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026 お買い物

「はい。私たちはバウリアにたかるハエみたいなものでございます」

「申し訳ございません。どうぞ、お好きに街をご見学なさいませ」

「オデル一家には気を付けてください。僕たちのような雑魚と違って危険ですので」


 街の門前、まだ足も踏み入れていないのに、屈強な男たちが三人とも正座している。

 結局、ベルディが数秒で足の骨を折った。


 もちろんライフが回復したので、今は(・・)は問題なし。

 

 このコンボ、凶悪だな。


 というか、俺は知見を広めて観光だとか産業的なものを見学する予定だった。

 こんな凶悪な奴らがいる街なんて求めてない。


「さて、行きましょうか! デル様!」

「お腹すいた」


 だが二人的には最高の街らしく、嬉しそうに入っていく。

 うーん、人選間違えたかな?


 ちなみに名前は一応省略してもらっていた。


 地面は少しだけ舗装された土だ。煉瓦じゃないのでそこまで綺麗とはいいがたいが、人は賑わっている。

 といっても、そのほとんどが悪そうな男だが。


「お、おい目を合わせんなよ」

「今のやばかったな」

「今日はおとなしくしとこうぜ」


 だがライフとベルディの戦闘を見ていたのだろう。

 こういうときの噂はすぐに広がる。


 ま、そのほうがいいか。


「あ、雑貨屋さんだ」

 

 そのとき、古物商を見つけた。

 こういうのは好きだ。見たこともないアクセサリーだったり、民族的なものが置いていたりする。


 何かお土産でも買って帰ろうか。


「いらっしゃい。良い物(・・・)あるよ」


 中に入ると、なんだか変な匂いがした。

 どうやらタバコのようなものを吸っている。


 接客態度は×。


 そして肝心の物だが、血だらけの剣や杖が置いてある。


「ベルディちゃん、これなんかどう? いいナイフかも」

「切れ味、良さそう」

 

 六封凶といると、俺がツッコミ担当にならざるを得ない。


 確かに切れ味が良いから血がついているのだろうが、着眼点はそこじゃない。


「違法なものは買わないでおこうね」

「はい……」

「悲しい」


 だが俺のツッコミが耳に入ったらしく、物静かに座っていた男が、「おい」と声をかけてまた屈強な男たちが現れる。


「なんだてめえ、ケチつけんのか?」

「やめてください。もうやめてください」

「やめねえよお、有り金全部おいていけ」


 面倒くさいという意味なのだが、言葉ってのは難しい。


 しかし部下に任せっきりもあれなので、俺は振りかぶられた拳を回避、足に蹴りを入れ、数秒で黙らせた。

 聞けばやはり盗品だったらしく、その場で全て叩き割った。


 悪い事、良くない!


「もう出よう。ライフ、ベルディ。この街は疲れる」

「え、な、なんですか!? 来たばかりじゃないですか!?」

「この街、好き」


 しかし噂は早いもので、隣の食堂にいくと苦笑いで歓迎された。

 突然ウェルカムドリンクが提供されたり、洋服を見に行くとサービスだといってマフラーのようなものをもらった。


「閉まってる店が多いですね」

「悲しい」


 後、慌ただしく扉を閉めているような気もするが、まあいいだろう。


 それからは割と楽しかった。

 まあ、四回ほど絡まれたが、問題なし。


 二度と来ることはないだろうが、思い出としてはありかもしれない。


「じゃあ次へ行こうか」

「はい!」

「楽しかった」


 そしてライフとベルディは、トロピカルドリンクを飲んでいた。

 うん、楽しそう。


 世紀末なバウリア街、案外悪くないな。


    ◇


 それから――


「今の奴らなんだったんだ?」

「わかんねえ。でも「また来ます」っていってたぜ」

「……潮時だな、この街も」


 無秩序な街、バウリア。

 王都ですらも手を焼いていたが、途端に悪い奴らが集まらなくなったという。


 その理由は誰もわからず、トロピカルドリンクだけが有名になったとか。


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