#27 魅了
午後からのステージには目当てのものがある。
私の友人が出演するのだ。
お昼を食べてステージ前に移動すると、観客が集まっていた。
私は人だかりから一歩引いた位置で待機することにした。
ループラインガールズ。音鳴市を拠点に活動しているアイドルグループ。
私の友人、寺田かもみはそのループラインガールズに所属している。
ステージが始まると一気に周囲の空気が変わった。
賑やかだった会場が静まり返り、人々は一斉にステージの方を向く。
正直、曲はありふれたものだと思う。
歌や踊りも、特別な才能があるわけではないらしい。
それでもなぜか観客を惹きつけては離さない、不思議な力がある。
それはきっと――
「いつ見てもおぞましい光景ですね」
誰もが私語を慎む状況で、誰かがつぶやくのを聞いた。
声が聞こえた方を見ると、そこには緑がいた。
「……緑ちゃん?」
「やはり、自覚した者には効果が薄いようですね」
「……これは失礼しました。あなたも気づかれたようですね」
「詳細は後日改めてお話させていただきます。それまでは、どうかご内密に」
話すだけ話すと、満足したのか、緑は去っていった。
疑問を残したまま。
まあいい。今は目の前で繰り広げられている友人の晴れ舞台を目に焼き付けよう。
さて、ステージが終わり、魅了されていた観客たちはそれぞれの目的へと戻っていった。
私の目的はこれで終わったので帰ることにする。
その前にせっかくなのでかもみと話したいが、恐らく片付けなどがあるのでしばらく出てこないだろう。
どうしようかと迷って、もうしばらく会場を見て回ることにした。
歩き回っているとかもみがいた。
「見たよ!合唱部のステージ」
「私もかもみらのステージ見たよ。相変わらず人気だね」
「……うん、そうみたい」
そう話すかもみの顔はどこか暗かった。
「――なんで?」
二人で話していると、どこからともなく叫び声が聞こえてきた。
どうやら揉めているらしい。
「明日花ちゃん……」
かもみはその声の主に心当たりがあるようだ。
近づいてみると、ループラインガールズの天王寺明日花と理数科の希望が揉めていた。
「また一緒に歌おうよ」
「そんなことをした記憶はない」
「どうして?私たち、一緒に」
「人違いじゃないか」
「でも!」
なかなか引き下がらない明日花に希望は困っているようだ。
「明日花ちゃん」
「……かもみ」
興奮している明日花をなだめようと、かもみが声をかけた。
「今は落ち着いて、また後でどうするか考えよう」
「でも……」
「明日花ちゃん」
「……そうだね。そうする」
かもみは少し落ち着いた明日花と共に去っていった。
「悪かったな」
「大変だね」
「いや、自分にも非はあるんだ。だが、それを言ったところでな……」
これ以上話すこともないので私は希望と別れて帰ることにした。




