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《バトル声劇台本》クロニクル  作者: うかんむり
クロニクル(男1:女1:性別不問1)
1/21

冒険の誘い【リン】【アルカナ】

0:書類が山積みの部屋でアルカナは仕事をしていた

アルカナ:客人? 俺は忙しい。追い返せ

リン:お邪魔するよー!

アルカナ:邪魔するなら帰れ

リン:えー! はるばる王都からこんな田舎まで来たのに!

アルカナ:知らん。俺は忙しい

リン:君が世界最強のルーンマスターのアルカナだね!

リン:資料で見た通りの眉間みけんのシワだね!

アルカナ:帰れ

リン:すぐ終わるから~! 話だけでも! 聞いて? ね?

アルカナ:仕方ない。聞いてやるから、すぐ終われ

リン:じゃあ、改めて………勇者の僕と一緒に、国の平和を守るため、旅をして欲しいんだ!

アルカナ:やらん。帰れ

リン:えー!?

アルカナ:うるさい

リン:勇者の僕と旅が出来るんだよ! こんなチャンスないよ!? 光栄な事だよ!?

アルカナ:お前が勇者? うさんくさい奴についていけるか

リン:この書類を見て!

0:リンはアルカナにビッと紙を見せる

アルカナ:これは……王家の紋章?

リン:そう。僕は先月王都で行われた剣の大会で優勝して、国王から勇者に任命された! リン・ブレイブ・グリータス!

アルカナ:立場がある人間なのは分かった

リン:君がもしついてきてくれるなら、半年契約でこれだけ支払おう!

アルカナ:月500万ゴールド!?

リン:うん!

アルカナ:お前……その華やかな鎧といい、この契約書の金額といい、王家からどれほど支援を受けているんだ

リン:ううん、この甲冑も、契約金も家のお金だよ?

アルカナ:家? お前の家は騎士階級でなく市民階級の金持ちか?

リン:ううん、騎士階級だよ。グリータス家は王族の4つの分家の公爵の一つ。僕の父が現当主なのさ

アルカナ:お前が騎士の大会で優勝したのか?

リン:そうだよ。僕に勝てる男は……いや僕に勝てる軍は王都には存在しない

アルカナ:王国に語り継がれる一騎当千いっきとうせん戦姫せんきの生き写しとでもいうのか……

リン:そうだ! 思い知ったか! リン・ブレイブ・グリータスが命ず。アルカナ・ランフレート。君は僕の仲間になれ

アルカナ:無理だ

リン:なんで!? 絶対仲間になる流れだったじゃん!

アルカナ:お前の決めた流れなんて知らない

リン:じゃあ、僕と決闘しろ!

アルカナ:お前が勝ったら仲間になれと?

リン:察しがいいじゃないか!

アルカナ:嫌だ。お前みたいな奴と戦って怪我をしたくない

リン:はあ!? それでも世界最強と言われるルーンマスターか!

アルカナ:誰がそんな妄言もうげん吹聴ふいちょうしてるんだ……まさか、不遜ふそんなる赤龍せきりゅうを倒せた事を言ってるのなら、

アルカナ:あれは多くの王国騎士が俺が印術いんじゅつを撃つ時間を稼いでくれたお陰だ。それに故郷の危機でなければ、あんな戦いには出ない

リン:聞いていた通りの人物だ

アルカナ:何?

リン:そこだよ。僕が君を欲しがる理由は

アルカナ:どういう意味だ?

リン:故郷を守る意志。仲間への敬意。英雄に相応しい人格だ

アルカナ:くだらない……

リン:ここ最近、モンスターが増えていると思わない?

アルカナ:ああ、近隣でのモンスターの被害額が増えた

リン:その原因を確かめる為に僕と旅をして欲しいんだ

アルカナ:駄目だ

リン:なんで!

アルカナ:俺はこの町の、モンスター被害の災害保険を担当している

リン:サイガイ……ホケン……?

アルカナ:騎士なのに知らないのか? 災害、病気、戦争、モンスターや盗賊の被害を受けた際、死んだり怪我を負った場合に、家族に金が支払われるシステムだ

アルカナ:夫が死亡した場合、その妻が亡くなるまで支払われ、12歳以下の子どもの数で支給額が変わる

リン:そんな制度があったんだ! アルカナ物知りだね!

アルカナ:お前が知らな過ぎるだけだ

リン:ギャフン!

アルカナ:これは国民全員が自分の収入の決まった割合を収めて、その積立金つみたてきんで成り立っている。お前の父の公爵も高い保険金を収めているはずだ

リン:今度聞いてみよう……

アルカナ:俺の立場はアベンド区の保険課の課長であり

アルカナ:ここを離れるわけにはいかない。たとえ国の危機であっても

リン:分かったよ……残念だけど、今日は帰るよ……

アルカナ:賢明な判断だ

0:翌日

リン:邪魔するよー!

アルカナ:は? お前、諦めて帰ったんじゃないのか

リン:これを見てくれたまえ

0:リンは一枚の紙を置いた

アルカナ:これはなんだ?

リン:異動辞令。君は本日付けで、アベンド区・保険課課長から、国王府・勇者部の次長に昇格。もちろん部長は僕だ

リン:君は地方の役人だから、公文書こうぶんしょには従わなきゃいけない

アルカナ:お前……!

リン:国の危機は故郷の危機だろう?

リン:さあ、アルカナ。僕と冒険に出よう! 共に故郷を守るんだ

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