5:それは攻撃力が高かった。
うるうるとした瞳のミア様に見つめられつつ、ヒゲジィこと白いおヒゲの魔術師長に転移で戻してもらうことになった。
明日は仕事だし、既に二十二時過ぎてるし。
「また会いに来てくれる?」
「いや、会いに来るっていうか――――」
「私に会いたくない?」
そもそも、強制異世界召喚してきたんだから、私からは会いに来れない訳で。と言おうとしたけれど、アースアイうるうる攻撃に撃沈してしまった。
「むぐぅ……来ますからぁ」
「んっ」
くあぁぁぁ、頬染めて頷くな! 二八のいい大人が! そもそも、国王が!
ヒゲジィがミア様の変わりように目を丸くしてんじゃん。数時間で何があったんだ⁉ って呟いてるけど、私もソレ知りたいよ!
「じゃあ…………また来週来ますね」
「あぁ、また来週。ハル、愛しているよ」
「ふぉ――――」
…………ぉぉう。
去り際の激甘なセリフと笑顔に悔しいが悶えてしまった。そして、悶えている瞬間に送り届けられた。
ヒゲジィ、絶対わざとだろ!
あ、部屋の冷蔵庫が開きっぱなしだったの忘れてた。
冷蔵庫の中身は……微妙にぬるかったので、野菜類は明日中に使い切ってしまおう。
生肉は今すぐ何か作ろう。濃いめの味で煮込めば何かきっと大丈夫なはずだ。
あと、金貨をまた渡された。ムース代を含めて五〇〇枚も。
いや怖い。何か怖い。日本円にして考えたくない。つか、そんなに大量の金貨とか換金した日には何か警察のお世話になりそうな気がする。
悶々と考えながら鶏大根を作り、明日のお弁当の用意をした。
金貨は来週返そう。商品代だけは貰っとこう。あ…………えぇっと、クリーニング代も、ついでに。
平穏な一週間が過ぎ、ミア様と約束の土曜日。
返す金貨は持った。お土産のお菓子類も持った。
服装はちょっと可愛めに。白いノースリーブブラウスと膝少し上の薄紫色のフレアスカート。
約束の十時に、またもや先週と同じ豪華な場所に召喚された。
「ハルっ!」
力の限りぎゅむむむむむむむっと抱きしめられ、絞め殺されるかと思った。
ミア様の背中をタップしたいが、両手が荷物で塞がれている。
「陛下、ハル殿の顔色が危のうございます」
「なっ⁉ ハル⁉ どうしたんだ!」
犯人はお前だよと言いたいけど、ヒゲジィに怒られそうなのでグッと黙った。
取り敢えず金貨は私の世界では使えないからとか適当に理由をつけて無理やり返して身軽になった。身も心も。
「では、これはハルがこちらで使う用の資産として管理しておけ」
「ハッ」
…………無理やり返した。今のは聞こえなかった。なーんにも聞こえなかった!
「ハル、こちらにおいで」
「ふぁい」
にっこり微笑むミア様と手を重ね、城内を軽く案内してもらいつつ、ミア様の私室に向かった。
今日はミア様の私室で室内デート、明日は国内を案内してくれるらしい。
「「……」」
侍女さんに着替えの荷物を預けて、お菓子が色々と入った箱は二人で食べる分で、他にも魔術師さんたちへのお土産とを用意していたものも預けた。んだけどぉ、なぜかそのお菓子類がミア様の私室のテーブルの上に全て広げられ、ソファにドーンとヒゲジィが渋い顔して座っていた。
「……ハル殿、説明を求めます」
「「…………」」
次話は19時くらいに投稿します。
今日中に完結予定です。