王都での衝突【リン】【アルカナ】【エリザベス】
0:王都は人で賑わっていた
リン:わあ! 久しぶりの王都だ!
アルカナ:ゔえ……人に酔った……
リン:大丈夫〜?
アルカナ:大丈夫に見えるか……?
リン:はぐれないように手でも繋ぐ?
アルカナ:馬鹿言え
リン:あはは。さて、じゃあ僕の屋敷に行こう。僕達の仲間を紹介するよ
アルカナ:は?
0:屋敷の広い廊下
0:広くて大きくて豪華な建物にアルカナは驚いていた
アルカナ:ここは……王宮か?
リン:王宮がこんな小さいわけないじゃん!
アルカナ:小さ!? この屋敷、一体俺の年収の何倍で建てられたんだ!
リン:ん? 僕にそんな計算できるわけないじゃないか
アルカナ:そうだな
リン:認めないでよ! ったく……上司への敬意を持ってよ〜。っと。この部屋だよ
0:扉を開くと、中には騎士が居た
エリザベス:リン様、長旅お疲れ様です
リン:これから大冒険が始まるんだ。この程度長旅でもないさ
リン:紹介するよ。アルカナ・ランフレート。リザ、僕たちの3人目の仲間だ
リン:こっちが僕の仲間のエリザベス・スレイブ・アッシュバーン。アッシュバーン男爵家とは古くから懇意にしていて、リザと僕は竹馬の友だ
アルカナ:《スレイブ》?
リン:ああ、彼女は竜殺しを成功している
エリザベス:そうよ。あなたのように誰かの影に隠れてコソコソせずとも、竜を倒せるのよ
アルカナ:はっ! 俺が倒したのは龍だがな? お前とは格が違う
エリザベス:ぐっ、確かにあなたが先の戦いで、不遜なる赤龍を倒す決定打になったのは知っているわ。でもあなたの名にはスレイブの名はない
エリザベス:あなたを一人前の戦士とは認めない
アルカナ:そうやって手柄を逸って、赤龍に単騎突撃した阿呆のせいで、一体何人の仲間が死んだと思っている
アルカナ:お前みたいな勘違い野郎が味方を殺すんだ
エリザベス:言わせておけば……!
リン:二人ともそこまでだよ
リン:僕たちは今日からパーティだ。仲間なんだ。顔合わせだけのつもりだったけど、今日はここでお開きだね
エリザベス:今言った言葉、後悔させてあげる。リン様、お先に失礼します
0:エリザベスは扉を閉めた。扉の向こうから、かすかにグチグチ聞こえてくる
リン:ごめんね。あの子はちょっと負けず嫌いなんだ
アルカナ:負けず嫌い?
リン:僕のこと、アルカナに取られるんじゃないかって心配なんだと思うよ
アルカナ:あいつはお前の事が好きなんだな
リン:そういうのじゃないよ。彼女、あんな性格だから、まともに友達がいなくて、いつも一人だった
リン:でも強さが彼女を認めさせた。国中捜しても同世代で《スレイブ》を持つのはリザ一人
リン:尊敬もされるし、強くある事が、寂しがり屋なリザにはかけがえのない居場所を作ったんだ
アルカナ:そうか……必要とされる喜びは……俺にもある
リン:君たちは、仲良くなると思うよ
アルカナ:仲良く……
リン:仲間なんだからさ
アルカナ:そうだな……
0:翌日
0:グリータス邸
リン:早速僕達にミッションが入った
アルカナ:内容は?
リン:40メートル級の大型竜の討伐だ。作物を荒らしているらしい
アルカナ:翼竜か? 土竜か? 判明している印術の属性は?
リン:翼竜だね。おそらく属性は雷
エリザベス:そんなの知ってどうなるの?
アルカナ:一度、王都の商店で薬品を購入する。購入する薬品や防具の種類が決まる
エリザベス:竜を倒すのに、新しく防具を購入? 笑わせるんじゃないわよ。所詮、後方でしか戦えない貧弱者ね
アルカナ:お前が倒したのはどんな竜だ?
エリザベス:え? 中型の土竜よ
アルカナ:中型? 具体的な大きさは? 属性は?
エリザベス:えっと……
リン:確か5〜6メートル級の土竜だったよ
アルカナ:確実にその大きさは若い竜だな。多分、魔法属性すらないはずだ。そうだろう?
エリザベス:そうよ……物理攻撃のみの戦いだった
アルカナ:竜はモンスターの中で唯一魔法を使う。しかしそれは人間の戦士と同じように、実戦経験と教育によるものだ
リン:へえ
アルカナ:竜は基本群れて生活する。今回のやつもおそらくははぐれもんだ。だがこいつはエリザベスが一人で倒した雛竜じゃない。育って父親に群れを追い出された、発情期ギンギンの若オスだ