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心の湖

作者: ごはん
掲載日:2025/08/02

人の声に揺れるたび、ひとつずつ、自分が削れていくような気がしていた。


リナは、人の目を見て話すのが苦手になっていた。

相手の一言に、心が波立ち、顔がこわばり、頭の中で反芻してしまう。

「なぜ、そんなふうに言われたんだろう」

「私が悪かったのかな」

そんな問いが、夜になると静かに胸を締めつける。


ある日、彼女はバスに乗って、小さな湖のある場所に向かった。

そこは、学生のころに一度だけ訪れたことのある、静かな場所だった。


湖の水は、風が吹かなければ動かない。

誰もいないときは、まるで鏡のように空を映していた。

リナは、湖のほとりに腰を下ろし、そっと目を閉じた。


「私は今、疲れてる」

言葉にしてみると、それは思っていたよりも静かで、真っ直ぐだった。


「だから、人のことばに揺れるのも、当然なんだよ」

「私のせいじゃない。揺れるのは、生きてる証だから」


湖の表面に、風がひとつ。

小さなさざ波が立って、また静まった。


リナは、自分の心の中にも、こんな湖があると想像してみた。

波立ってもいい。

静まる時を、待てばいい。


しばらくの間、何も考えずに、風の音だけを聞いていた。


その帰り道、スマートフォンに友人からの通知が届いていた。

けれどリナは、それをすぐには開かなかった。


「今、心を守る方が大切だから」

そう思えたことが、少しだけ、嬉しかった。

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