけど、一気に晴れた。
雄司の気持ちもわかるけどな。だけど俺は死神の能力は使わないよ。人間の力を研く。研いて人間達に勝つさ。そして夢を叶えてみせるさ。