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#19 初日

 教室には誰もいなかった。

 薄暗い室内を進み、自分の席へ向かう。


 私の机にはクラスTシャツと友人が残した書き置きがあった。


『先に行ってるよ!体育館にいてる』


 そういえば数日前に聞いていた。部活の先輩のクラスが一番手らしい。

 私は制服の上をTシャツに着替え、体育館に行くことにした。


 体育館ではまだ劇をしているようだった。私はそっと、音を立てないように気を付けながら中へ入った。

 途中からだったので全貌はわからなかったが、笑えるという意味で面白いと感じた。


 劇が終わり、体育館を出ていく後ろ姿の中に友人たちを見つけたので追いかけた。


「おはよう」

「あ、亜久里!おはよう」


 裏口付近で出待ちしている三人を見つけ、声をかけた。


「舞台、途中からだったからよくわからなかったんだけど、どうやった?」

「面白かったよ。人質たちと犯人の攻防」

「正直意味はわからんよな」

「まあ『コント「立てこもり」』ってタイトル通りではあったかな」


 パンフレットを読んでいなかったので演目までは知らなかった。

 面白いと銘打って実際に面白いのはすごいと思う。お笑いに詳しい人が書いたのだろうか。


「あ、先輩」


 そう呟いて一人の女子生徒の元へ駆け寄る水魚。この人が水魚が言っていた先輩なのだろう。なぜか卓球のラケットを持っている。水魚は卓球部なのでおそらくこの先輩も卓球部なのだろうが、不思議だ。


「なんでラケット持ってはるんやろ」

「劇で使ってたよ」

「そこは見てないわ」


 隣にいた樹によると、劇で使っていたらしい。

 よく見ると他にも部活で使うような道具を持っている生徒がいる。

 思い返してみると、劇中でも持ち物に絡めたシーンがあった。


「じゃあ、そろそろ行くわ」

「見に来てよ」


 感心していると、樹と舞音が去っていった。

 二人のクラスは午前に劇があるらしい。その準備のためだろう。


 さて、パンフレットによると、私の先輩は二人のクラスのひとつ前のクラスらしい。

 私のクラスも今日だが、集合時間まではまだ時間がある。

 水魚も模擬店のシフトがあるとのことで、私は開演まで適当に見て回ることにした。


 とりあえず、文化部の展示を見に会場へ行く。

 ここで展示している知り合いは創作部と掛け持ちしているシナモン先輩くらいしかいないので、一回りして見終えた。開演までまだ時間はあるが、他の展示を見て戻ってくるには時間が足りなさそうだったので、私はもう体育館に入っておくことにした。

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