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女を捨てる日まで  作者: らんまる
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いつかおじさんになろう



1、いつかおじさんになろう




2023年5月日曜日。

久々に窓を開けながら、部屋で過ごす。道向かいにある中学校の校庭から野球部が練習をしている。「うぇーい、うぇーい」と、まあまあうるさい。


今はイラストロジック中。90×60サイズの上級編☆7。縦横の数字をヒントにマス目を全部塗りつぶし、浮き上がった絵柄を見て、正解を導き出すのだ。


添付のハガキに答えを書いて、切手を貼り、ポストに入れ、応募係がこのハガキを引いてくれれば、現金2万円。


当たるかわからないけど、というか、ポストインするかもわからないけど、ひたすら数字を見て、マス目を見て、マス目を数えて、マス目を塗る、この繰り返し。


単調だけど、ハマると「うぇーい、うぇーい」も聞こえなくなる。でも人の集中力はしれている。何分間イラストロジックをしていたかはわからないけど、急に疲れ眠たくなる。



ーーーねっむ



イラストロジックを一人用のコタツの上に投げ置き、カーペットの上に寝転がる。足をくの字に曲げ、股を開いた変則大の字。


天井を見上げると、つい、顔に見える模様を思わず探してしまう。今日は見えない。というか見えたら見えたで幽霊と目があったように見えるから正直怖い。見えなくて良かった。


しばらくボーッとする。ふと口元に違和感を感じたので手をやると一本の髪の毛。人の髪の毛が一本でも肌につくと発狂しそうになるけど、自分の髪の毛だから平気。指でつまみ、そのあたりに捨てる。



ーーー髪の毛って、掃除しても掃除してもなくならないなー。ってか、なんで禿げないんだろう?不思議。



いつの間にか、「うぇーい、うぇーい」が止んでいる。休憩か終了か。出来れば静かな日曜を過ごしたいので、このまま終了で……「おーおー、うぇい」



ーーー休憩かよ、残念



「あっしたー」



ーーーうしっ、終わった



思わずガッツポーズ。嬉しくてカーペットの上をゴロゴロと転がる。



ーーーあ



本棚の下。5㌢の隙間に目が行く。蜘蛛の巣ができていた。



ーーーぬなー、またか。ちょっと目を離すとできるんだから……



と思ったが、軽く2週間は掃除機をかけていないことを思い出した。



ーーー髪の毛だけ取って掃除機かけてないんだった。でもまあ、見ようによっては綺麗よねー。



掃除機をかけないとと思ってはいるが、中々起き上がらず蜘蛛の巣を見続ける。



ーーー掃除機……あーめんどくさい、掃除機うるさいし。ってか、なんで見つかるとこに蜘蛛の巣張るかなー




我ながら往生際が悪いと思うが、起き上がらず蜘蛛の巣を見続けながら、ふと、手を口元にやる。



ーーーヒゲ



鼻の下から顎にかけて、産毛とヒゲがちょっと生えている。



ーーーあーめんどくさい、ヒゲー。これって処理しなかったらどこまで生えるかな?蜘蛛の巣とヒゲ……めんどくさーい



カーペットの上をゴロゴロと転がる。再び蜘蛛の巣が目に入ると、ふと……ホントにふと……



ーーーいつかおじさんになろう。そうすれば、ヒゲの処理しなくていいし。そうだ、いつかおじさんになろう



こう思うと、何故か体が軽くなったような気がした。ハンド掃除機に目をやると、「よいしょ」と起き上がり、スイッチを入れ、蜘蛛の巣を取り除いた。蜘蛛はいなかった。

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