暗殺者の弟子【リン】【アルカナ】【エリザベス】【M】【暗殺者の少女】
0:ネグロ村の内部
リン:くやしいいい!! 二足歩行の生物にはじめて負けたぁ!
アルカナ:二足歩行二足歩行って、お前が負けたモンスターは一体どいつなんだ?
リン:あれは4歳の頃だった…!
0:回想シーンスタート
幼リン:あ! リザ! 今日も来たのか!
幼エリザベス:リン様! 今日は私の可愛いお友達を連れてきたの!
幼リン:え!? リザが友達を!?
0:現れたのはブサイクで大きな犬
犬:(低いうなる声)うううううう。ワン! ワン! ワン!
幼エリザベス:私の家で飼っているハーシーくんです! かわいい男の子! 立派なものを持っていて……ああん!
犬:ワン! ワン! ワン!
幼リン:うわああああああああ!
幼エリザベス:リン様ああああああああぁぁぁ! 待ってぇぇぇえ!
幼リン:リザ!!! ついてくるな!!
犬:ワン! ワン! ワン!
幼エリザベス:なんでええええええ!!
犬:ワン! ワン! ワオーン!
0:回想シーン終わり
リン:犬に股の下をくぐられた時、生きた心地がしなかったよ……
アルカナ:可愛いじゃないか!
リン:どこが!?
アルカナ:全てだ!
リン:はぁ!?
アルカナ:じゃあ、お前は人生で今日はじめて負けた訳だな
リン:ゔ!
アルカナ:勇者たるもの、負けたままでいいのか
リン:挑んで来るなって言われちゃったし……それにあの瞬間移動はなんなの? 早いんじゃない。本当に1度消えてるんだ
アルカナ:瞬間移動?
リン:見てなかったの?
アルカナ:ああ、暗器が飛んでたからリザの盾の後ろに隠れていた
リン:ちゃんと見とけよ!
アルカナ:悪かった。それの代わりと言ってはなんだが、もう一度再戦の機会をもらえないか、俺から頼んでくる
リン:えー? Mは頑固だから無理だよ、絶対
アルカナ:まあ、期待せずに待っておけ
0:数十分後
アルカナ:ただいま。交渉してきた。Mからの伝言もらってきた。3日後に再戦してもいいらしい
リン:え!? なんで! どう丸め込んだの!?
アルカナ:頑固者同士気が合ってな?
リン:君、頑固な自覚あったのか………
0:回想シーン
0:実際のところ、アルカナの再戦交渉方法は駄々をこねるではなく決闘であった
0:氷漬けにされたMと目の前に立つアルカナ
M:くっ……こんな……回りくどいやり方しなくても……勝てたはずだろう?
アルカナ:お前に怪我されてしまうと、リンがお前に勝っても意味が無いからな。炎と雷は使わない
M:手を抜かれて負けるとは……お前が居れば、俺の力がなくても全て解決するのでは?
アルカナ:そういう事じゃないんだ。能力でお前を選んだんじゃない。アイツの嗅覚みたいなもの。それを信じた
アルカナ:俺も、お前に俺たちの仲間になって欲しいんだ
アルカナ:お前を倒した事、リンには内密で頼む。リンに最強をかけて戦えとか言われて変な絡み方されるのだけは勘弁して欲しい
0:回想シーン終わり
0:Mの家でリン、エリザベス、アルカナ、そしてMとその弟子10名ほどで食卓を囲む
リン:君はお弟子さん沢山居るんだね
M:ああ、全員が孤児で、俺の訓練を受けている。彼らは皆、人を殺す道具だ
リン:そんな風には見えないけど?
0:弟子同士の会話をしたり、美味しそうに食べる者も一部だがいた
M:あれらは暗殺者には向いていないのかもな
リン:訓練された子供たち。将来は冒険者になるかもね
M:そうかもな……
0:気のせいだったか。リンにはMが微笑んだように見えた
0:寝室でアルカナの布団を用意する暗殺者の少女
0:アルカナはその子を見つめている
暗殺者の少女:そんなにジロジロ見つめてどうされたんですか?
アルカナ:いや! 出会った時、足氷漬けにして、悪かった………
暗殺者の少女:その後師匠を同じ目に遭わせたくせに………
アルカナ:本当に申し訳ない!!
0:間
暗殺者の少女:ふふふ、冗談です。怒ってなんかないですよ。アルカナ様
アルカナ:年齢を聞いてもいいか?
暗殺者の少女:私は今年14歳です
アルカナ:そうか………
暗殺者の少女:アルカナ様、紳士であるならそこは、見えなーい! もっと大人っぽく見えるー! ってお世辞でもいうところですよ!
アルカナ:(な……なんだこいつ!? さっきからちょっとおかしいぞ……!?)
アルカナ:なんか、最初にあった時とイメージが全然違うな
暗殺者の少女:師匠の前では猫をかぶってますので
アルカナ:猫?
暗殺者の少女:機械のように感情がない道具。そう私は演じ続けています
アルカナ:どうしてだ?
暗殺者の少女:師匠がそう望んでいるからです
アルカナ:そうは思わないが?
暗殺者の少女:生きるのも哀れなマリオネット。それなら、私を失っても師匠は悼まないでいてくれる。すみません。こんな話をしてしまって
アルカナ:いや、構わないが……
暗殺者の少女:アルカナ様になら、本音で話してもいいかもって
アルカナ:なぜだ?
暗殺者の少女:師匠が怪我をしないように戦ってくれたからです。お礼を言うのも変かもしれないですが、ありがとうございます
アルカナ:そこまで慕ってる事をMは……
暗殺者の少女:知らないでしょう
アルカナ:(本当はこんなにも明るい子なのに………)
アルカナ:なあ、君はどうしてこの村で生活することになったんだ?
暗殺者の少女:私がまだ3歳の時でした。モンスターに村が襲われ、家族が殺されてしまいました。逃げた所を師匠に助けていただきました
アルカナ:そうか
暗殺者の少女:師匠はおっしゃいました。別の村で別の家の子として畑を耕すか、私に着いてきて、国のために人を殺すか
暗殺者の少女:3歳の私にはよくわかりませんでしたが、そんな事はおかまいなしに師匠は訊ねてきました
アルカナ:M……小さい子になんて事を……
暗殺者の少女:幼心に覚えています。私はこの人についていきたいと。心が強く惹かれました
アルカナ:君は後悔しているのか?
暗殺者の少女:していません。師匠の隣に居たいから
アルカナ:君は俺によく似ている
暗殺者の少女:どういう意味ですか?
アルカナ:俺にも師匠が居たんだ
暗殺者の少女:そうなんですか? アルカナ様の師匠というのであれば名高い印術師なのでは? 今でも連絡を取られてるんですか?
アルカナ:死んだよ……俺がこの手で殺した……