#17 前日
文化祭前日。今日は一日準備の日だ。
私たちは大道具や小道具、衣装などの最終確認を行っていた。
リハーサルまでまだ時間はあるが、教室で歌の練習をするわけにもいかないため、出演者である私は暇を持て余していた。
「三枝ちゃん、ちょっと確認していい?」
台本を読んでいると主人公役の和泉聖歌が声をかけてきた。
掛け合いと移動の確認をしたいらしい。
彼女は声楽をやっていてとても歌が上手い。それを知っていてミュージカルを案に出したのだろう。
傍迷惑な話だろうに、彼女が楽しそうにするものだから、脇役の私には何も言えなくなってしまった。
そうこうしている内にリハーサルの時間が近づいてきたので、私たちは移動することにした。
体育館に着くと、ひとつ前のクラスのリハーサルが終わるところだった。
照明や音響、緞帳などの担当がそれぞれの場所へ確認に行き、舞台に残った私たちは監督の指示でリハーサルを進めていく。
通しでできる程の時間はないので、重要なパートを抜き出してできるだけ無駄のないようにする。
例えば歌、これは全曲行い、一応歌う全員が試しに歌ってみた。
大道具の移動やナレーション、場面転換など、やることは多い。
最後に少し時間が残ったが、どうするか相談している内にリハーサルは終わった。
リハーサルが終わり、私は一旦教室に戻ることにした。
リハーサルの反省を話し、模擬店の確認が始まったところで私は無理矢理教室を抜け出した。
合唱部は開会式で歌うことになっている。
曲目は毎回テーマソングと最近の流行歌、そして文化祭を最後に引退する三年生の歌の三曲に決まっているが、今年の三年生は三人しかいないため、その枠を少し前の名曲に変更した。音楽室にある楽譜から選んだものだ。
やろうと思えば三パート揃っているので三年生だけで歌えないこともないだろうが、それはやめたらしい。
ちなみにピアノは顧問の先生だ。
展示の準備をする文化部とすれ違いながら体育館へと向かう。
大荷物の彼らとは反対に私たちは楽譜片手で身軽だ。
当日は別の入り口から入場するので、そこはリハーサルできないのが難点だが、一度経験しているので不安はない。
クラスの劇同様、通しでやる時間はないので端折ってリハーサルとした。
本番では楽譜はないが、どこからやるかは流石に見ないとわからないので持ち込んだのだ。
そうして前日の準備を終わらせた私たちは音楽室を後にした。
こうして五人で駅に向かうのも今日が最後だと思うと寂しさがやってくる。
部活動がなければ会うこともないだろう。
何はともあれ明日が楽しみだ。




