#04 武器
その日は少し様子が違っていた。
「緑ちゃん?」
緑は現れた"怪物"を見つめ、その場に立ちすくんでいた。
右手を離れたカードは砕けて消え、"怪物"の爪がその身を切り割こうとする。
「緑ちゃん!」
慌てて"怪物"と緑の間に壁を作る。その隙に緑を連れてその場を離れた。
「緑ちゃん、どうしたの?」
「その力をもって戦えますか?」
本館の陰に隠れ、私は緑に尋ねた。
しかし、緑は私の質問には答えず、逆に質問で返した。
「戦うって、どういうこと?」
「彼らの苦しみを排除しなければなりません」
「そのために戦わなきゃいけないってことか。武器でもあればいいけど」
"怪物"と戦おうにも、素手ではどうにもならない。
「シキサイで作れませんか?」
周囲を探す私に緑がかけた一言は目からうろこだった。
壁が作れるのなら武器だって作れるかもしれない。私は試してみることにした。
「これでどう?」
ナイフというよりはただの三角だが、武器にはできそうだ。
しかし、それよりも浮いているのが問題だ。
「どうやって戦おう……」
手に持てないので想像していた武器としては使えない。
しかし、色々と試しているうちに動かせることがわかった。
「そうだ、そうだよ!」
思いついたアイデアを試すべく、私は"怪物"の元へ戻った。
作り直した三角もといシキサイの矢の先端を"怪物"に向け、狙いを定める。
「行けー!」
私が放ったシキサイの矢は"怪物"に刺さり、消えた。
その場に倒れた女子生徒の様子を見る。特に怪我はしていないようだった。
「これで、いいのかな?」
「以前にも彼女は助けを求めていました」
食堂へ移動し、落ち着いたところで緑が話し始めた。
「当時は今のような状況ではありませんでしたが、それぞれの理由で助けを求める人はいました」
白紙のカードの噂は、緑が人知れずそれを救ってきた証なのだろう。
「このカードはお守りです。彼女を守ってくれるはずでした」
「持ってなかったとか?」
「いえ、近くに残骸がありました。わたくしの力が足りなかったのでしょう」
私は、それで緑は動揺していたのか、と納得した。
新しい力を手に入れたが、相手も対策を取らないとは限らない。
対応できるうちに早く真犯人を見つけ出さなければ。私は心の中でそう誓った。