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「ひな子!そっち行ったよ!」

すでに格好はどうでもよくなったらしい女子が、髪を振り回しながらひな子に言った。

「おっしゃ!任せて!」

いちごの群がひな子の方に突進して来た。背の低いひな子のスポットがウィークポイントだと思われたらしい。


見よ!私の高速振り回し!!!


ひな子は最後の力を振り絞ると、仁王立ちで虫取り網を振り回した。大方のいちごは急回転して逃げていった。が、ひな子は横目にすり抜けようとするいちご群を捉えた。


「逃すかっ!」

ひな子はジャンプしながらいちごの群れに頭からダイブした。


バシバシバシ


いちごがひな子の顔面に当たった。


痛っ

あ、でも結構味はいいかも。


へらっと笑いながら腕でいちごの残骸を拭いていると、

「ひな子、大丈夫か?」

と頭上から狩野の声がした。

「う、うん…」


…私の名前知ってたんだ。えへへへへ。


狩野が出してくれた手を掴むと、ひな子は立ち上がった。

「あと少し、がんばろうな。」

狩野がひな子の顔のいちごを手で拭きながら、優しく言う。


かああああ


「うん…がんばろう!」


いちごまみれでよかった!顔が赤いのはいちごのせい!


ひな子と狩野はチームに加わると、また走り出す。目の前が開けてきた。もうすぐエンドポイントだ。


「よし!そろそろいいぞ!」

狩野のおじさんが言いながら、足を緩めていく。


あー、やっとゴール…


周りから安堵の声が聞こえる。


「気を抜くなよ。まだこいつら動けるからな。」

「はーい!今逃げられるとか嫌すぎる。」


ぴくっぴくっ


数粒のいちごが隙あらば逃げようとするが、チームの鉄壁の守りがそれを許さない。


「よし、狩るぞ!一粒づつ、丁寧に、手で狩れよ。ヘタも一緒にな。拓海たくみ!カゴ持ってこい。」

「うっす!」

狩野が集合場所にカゴを取りに走った。


ひな子は狩野の背中が見えなくなるまで見つめると、いちごのほうを向いた。


自分で狩るの初めて。去年は全身ぐしゃぐしゃで救護所行きだったからなあ。


ひな子はそっといちごを手に取ると、優しくヘタごとひねっていちご狩りをした。


百円玉ほどの小粒のいちご。実はつやつやの赤、ヘタはピンと張った緑色で、今にもいちごがら剥がれてしまいそうなほど浮いている。活発に動き、熟した野生のいちごの証だ。


初めはきゃきゃといちご狩りをしていたメンバー達だったが、やがて静かになると黙々といちごを狩っていった。


「…俺、野生のいちご狩りがこんなに大変だなんて思わなかった。」

「ほんとに。今までこんなに高く売ってるなんてよっぽど業者が儲けてるんだと思ってたけど。こんなに大変なんだね。」

「狩野の家はすごいな。」


そうでしょ、そうでしょ。狩野くんはかっこいいだけじゃなくてすごいんだから。


ひな子は自分が誉められたように誇らしくなった。


「いやー、ウチは狩好きなだけっていうか。そんなに大したことないよ。」

狩野が照れたように笑った。


「そんなことないよ!狩野くんはすーー」

どさくさに紛れてさりげなく狩野を誉めようとしたひな子だが、狩野の視線を感じて下を向いてしまう。


「…すごいと思う…」

小声でひな子は言った。


やだ。変な子だと思われたかも。どうしよう。顔が上げられない。


「やるじゃん!ひな子!大活躍だったね!」

一番やる気がなかった鈴が、顔はいちごまみれ、きれいにネイルしてある指は泥だらけでニカっとひな子に笑いかけた。

「橋本さんも、初参加なのに最後まですごいよ!私去年は散々だったよ。」

「鈴でいいって。一緒に写真撮ろう。」

ちょっとギャルっぽくて怖いなと思っていたけど、鈴はいい子だったらしい。ひな子はうん!と元気よく言うと、鈴達といちごを持って写真を撮り始めた。


狩野は女子達を少し離れたところから見つめていた。

「狩野!お疲れ!いやー俺らがんばったな。すげーよ。」

狩野の友達が狩野に肩を回しながら言った。

「…ああ。」

「いちごが飛び始めた時はまじびびったなー。」

「…ああ。」

「最後、田辺の顔面ジャンプがまじウケたな。あれ、去年もやったんだって?」

「田辺は誰よりも頑張った。コケにするな。」

そこでやっと男友達の方を見た狩野は、目をギラギラさせながら言った。

「おおっと、ゴメンゴメン、なに?俺なんか言った?」

「いや、とにかく、みんな頑張った。そうだろう?」

「…ああ、そうだな。」

狩野の背中を見送った男友達は、狩野って怒らすとこえーな、普段穏やかなやつって切れると怖いってほんとだな、と呟いた。

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