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008 配下

「魔王デルス。貴方を我が主とし、森の管理者(ドライアド)の名のもとに忠義を誓います」


 森の名、緑色の長い髪のお姉さんが、俺に片膝を付いていた。


 水の管理者(ウィンディーネ)に続き、開拓で面倒にならないように説得(・・)したのだ。


 凄い綺麗な顔立ちで、とても高貴なオーラが漂っている。


 だが口元には、トマトケチャップがいっぱいついていた。

 ウィンディーネは塩だが、彼女はディップソース派だ。


 ちなみにこれも原作で設定されていた。作るのはたいへんだったが、ビブリアが一晩でやってくれた。


「管理自体はドラちゃんに任せたいんだ。開拓の許可とお手伝いをお願いしたくてね」

「さようでございますか。でしたら、私の力が及ぶ森の微精霊に伝えておきます。魔物はその限りではありませんが、大丈夫ですか?」

「そこは俺が何とかするから問題ないよ。結界とかのこともあるだろうから伝えておきたくてね」

「畏まりました。我が主の為ならこの力、いくらでも使わせていただきます」


 ダメだ。めちゃくちゃ真面目な話をしているのに、口元のケチャップが気になって仕方がない。

 今度からナプキンを持ってこよう。いやそうか、それも開発しなきゃ駄目か。


 色々やることが多すぎるな……。


 だがこれで水と森は何とかなりそうだ。

 土と風はまだ姿を現さないが、そもそもいない可能性もある。


 邪魔をしてこなければ問題ないし、蹂躙したいわけでもないから放っておけばいいだろう。


 侵入者(エターナルライト)を追い返してから人間たちも静かだし、何もかもがいい感じだ。


 このまま問題もなく魔王国が設立できれば、俺の将来は安泰だ!


 そのとき、ビブリアから念話が飛んでくる。

 アリエルの支援能力の一つだ。


『魔王様、問題が発生しました。こちらからお伺いすることもできますが、どうされますでしょうか?』

『はい、戻ります』


 まあそううまくいかないよね。

 しかしいつものビブリアの声よりも緊張しているみたいだった。

 それほどの出来事なのだろう。


「それじゃあ追って連絡するね」

「はい。あ、それと……その……」


 俺が行こうとすると、もじもじと手を動かしはじめる。

 ああ、そうか。フライドポテトか。


「大丈夫。また持ってこさせるから」

「ありがとうございます!」


 後、ナプキンもね。


    ◇


「それで、君は(・・)?」

「魔王の君、私は西の谷に住む、ハーピー族の代表、シルティアにございます」


 城に戻ると、客人が来ているとビブリアに言われた。

 許可した後、入ってきたのは、驚いた事に背中に天使の羽根を持つハーピーたちだった。

 シルティアを合わせて4人だ。

 

 異世界では両手自体が羽根だったりもするが、ベクトル・ファンタジーでは見た目は人間とそう変わらない。

 女性のみの個体種で、知能が高く、高貴な魔物でもある。

 俺がこの魔王城を領地拡大するにあたって、最も危険視(・・・)していた存在だ。


 なぜなら彼女たちは高い魔力を保有し、更に空を飛べる。

 飛行魔法は魔力をかなりつかう。

 だがハーピーたちは歩くように空が飛べる。


 それはこのベクトル・ファンタジーにおいて、かなりの脅威だ。


「楽にしろ。それで要件を話せ」

「恐れながら申し上げます。今私たちが住む谷を助けてもらえないでしょうか。突然現れた竜に困っています。戦っても、まったく歯が立ちませんでした」

「竜だと?」


 そのとき、ビブリアが俺に声をかけてきた。


「発言よろしいでしょうか、魔王様」

「ああ」

「おそらくですが領地を広げたことで弱肉強食が活発化したかと思われます。魔物同士で争うことは稀ですが、特殊個体(ユニークモンスター)が出現したと考えるのが妥当かと」


 西の森、そこにはハーピー族が住む谷がある。


 魔物の世界にもバランスがあり、何かが欠けると不安定になる。

 まあ、ビブリアの言葉からすると俺のせいなんだろうが。


「なるほど。でも何が問題なんだ? 倒せなくとも逃げればいいじゃないか」

「……もちろんそれは可能です。しかしながら、私たちの故郷なのです」


 なるほど。主張はわからなくもない。

 突然よくわからない奴に追い出されて、はいそうですかと納得はできないだろう。

 しかしハーピーは誇り高き種族だ。

 なのに俺に頭を下げるとは、よほどの竜なのだろう。


 だがこのお願いを聞けば、俺にとって利が大きい。

 しかし俺はいずれ彼女たちの土地をも領地にする予定だった。


 まずは相手の出方を見るか。


「見返りはなんだ? 俺は領地を広げる予定だ。お前たちの谷も視野に入っている。お前たちなら、それもわかっているだろう」

「理解しております。もしお願いを聞き入れてくだされば、我らハーピー族は魔王様に生涯の忠誠を誓います。しかしながら、最大限谷を残して頂けると……」


 つまり完全に破壊しないでほしいということか。


 その言葉、その物言いに、俺は笑みを浮かべた。


「――いいだろう。全てが終わり次第、お前たちには空の護衛と監視を頼もう。ただし、有事の際にはその力を最大限使用してもらう。代わりにできるだけ里を残すことは保証する。それに監視は交代制でいい。数10人ほどでローテーションを組み、里と往復するがいい」


 俺の発言に、シルティアは目を見開いて驚いていた。

 これほどの好条件はないだろう。俺も、むやみやたらに奪うつもりはない。

 まあ、有事の際には頑張ってもらうが。


「不服か?」

「とんでもございません! お願いしたい所存です!」

「ああ、なら後は任せてくれ」

「魔王様、でしたらこのビブリア、そしてアリエル、ペールを――」

「いや、俺が行く。一度、竜と戦ってみたかったんだ」

「……畏まりました」


 

 異種間族の争いは禁じているが、今回ばかりは特別だ。


 食事前の腹ごしらえとするか。


 だが竜は最強種だ。今までで一番の戦闘になるだろう。


 そして俺はふたたびシルティアたちに視線を向けた。

 


 乳白色の肌、スレンダーな体形、純白の羽。



 ――天使(ハーピー)の里、楽しみッッ!!!

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