表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

心の湖

作者: ごはん

人の声に揺れるたび、ひとつずつ、自分が削れていくような気がしていた。


リナは、人の目を見て話すのが苦手になっていた。

相手の一言に、心が波立ち、顔がこわばり、頭の中で反芻してしまう。

「なぜ、そんなふうに言われたんだろう」

「私が悪かったのかな」

そんな問いが、夜になると静かに胸を締めつける。


ある日、彼女はバスに乗って、小さな湖のある場所に向かった。

そこは、学生のころに一度だけ訪れたことのある、静かな場所だった。


湖の水は、風が吹かなければ動かない。

誰もいないときは、まるで鏡のように空を映していた。

リナは、湖のほとりに腰を下ろし、そっと目を閉じた。


「私は今、疲れてる」

言葉にしてみると、それは思っていたよりも静かで、真っ直ぐだった。


「だから、人のことばに揺れるのも、当然なんだよ」

「私のせいじゃない。揺れるのは、生きてる証だから」


湖の表面に、風がひとつ。

小さなさざ波が立って、また静まった。


リナは、自分の心の中にも、こんな湖があると想像してみた。

波立ってもいい。

静まる時を、待てばいい。


しばらくの間、何も考えずに、風の音だけを聞いていた。


その帰り道、スマートフォンに友人からの通知が届いていた。

けれどリナは、それをすぐには開かなかった。


「今、心を守る方が大切だから」

そう思えたことが、少しだけ、嬉しかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