君の願いを
「……ARASHI」
夜。寮の共有リビング。
部屋の灯りは落としてあって、間接照明がぼんやりと空間を照らしている。
ソファの端にちょこんと座って、ARASHIは薄手のブランケットにくるまっていた。
スマホをいじっていた手が止まる。俺を見上げる、優しい瞳。
「ユウク?」
「ちょっと……話、していい?」
「うん」
その返事に安堵しながら、俺は彼の隣に腰を下ろした。
「……マネージャーに話した。お前の、ピアスのこと」
一瞬、ARASHIの肩がぴくっと動いた。
そして、俺の顔をまっすぐ見る。少しだけ不安げに。
「……怒ってない?」
「ううん。……話してくれてありがとう。ボク、嬉しい」
ARASHIの表情が少し緩んだ。
でも、言いたいのはここからだった。
「……ボクさ、最初、お前のピアスのこと“やだ”って、すごく反対したじゃん」
「うん」
「でも……ちゃんと考えた。あの日、お前が泣いてたの、見たから」
ARASHIが驚いたように目を丸くした。
「泣いてるところ、見られてたの……?」
「悪い。けど、止まれなかった。……放っておけなかった」
俺の言葉に、ARASHIが俯く。
けれど、ブランケットの上から握られた手は、ほんの少しだけ震えていた。
「お前が、何かを変えたいって思ったなら、それは……俺にとって大事なことなんだよ」
「ユウク……」
「だから、目立たないようにって条件つきだけど、マネージャーも検討してくれるって。……良かったな」
ARASHIの目に、すっと光がにじむ。
でも今度は、泣き顔じゃなかった。
「……ありがと。ユウクが、ボクのこと、わかろうとしてくれて、嬉しかった」
「ボクだって、お前の相棒だからな」
言いながら、心臓の鼓動がうるさかった。
なんでこんな、照れくさいことばかり言うんだろう。
でも、言いたかった。ちゃんと伝えたかった。
「ピアス、似合うと思うよ。お前なら、きっとどんなのでも」
ARASHIはくすっと笑った。
「じゃあ、ユウクに選んでもらおうかな。最初のひとつ」
「え……お、おう」
動揺した。
でも、それを悟られたくなくて視線を逸らす。
まったく、あいつは時々こうして、不意に爆弾を投げてくる。
それでも――その笑顔を見ていると、
あの日、あいつが涙を流した意味が、少しだけ分かった気がした。




