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リナの冒険ノート  作者: リナ
中学3年生
218/221

リナ、最後の登校日

20xx年3月14日(水曜日) 中学3年生


**朝**


目が覚めても、私はベッドから出られなかった。


明日は卒業式。


制服を着るのも、この部屋で目覚めるのも、あと一日。


「終わるんだ」


声に出すと、現実味が増した。


階段を降りると、お母さんが「今日で最後の登校ね」と言った。


「うん」


言葉が続かない。


朝食を食べながら、太一が「お姉ちゃん、卒業したらいなくなるの?」と聞いてきた。


「いなくなりはしないよ。高校に行くだけ」


でも、何かは確実に終わる。私にもそれが分かる。


「いってきます」


いつもの言葉。でも、今日が最後。


玄関を出る前、私は振り返った。見慣れた廊下、階段、リビング。


全部、当たり前だった。でも、当たり前はいつか終わる。


**午前**


私は通学路を歩いた。ゆっくりと。


この道も、明日からは「思い出の道」になる。


校門をくぐる。いつもの景色。でも、今日は違って見えた。


昇降口で、美香ちゃんと会った。


「おはよう」


「おはよう」


二人とも、いつもより静かだった。


教室に入ると、みんながいた。3年間、毎日見てきた顔。


黒板には「最後の一日を大切に」と誰かが書いていた。


朝のホームルーム。山田先生が「今日は特別な日だ」と言った。


「明日、お前たちは卒業する。でも今日は、まだ中学生だ。最後まで、この時間を大切にしろ」


先生の目が赤い。泣いているのかもしれない。


1時間目、授業はなかった。代わりに、クラス全員で思い出を語り合う時間。


「1年の時、文化祭で迷子になったよね」


「2年の修学旅行、夜中まで話したよね」


笑い声。でも、その奥に涙がある。


拓也くんが「リナの脚本、良かったな」と言った。


バレンタインから一ヶ月。まだ少し気まずい。でも、彼は優しい。


「ありがとう」


私は素直に言えた。


**昼**


最後の給食。


メニューは、カレーライス。シンプルだけど、美味しい。


「この味、忘れないな」


健太くんが言った。


「うん。給食、もう食べられないんだね」


当たり前だったものが、特別になる。


食べ終わって、私は美香ちゃんと屋上に行った。


「ここ、よく来たね」


「うん。告白した日も、ここだった」


美香ちゃんは「あの日、リナすごく勇気あったよ」と言った。


「でも、振られた」


「それでも、伝えられたこと。それが大事なんだよ」


風が吹いた。春の風。冷たくない。


「ねえ、美香ちゃん。高校離れても、友達でいてくれる?」


「当たり前じゃん。一生の友達だよ」


涙が出そうになった。


「ありがとう」


「こっちこそ。リナと友達になれて、本当に良かった」


私たちは抱き合った。


**午後**


午後は大掃除。3年間使った教室を、綺麗にする。


窓を拭きながら、私はふと1年生の時を思い出した。


緊張していた。友達ができるか不安だった。


でも今、たくさんの友達がいる。


私は黒板を拭いた。チョークの粉が舞う。


この黒板に、何度「田中里奈」と名前を書いただろう。


掃除が終わって、私は教室を見渡した。


机も椅子も、いつも通り。でも、明日からは後輩たちのもの。


最後のホームルーム。


山田先生が一人一人に、メッセージを書いた色紙を渡した。


私の番が来た。


「田中。お前は強い子だ。でも、一人で抱え込むな。頼ることも強さだ」


先生の言葉が、私の胸に染みた。


「ありがとうございました」


私は頭を下げた。涙をこらえて。


「高校でも、頑張れ」


「はい」


色紙を受け取った。重かった。


ホームルームが終わって、みんなで円になった。


「せーので、ありがとうって言おう」


誰かが提案した。


「せーの」


「ありがとう!」


声が重なった。そして、泣き声も。


**夕方**


帰りのホームルームが終わった。でも、誰も帰ろうとしなかった。


教室に残って、ただ話していた。他愛もない話。でも、それが宝物だった。


「そろそろ帰らないと」


拓也くんが言った。


「そうだね」


みんな、ゆっくりと荷物をまとめた。


教室を出る前、私はもう一度振り返った。


「さよなら」


