街へ
街が見えてきた。アルバは依然として黙ったままだが、しっかり目的地までは連れてきてくれていたのだろう。
ありがとうな、アルバ。
それはそうと、遠くに見えるのは見るからに頑丈そうな壁に囲まれた街。あの壁は魔物などから街を守っているのだろうか。
そんなに風に考えていた俺に、ようやくアルバが口を開いた。その表情はやはり固いものだ。
そして、その内容は俺を驚愕させるには十分だった。
「うむ、街が見えてきたの。ではわしは一旦帰るとしよう。」
「え!? か、帰る? どこに?」
「天界じゃよ。用事ができたのじゃ。ここまで連れてきてやったのじゃから、後は何とかせい。」
「う、嘘だろ•••」
「本当じゃ。しばらくしたら戻ってきてやるから、少しは自分で頑張るのじゃな。」
「まあ、戻ってきてくれるなら。分かった。後は何とかするよ。」
「うむ。ではな。」
アルバはそう言い終えるとパッと消えた。
「•••まじか。」
ああは言ったものの、1人でやり切れるかと言われたら自信がない。別に人と関わるのが苦手だとかいう訳でもないが、そもそも言葉が通じるか分からない。もしこれで言葉が通じなかったら、街に入ったところでどうにもならないじゃないか。
いやまて、〝能力値表〟だ。
あれには日本語で文字が書かれていた。ならば、この世界の言語は俺にも分かるようになっているのではないか?
そもそも、女神リスタは魔王討伐を頼んできた。ならば、わざわざ現地人と言葉も通じないような状態で送り出すことはしないだろう。
きっと言葉は通じるはずだ。そうに決まっている。俺は天才か?
そう思うと、自然と足取りが軽くなった。
しばらく歩いていると、もうすぐの所まで街の壁が近づいてきた。どうやらしっかりした門があるようで、鎧を纏った門番らしき人影も1つ確認できる。
ここで話が通じて街に入れれば俺の大勝利。
だが、通じずに街に入れなければ、俺はその辺の森で原始人のような生活を送る羽目になるだろう。絶対に御免こうむりたい。
もう門は目と鼻の先の所にある。門番も俺に気づいている様子だ。
俺は意を決して門番に話しかける。
「こ、こんにちは。」
「こんにちは。」
門番が被っているフルヘルメットのせいでその顔は視認できないが、優しい口調の声が返ってきた。
ふふ、大勝利だ。
俺の予想は間違っていなかった。
この世界の言葉は俺にも理解できる。
そうと分かれば、次はどうやって街の中に入るか考えなければならない。もし通行手形がいるなどと言われれば、そこで道は途絶えてしまう。
何かそれっぽい口実を考えなければいけない。
•••が、無理だ。思いつかない。
こういう時は運に任せるのが1番だ。
「街に入りたいんですけど•••」
「了解しました。では、どうぞ。」
門番は優しくそう言うと、門を開けて中に入れてくれた。
•••大丈夫だったな。
どうやら通行手形など必要なかったらしい。
拍子抜けもいいところだ。まったく、焦らせやがって。
まあ、何はともあれ、壁に守られた安全そうな街に入れたのだ。それにここは中々大きい。
ということは、しばらくはこの街で過ごすことができるだろう。
だがここで呑気にしてはいられない。太陽の高さからして、今は大体昼ごろだ。夜までに宿屋でも何でも探さなければならない。
いや、あれは果たして太陽なのか? 何か別の明るい星という可能性も•••。まあ、いっか。
俺は次なる行動を開始した。
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