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#22 軽音

 シフトが終わり、休憩していると、外から騒々しい音楽が聞こえてきた。軽音楽部が演奏しているらしい。


 そこで、以前、緑がバンドをすると言っていたことを思い出した。

 先日尋ねたところ、今日の軽音楽部のステージを借りると言っていた。


 せっかくの面白いものが見れるチャンスだ。見に行かないわけにもいかない。

 私は急いで現場へと向かった。




 見に来ていることがバレると面倒なので、こっそり端の方から見ることにした。

 タイムスケジュールはわからないが、まあそのうち出てくるだろう。

 既に終わっていたら知らない。


 そわそわしながら出番を待っていると、緑の後ろ姿が見えた。

 部員ではないが、一応見ているらしい。


 数組が終わったところで動き出した。ようやく出番が来たらしい。


 「理数科ファイブ」なんて雑な名前は、一体誰が考えたのだろうか。

 メンバーは緑の他に、彼女の友人である紫、瑠海(ルカ)明里(アカリ)に加え、私の知らない女子生徒がいた。


 演奏は別に上手くはないと思う。何というか遠目からでも必死さが伝わってくる。

 そら、部員でないなら経験も(私が知らないだけかもしれないが)浅いのだろうし、仕方のないことだとは思う。

 けれども何か伝えたいことがあるのは部外者である私にもわかった。


 演奏が終わって、撤収するのかと思った矢先、ボーカルの瑠海が叫んだ。


「島村さん!」


 瑠海は静まり返った広場を見回し、少し待って続けた。


「なんで他の部員と話さないんだ!皆心配して、そのせいでうちらまで――」

「――島村さん、聞いてください。貴方を想う人の声を。貴方の心の声に耳を傾けてください」


 瑠海が文句を言おうとしたのを、緑がマイクを奪って制した。

 続けて語りかける声は本人に届いてはいるようだった。


「どうしてお話しないんですか?」


 緑の言葉を背に、一人の男子生徒がその場を去ろうとしていた。

 私はその生徒が件の島村という人物であると考え、引き留めた。


「話したところでどうにもならない」

「皆さん心配してます。事情だけでも――」

「放っといてくれ!」


 当然と言えば当然だが、機嫌を損ねてしまった。

 どうしようかと考えあぐねていると、誰かが発言した。


「放っとけるか!」

「そうですよ!まだまだ教えてもらいたいこともあるんですからね!」

「辞めるにしても一言くらいくれ」


 部員たちが口々に言う。


「本当は辞めたくないんでしょう?」


 困った様子の島村に言葉をかける。


「……そうだな」


 そう言うと、島村は他の部員の元へ向かっていった。


 解決に一歩近づいたのを見届け、一旦教室に戻ろうとしたとき、誰かに話しかけられた。


「すみません。ちょっといいですか」


 声の主は愛佳だった。


「実は、合唱部に入りたくて……。もし、お二人が望まないのならやめておこうと思うのですが」

「入りたいのなら入ればいいと、わたくしは思います」


 いつの間にか側にいた緑が返事する。


「私が拒否しても気持ちは変わらないでしょ。……別にいいよ」


 正直複雑な気持ちではあるが、私に拒否する権利はないと思う。

 あの件だって私たちは首を突っ込んだだけの部外者だったはずだし。


 それはさておき、こんなタイミングで仲間が増えることになるとは。

 部員が二人に減ることを不安に思っていたが、少し楽しみになってきた。




 そんなこんなで時間になったので、私は模擬店の二回目のシフトに向かった。

 時間も時間なので、大してすることもないが、最後に後片付けが待っている。

 それも終わってしまえば、文化祭は跡形もなくなってしまった。


 こうして文化祭は幕を閉じた。明日は振り替えで休みだが、打ち上げがある。

 今日のところはゆっくりして、体を休ませることにした。

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