#26 初演
音鳴文化祭当日。私たちは早めに会場を訪れていた。
リハーサルまで時間があるので、他のステージや展示などを見ることにした。
「楽しんでる?」
ステージを見ていると、突然背後から声をかけられた。
「あ!……ええと、誰だっけ」
「おや、十河さんではありませんか。ご無沙汰しております」
「わたし十河美幸。ほら、そこの愛佳ちゃんのことでお願いした――」
「ああ!あのときの。お久しぶりです」
声をかけてきたのは夏に出会った美幸だった。
今日は一人らしい。
「仲良しなんだね」
「今日は合唱部で出るんだ」
「話には聞いてるよ。元気そうでなにより」
「……十河は何してるんだ」
「近所なんだから見に来ちゃダメ?まあ、スタッフなんだけど」
美幸はどこか自慢気に上に羽織っているスタッフジャンパーを見せびらかした。
「じゃ、楽しんでね」
美幸はそう言い残して仕事に戻っていった。
「いよいよ本番だね」
リハーサルも終わり、本番が迫ってきた。
愛佳にとっては初めての舞台なので少し気になる。
「緊張しますか」
「しない。そもそもステージには慣れてるし」
「自信があるのはいいことです」
そうこうしている内に私たちのグループが呼び出された。
「そろそろ時間みたい。じゃ、行こっか」
舞台横で自分たちの出番を待つ。
なんだかんだこの時間が一番緊張すると思う。現に今、心臓がドキドキしている。
『次は、虹見高等学校合唱部の皆さんです』
名前を呼ばれ、舞台に出ていく。
キーボードの準備が必要だが、全員でかかるとごちゃごちゃするので、私は部長として話をしながら時間を稼ぐ。
合図を確認し、私は話を切り上げて歌う体勢をとった。
大きな問題はなく、私たちのステージは終わった。
後片付けが終われば、今日のところは現地解散となった。
「帰る?」
「まだ見たいものがあるから残るよ」
「知り合いも来ているそうなので、そちらへ行きます」
「そうか。私ももうしばらくいようかな」
解散とは言ったが、誰も帰らないらしい。出くわすこともあるかもしれないな。




