「赤い死神」カーフェ
どんよりとした空気感を感じる森の中。
1人の女性が歩く。
ピンクの長髪を靡かせ、全身を真っ赤な服で統一している。
背負っている鎌は血に漬けたかの様に真っ赤に染めている。
赤い眼光で、目に映るもの全てを憎んでいるような目付き。
その姿はまるで全身に返り血を浴びた死神のよう。
「赤い死神」カーフェ。
それが私の名前である。
キシャアアアアアア!!
ストーンスネーク。
3mを超える巨大で岩のような硬い皮膚を持つ蛇型の魔物。
ストーンスネークは丸呑みしようと口を開け、飛び掛からんとする。
私は予期していたように飛び上がり華麗に交わす。
目の前に現れた魔物を躊躇なく切り捨てる。
鎌を抜いた私は、そのままストーンスネークに鎌を振り下ろす。
ストーンスネークの硬い皮膚を綺麗に切り裂く。
返り血が僅かに顔に掛かるがそんなものは後でいい。
キシャアアアアアア!!
ストーンスネークは悲鳴をあげ、倒れ込む。
しかしまだ動いている。
私はとどめを刺すためにさらに鎌を振り下ろす。
血溜まりができるほどの出血の後、ようやく動きを止めた。
私は動かないストーンスネークを睨みつける。
そして、討伐の証となる前歯を切り落とす。
前歯の回収を終えると再び獲物を求めて歩き出した。
⭐︎
「赤い死神」カーフェ。
この名は私が13歳の頃に付けられたものだ。
深淵の森で魔物と死闘を繰り返した中で付けられた異名だ。
私は孤児だった。
親の顔も知らない。
そんな私はこの森を管理しているトレストと言う街の領主の奴隷となっている。
トレストの領主は代々孤児を奴隷として受け入れ、孤児院に住まわせる。
孤児院は領主の支援の元、最低限の衣食住は保証されている。
が、その対価として、危険区域なら指定されているこの深淵の森での魔物討伐を強制している。
私は自身についている首輪を掴む。
壊そうとするが、その瞬間、私は私自身を殴っていた。
「チッ!」
隷属の首輪の効果である。
私達孤児は領主の命令には決して背くことはできない。
私達は領主自身の身の利益のために捨て駒にされているのである。
今現在孤児院には30名ほどの孤児が集まっている。
全員20歳にも満たない上に、殆どが10歳以下だ。
10歳を超えているのは僅かに4人だけ。
この4人で魔物の討伐を続けている。
隷属の首輪の制約として、
・領主一族に手を出すことは出来ない
・この領から出ることは出来ない
と言う2つの制約が刻まれている。
深淵の森の討伐は孤児院の支援への条件となっている。
冗談じゃない。
命がいくつあっても足りない。
そしてもう1つ。
最も重要な契約がある。
それは1人当たり1億ホルン支払えば奴隷を解放すると言うものだ。
正直、本当かどうかは分からない。
そもそも、1億なんて普通の人間が数年で稼げるような額じゃない。
だが、私達が死んでしまったら次はまだ小さい子供達が魔物の討伐を受けなくてはならなくなる。
それだけは絶対に避けなければならない。
子供達と共に暮らして長く経つ。
10年近くの付き合いの子もいれば、1、2年の子もいる。
けど、断言できる。
子供達は家族であり、私の唯一の宝だ。
だから守る。
なんとしても30億稼いで全員を奴隷から解放する。
その為なら私は『手段』を選ばない。
どんなに怖がられようと、哀れみを受けようと、同情されようと、馬鹿にされようとも、私は必ず生き抜いて、そして私自身の手で子供達の希望となる。
その為に、私は今日もこの鎌を振るう。