心の中で言った。


校門を出た。みんなで、少しだけ歩いた。


「じゃあ、また明日」


「うん、明日」


一人ずつ、別れていく。


最後、美香ちゃんと二人になった。


「明日、泣かないようにしよう」


美香ちゃんが言った。


「無理だよ、絶対泣く」


二人で笑った。


「じゃあ、明日ね」


「うん、また明日」


私は家への道を一人で歩いた。


振り返ると、学校が見えた。


明日が来るのが怖い。でも、楽しみでもある。


矛盾した気持ち。でも、それでいい。


**夜**


家に帰ると、制服がアイロンがけされて置いてあった。


「明日、綺麗な制服で卒業しなさい」


お母さんの字でメモがあった。


夕食の時、家族みんなが「明日頑張ってね」と言った。


「うん」


食後、お父さんが「リナ、ちょっといいか」と声をかけた。


二人でリビングに座った。


「明日で中学生も終わりだな」


「うん」


「この3年間、色々あったな」


「うん。本当に」


お父さんは、昔のアルバムを取り出した。


「これ、リナが入学式の日の写真」


見ると、大きめの制服を着た私がいた。初々しい顔。


「こんなに小さかったんだ」


「ああ。あっという間だった」


お父さんの目が潤んでいた。


「お父さん...」


「リナ。お前は本当によく頑張った。誇りに思う」


涙が溢れた。


「お父さん、ありがとう」


「こちらこそ。お前の父親でいられて、幸せだ」


私たちは二人で泣いた。


部屋に戻って、私は制服を見た。


明日、最後にこれを着る。


机に向かった。


3年間の思い出が、走馬灯のように蘇る。


入学式。初めての友達。部活動。文化祭。修学旅行。受験。失恋。


すべてが、今の私を作っている。


窓の外を見ると、星が輝いていた。


「明日、いい日になりますように」


私は祈った。


ベッドに入った。でも、眠れない。


携帯を見ると、クラスのグループチャットが盛り上がっていた。


「明日、泣かないようにしよう」


「無理無理」


「絶対泣く」


みんな同じ気持ちなんだ。


「3年2組、最高だったね」


私もメッセージを送った。


すぐにたくさんの返信が来た。


「最高!」


「ずっと友達だよ」


「明日、笑顔で会おう」


画面を見つめながら、涙が溢れた。


でも、幸せな涙だった。


「おやすみ、みんな」


携帯を置いた。


明日が来る。


最後の日が。



**感想文**


**20xx年3月14日(水曜日) 中学3年生 田中里奈**


明日、私は卒業する。


今日が最後の登校日だった。


朝から、すべてが「最後」だった。


最後の通学路。最後の教室。最後の給食。最後のホームルーム。


当たり前だったことが、すべて特別になった。


山田先生は言った。「頼ることも強さだ」と。


この3年間、私は学んだ。一人で抱え込まないこと。弱さを見せること。それが本当の強さだと。


模試でE判定を取った日、私は家族に泣いた。バレンタインで振られた日、美香ちゃんに泣いた。


その度に、私は支えられた。


だから、今がある。


教室で、みんなで「ありがとう」と言った。


ありがとう。その言葉では足りないくらい、私は感謝している。


お父さんが、入学式の写真を見せてくれた。


小さかった私。何も知らなかった私。


今、私はあの頃より少しだけ大きくなった。心も、体も。


でも、まだまだ小さい。知らないことだらけ。


高校では、もっと学ぼう。もっと成長しよう。


明日で、中学生が終わる。


嬉しいような、寂しいような。


でも、これは終わりじゃない。新しい始まり。


お母さんが言っていた。「終わりは、次の始まり」と。


そうだ。明日からが、本当のスタート。


3年間の思い出を胸に、私は前を向こう。


みんなと過ごした日々を忘れない。


笑ったこと、泣いたこと、怒ったこと、すべてが宝物。


明日、私は泣くと思う。たくさん泣くと思う。


でも、最後は笑おう。


どんな時でも笑顔で。それが、私のモットー。


ありがとう、中学校。


ありがとう、3年2組。


ありがとう、先生。


ありがとう、家族。


そして、ありがとう、今まで頑張ってきた私。


明日、私は最高の笑顔で卒業しよう。


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