そのメッセージの裏は
あと一時間で「当日」になるというのに、ボクは布団にもぐりこんでスマホを握り、にやけ顔を止められずにいた。
――燃料投下。思わず口に出る。
画面に指を滑らせ、文章を撃ちこむ。
> 明日はライブ本番だけど、お前ら駄犬共ちゃんと準備出来ているか?
お前らちゃんと周りに布教しておけよ?
オレ様の事、
オレ様の歌は生じゃなきゃ意味ねーんだからな?
ちゃんとライブに来て生歌聞けよ
#ライブじゃなきゃ意味は無い
#駄犬共全員虜にしてやる
#駄犬共の忠誠心を見せてみろ
#ちゃんと布教もしろ
またな♡
送信。
瞬間、胸が高鳴って息が浅くなる。
ライブは――怖い。
ちゃんと来てくれるかな。失敗したらどうしよう。
ステージに立つその瞬間まで、手の震えは止まらない。
眠らなくちゃいけないのに、眠れない。
「ARASHI、まだ起きてるのか?」
隣から囁き声。顔を向けると、ユウクの影がある。
「ごめん、スマホまぶしかった?」
「……眠れないのか?」
「もう寝るよ」
「どうせまた“失敗したらどうしよう”って考えてるんだろ」
図星を刺されて、ボクはむっとする。
「そんなこと――」と言いかけたところで、ユウクが手を差し出した。
「ほら。手握っててやるから、寝ちゃいな」
「子ども扱いするな」
そう反射的に噛みつくと、ユウクは苦笑して、ボクの頭をやさしく撫でた。
「だからさ、今だけは子どもでいいんだよ」
言葉の代わりに、彼の掌がそっとボクの目を覆う。
温かい。暗い。世界が一拍、遠のく。
「おやすみ、ARASHI」
喉まで上がった「ふざけんな」は、口の中でほどけて消えた。
鼓動が、ゆっくりと数を減らしていく。
遠く、もう一度だけ聞こえた。
――おやすみ、ARASHI。
ボクはその声に引っ張られるように、静かな眠りへ落ちていった。




