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深淵の森

深淵の森。

深部に近づくほど強い魔物が現れる。

弱い魔物は深部を追われ、強力な人間によって刈られていく。


ストーンスネイク。

スネイク種の中の一種で皮膚の固さ、重さが特徴で真っ白い姿をした魔物だ。

この魔物は本来Cランクに位置する魔物。

熟練の冒険者が仲間を募って討伐するレベルの魔物である。

しかし、この深淵の森に至ってはこのストーンスネークですら最下層に位置する魔物となっている。

つまりランクCの魔物が生存競争の最下層、つまり入り口付近にうろうろしているのがこの深淵の森なのである。


ホーンラビット。

角を生やしたウサギの魔物。

群れで行動をし獲物を見つけては早い者勝ちと言わんばかりの勢いで我先に飛びかかってくる食欲旺盛な魔物である。


私は今そのホーンラビットに囲まれていた。

ストーンスネークを葬り、歩き回って直ぐのタイミングである。

道中、茂みが揺れたことに反応し足を止めた。

何が出てくるのかと身構える私の虚を突く形で一匹のホーンラビットはいきなり飛びかかってきた。

長年の経験により体が勝手に反応しホーンラビットを真っ二つにする。

倒れたホーンラビットを見て初めて飛びかかってきた魔物の正体に気づいたほどだ。

そして即座に異変が起きる。

辺りの茂みが途端に揺れ始め一匹、一匹と姿を現し始める。

そして気づけば私はホーンラビットの群れに包囲されていた。


数はおよそ50ってところね。


私は笑みを浮かべる。


楽勝!!


そこからは一方的な蹂躙であった。

一斉に飛びかかってきたホーンラビットであったが確実に一匹づつ一撃で沈めていく。

華麗で美しい舞を踊るかのような魅せられる動きで瞬く間にホーンラビットは全滅した。

終わってみれば、ほんの数秒の戦闘。

鎌を振って、付いた血を落とす。


辺りは綺麗に切り裂かれた魔物の死骸。

自身の半径数センチから血だまりが出来ている。

私は帰りも浴びることなく無傷でこの戦闘を終わらせたのであった。


討伐の証である角を取り終えた私は、とある違和感を覚えた。


ホーンラビット。

この魔物のランクは単体ならEランク。

群れなら10匹以内ならDランク、10匹以上ならCランク、50匹以上からBランクとなる。

今回の規模ならBランク。

そしてこの場所はまだ深淵の森に入ったばかりの入り口である。

入り口であろうと最底辺がCランク。

Bランクがいない事もない。

しかし、基本的にBランクはもう少し奥にいる事が多い。

つまりもう少し奥にいても生き残れる強さをこの集団は持ち合わせていることになる。

だからこそ入り口付近にホーンラビット50匹ほどの群れがいたという事実に違和感を覚えたのである。


ホーンラビットは本来ランクE。

群れとはいえ、一匹一匹はこの森にふさわしくないと言えるほどの弱者。

別に浅い所にいてもおかしくはないのか・・・・・・。

私は違和感を気のせいと判断し進む。











「ん?」


再び、歩き出した私は羽音のようなものを聞き足を止める。

今度は近づかれる前にその正体をこの目に収める。


キラービー。

大型の蜂型の魔物だ。

サイズは1m程と蜂にしては大きい。

ビー種の基本的な種である。

すべてのビー種はこのキラービーからの派生であると言われている。


キラービーは真っすぐにこちらに向かってくる。


私はその魔物を冷ややかな眼差しで睨みつけた後、すれ違いざまに首を刈り取る。


キラービーは構わず飛んでいたが、やがて首が離れ落ちていく。

まるで死んだことにすら気付いていない。

そんな様子であった。


私はキラービーに目を向ける。


キラービーはキラークイーンと言う女王蜂をリーダーにコロニーを形成し、群れで行動している。

ビー種はすべての種で全く同じ行動をする。

それは餌である花の群生地を縄張り化し、その周辺にコロニーを作るという点だ。

ビー種は一様に同じ行動をすることから、すべての起源はキラービーだと言われているのである。

キラービーは本来草食系。

魔物との争いを避けるために縄張りから出る事をあまりしない。

ある一点を覗いては・・・・・・。

その一点とは、コロニーの移動である。

その場合、縄張りから出る事を意味しているため、今のようにキラービーが単独で縄張りを出て新たな住処を探していると言える。

つまり、深淵の森の生態系が多少変化していることを意味している。


キラークイーンはランクB。

もちろん仕留めに行く。

私は進路を変更して、キラービーが飛んできた方角に足を進めた。











かなり遠くまで探索させるのね・・・・・・。


キラークイーンの居場所を探して歩き続けること数時間。

相当量歩いていた。

道中、多くのキラービーを見つけ、首を落としたが今だコロニーは見つからない。

こんだけ探しても見つからないとなるとすでにないのかも?と考えてしまう。

それにかなりの距離を歩いたこともあり多くの魔物に遭遇していた。

巨大なムカデ、巨大な蝶、巨大なクワガタ。

昆虫に似た魔物がさっきを放ち襲い掛かってくる。

が、もちろんすべて始末する。

現在私がいるのは浅地と深部の境。

キラービーを探しているうちに深部に近づいている。


ここまでくると・・・・・・。

コロニーは消滅しているのかもしれない。


「あっ・・・・・・」


しかし、それはただの希望で終わる。

キラービーの集団を視界に収める。

コミュニケーションをとりながら、何かをしているようだ。

だが、関係ない。

私は正面からキラービーに突っ込む。

キラービーは私の存在に気づくが、何かを仕掛ける前に鎌の餌食となる。


キラービーの集団がいたという事は・・・・・・。


私は引き続き進む。











見つけた。


現在木の陰に隠れて、そこからコロニーの様子を窺っている。

コロニーは森の中の開けた空間に形成されていた。

日が満遍なく当たり、その開けた空間の真ん中には巨大な大樹が一本立っている。

そしてその巨大な大樹の枝からぶら下がっているもの。

それがキラークイーンの巣である。

巣のサイズは10m程だろうか。

遠く離れたこの場所からでもその大きさが分かる。


私はゆっくりと大樹に向けて足を進める。


どうやらこの開けた空間全体が縄張りのようだ。

足を踏み入れた途端、大樹の周りを飛んでいたキラービーの視界が私に集まる。


キエエエエエエエ!!


キラービーの1匹が雄たけびを上げると同時に目に見えるすべてのキラービーが動き出す。

狙いはもちろん私だ。


私は鎌を構えて待ち受ける。


一匹一匹打ち漏らさず確実に仕留めていく。

しかし、キラービーも負けじと数で押し返そうとしてくる。

巣からも大量にキラービーが出てきてもはや数えられる量でもなくなっている。


仕方ない。


『身体強化』発動。

瞬間、私の姿が消える。

そして、次の瞬間には付近にいたキラービーの首がすべて飛んでいた。


『身体強化』。

それが私が神から与えられたスキル。

『身体強化』を発動すると、身体能力が限界を超え、今まで行使できなかった領域での戦闘が可能となる。


スキルとは、人類を想像した神マナからの祝福であると言われている。

その証拠に人類は生まれながらに1つスキルを持って生まれてくる。

ただし、スキルの行使にはマナと言われる生命力の源をコントロールする必要がある。

そしてそれは生まれたての子供には存在せず生きていく上で少しずつ生成されていく。

もちろんそれには個人差があるため、不幸が起きる事も稀に起きる。

しかし、このスキルは人類が抗うための力。

新たな領域へ上るための力という事で、国家間でその力の練度を積極的に上げさせようとしている節がある。


そして、私は戦闘系のスキルを承った。

私は人類を守護する人類となったという事だ。

だから私はこの力を振るう。

子供たちを、宝物を守るために。











その後、私は『身体強化』を駆使し、一方的にキラービーを葬っていく。

四方八方から行きつく暇もなく群がってくるが、今の私は一振りでまとめて葬り去れる。

今の私に数の有利は無意味であった。


やがて、巣からキラービーが出てくることが無くなった。

打ち止めのようだ。

あとは・・・・・・。


私は飛び上がり鎌を構える。

狙いは大樹の枝と繋がっているキラークイーンの巣。

巣に攻撃を加えて、巣自身を大樹から切り離す。


そして一閃。

力を込めた一振りは、巣を上段を切り割き、地面に叩き落した。


大きな音を鳴らし地面に落ちる巣。


「おっと」


落ちた衝撃で地鳴りが起きる。


ギエエエエエエエエ!!


巣の中から聞こえる咆哮。

巣にヒビが入りやがて崩壊していく。

そして土煙の中からようやく姿を現す。


ギエエエエエエエエ!!


キラークイーンのお出ましである。











キラークイーン。

ランクBに位置する魔物。

キラービーの進化種ではあるが姿形は少し変わる。

胴体は変わらない。

蜂の頭部に胴体。

しかしそれ以外に変化が起きる。

羽が4枚であったのが、6枚に増えている。

そして腹が12に分裂していて、そこから背中側の腹6つは尻尾のように毒針が6本伸びている。

残りの6つは正面を向いていて、そこでは毒針を飛ばせるように毒針生成器官が搭載されている。

サイズも3mほどと大きくなっている。


本日一番の強敵だ。


まずは出方を窺う。

こちらからは動かず、キラークイーンが動くのを待つ。


少しの睨み合いの末、キラークイーンが動き出す。

前に突き出た腹から毒針を6本射出する。


私は飛び上がる事で躱す。

そしてそのまま近づき、鎌を振り下ろす。


しかし、キラークイーンが後退したことで、鎌は空を切る。


やはり飛行能力がある魔物はやりづらい。


キラークイーンは飛んでいるためにジャンプしなければ当てる術を持たない。

キラークイーンもそれを分かっての事か遠距離攻撃を仕掛けてくる。


キラークイーンの毒針生成能力は素晴らしいの一言に尽きる。

射出したそばから毒針が生成されていく。

これでは生成の隙をつく隙もない。

毒針の嵐を搔い潜っても、6本の尻尾が接近を妨害してくる。


まったく、めんどくさいったらありゃしない。


私はふっと、笑みを浮かべる。


やってやろうじゃない。

羽をすべて毟り取って地面に叩き落としてやる!


キラークイーンとの戦闘は続く。


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