余韻
ステージの幕が閉まった瞬間、どっと力が抜ける。
耳に残るのは、まだ収まりきらない観客の歓声。
照明が落ちても、会場の奥ではペンライトの光が星屑みたいに揺れている。
ARASHIは、その中心に立ち続けていた。
最後に「またな、駄犬共♡」と投げた笑顔は、ファンを完璧に狂わせる一撃だった。
でも――袖に戻ってきたARASHIの顔は、汗で濡れて、肩で息をして、足も少し震えていた。
「……ARASHI」
声をかけると、彼は小さく頷いた。
強がって笑みを作るけど、手の冷たさはさっきの緊張と変わらない。
それでも――目は違っていた。
ステージに出る前の、迷いと恐怖で揺れていた瞳じゃない。
燃え尽きたようで、それでも強く輝いている。
「よくやったな」
ボクはタオルを渡しながら、頭をわしゃっと撫でてしまった。
本人はすぐに「子ども扱いするな」って眉を寄せたけれど、隠しきれない安堵がそこにあった。
……ほんとに、毎回心臓に悪い。
袖に立っているボクは全部知っているんだ。
ARASHIが出番前にどれだけガチガチになっているか、
ステージで一歩踏み出す瞬間にどれだけ勇気を振り絞っているか。
ファンは「王子様」「オレ様」なんて言葉で持ち上げてくれるけれど、
その裏で震えている彼の手を握ってきたのは、ボクだ。
「……お疲れ」
その一言に、ARASHIは少しだけ顔を赤らめて、けれど目を細めて笑った。
その笑顔が、ボクの全部を救ってしまう。
――ああ、やっぱり今日も奇跡を生んだんだな。
ボクの隣に立つARASHI。
アイドルという皮を纏ったままでも、纏わなくなっても。
その歌を支えていくのは、きっとずっとボクの役目だ。
袖の奥から、マネージャーの「次移動だぞ!」という声が飛ぶ。
ARASHIがタオルで顔を拭きながら「わかってる」って返す。
その背中を追いかけながら、ボクは胸の奥で小さく呟いた。
――お前の歌を、明日も、その先も輝かせてやる。
そして、光の海から戻ってきた彼と一緒に、また歩き出した。




