新たな世界、こんにちは。
力が抜けきったような脱力感は少しあるが、意識がぼんやりと戻ってきた。だが、今までの記憶があるあたり、転生は成功したのだろう。
とりあえず、周りの状況を確認しよう。
「•••すごいな」
一面の緑。いかにも〝草原〟といった景色が広がっていた。優しく吹くかぜが心地良い。
その広大な景色に見惚れていると、後ろから声がした。
「主、転生は成功したようじゃの。」
「誰だ!?」
俺は驚きながら振り返る。するとそこには長い水色の髪の少女が立っていた。先程の女神リスタを幼くしたような、可愛らしい少女だ。頭を撫でたくなるような愛らしさだが、ロリコン認定はされたくないので止めておいた。
「わしはの名はアルバ。リスタの眷属にして主の監視を任された者よ。」
「あなたが•••」
まさか監視役をつけられるとは夢にも思わなかった。何が地上の人間には干渉しないだ。バリバリ干渉してるじゃないか。
とはいえ、つけられてしまったからにはもうどうすることも出来ない。何とかして監視の目を潜り抜ける方法を探すしかない。
「それで、監視って何をするんですか?」
「なに、主が魔王討伐に向けて動くか、この目で確かめるだけのことよ。」
「もしそうしなかったら?」
「その時はわしが導いてやらねばなるまいて。」
アルバは自身の胸に手を当て、えっへん、という態度をとる。うっかり「良い子良い子」と頭を撫でそうになるが、殴られそうなので自制した。
それにしても、随分と見た目とはそぐわない言葉遣いをする少女だ。いや、少女かどうかも怪しい。若作りババアという可能性もある。なにせ相手は神だ。何があってもおかしくはない。
いっそのこと聞いてみるか?
いや、何をされるか分からないし止めておこう。
「•••主、何かよからぬことを考えておったな?」
「いやいや、そんなことないですよ。」
「本当か? まあよい、そういうことにしてやろう。それと、わしに敬語を使う必要はないぞ。主よりもわしの方が若いからの。」
「そ、そうか。」
聞かなくても答えが分かった。どうやらアルバは20歳未満らしい。外見はどう見ても10歳程度なのだが、実際どれくらい若いのかが気になる。
とはいえ、ここで呑気にしてはいられない。速やかに安全に過ごせる所を見つけなければ。
「アルバはこの辺りの地理には詳しいか?」
「うむ、よく知っておる。近くに町があったはずじゃ。」
「おお! じゃあそこまで案内してくれ。」
「うむ。」
この何もない草原にいては何も始まらない。町まで連れて行ってくれるというのは好都合。とりあえず、1日目は安全にやり過ごすことができそうだ。
「では、わしに着いてくるがよい。」