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3:それは万能薬なので。




 ソファに座り国王とおしゃべり。

 国王はなぜか私の横に座っている。向かい側のソファ空いてますよ……とは言えない。いい大人なので、ここはスルーするべきだと判断した。だって、相手は国王だし!


「ほあぁ……敵国による呪い、ですか」

「はい、私が倒れればこの国も終わりますので」


 この国は元々は人が住めないほどの極寒の島だったらしい。

 国王――イェレミアス様のご先祖が膨大な魔力を持っていて、自身の魔力でこの島を人が住めるような気候に保っていたそうだ。

 そして、代々国王として膨大な魔力をこの島の気候維持にあててきたらしい。


「この島、我が国は東大陸と西大陸のちょうど間にあり――――」


 去年、東西大陸の小競り合いから、双方がここを属国にし、海戦の拠点にしようとしていたらしい。

 今年の頭に東大陸の大国の鶴の一声でそれらは解決し各国が協定を結んだが、戦犯国にされてしまった魔術師たちが自らの命と引き換えに、何故か中立の立場を守っていたイェレミアス様に呪いを掛けたのだそうな。


「どうにか耐えていたのですけれど……」


 徐々に魔力と生命力を順に奪う呪いだったらしく、日に日に魔力が枯渇していき、春前に国の気候を保てなくなってしまったらしい。それでも普通の人よりもまだ魔力は残っていたため、生命の危機は遠かった。

 なので、国民には寒さには耐えてもらいつつ、なんとか政務をこなす傍ら、解呪方法を調べていたらしい。


「古の本に、異世界から召喚した『黄色く、とろける口当たりの、甘く儚い万能薬』がいかなる呪いも解くとありました」


 …………甘く儚い⁉ 万能薬ってか、『プリン』ですけどね。

 儚さは……まぁ、何か分かるけども。


 まぁ、それで、魔術師長と波長の合う人間かつ、プリンを持った人間を召喚するという流れになり、昨日見事に私が召喚されたと。

 ………………ちょっと待て。

 『魔術師長と波長の合う人間』⁉

 いやだから、普通の異世界召喚ものってヒーローと何か異様に相性がいいとかそういうのが定番でしょ⁉ それでいくなら、私はヒゲジィとラブロマンスしなきゃなの⁉


「本当に、感謝しきれ……ない」


 脳内で突如勃発したヒゲジィとのラブロマンス問題に頭を抱えていたら、イェレミアス様が声を詰まらせつつお礼を言ってくれた。瞳が徐々に潤みだしている。

 ……あら可愛い。


 右手の指で目頭をグッと押さえている姿や、思ったよりも大きなゴツゴツとした手。妙な無害感や可愛さがあったイェレミアス様だけど、そういうところを見ると、『あぁ、男性なんだなぁ』と思えた。


「いいですよー」


 なんとなく年下っぽいので可愛い弟を持った気分になって、イェレミアス様の頭を撫で撫でしたら、ビックリするほど真っ赤になってしまった。


「っ! あ、あのっ⁉」

「あ、ごめんなさい。何か可愛くて」

「か、可愛いぃ⁉ 私は二八歳の立派な成人の男です!」


 あ、年上でした。私、二三歳です。すみませんでした。

 イェレミアス様、かなり童顔ですね。


「魔力が多いので、老化が進み辛いのが理由かもしれません」

「なにそれ、うらやまっ! あっ!」


 軽く本音をだだ漏れさせていたら、急に思い出した。

 プリンとムース!

 こっちに呼び出されてからずっと握りしめたままだった。流石に今はテーブルの上に置いているけども。

 この部屋も結構寒いし、保冷剤も入っているから平気だろうけど、ぶっちゃけるとお腹が減ったってのと、思い出したからものっそい食べたくなった。


「どうされました?」


 心配そうな顔をしたイェレミアス様に伝え辛い。が、食べたい。とろふわのプリン。冷え冷えの内に食べたい。


「ひぇれみあすさま…………名前言い辛っ!」


 脳内では言えていたのに。口を経由すると途端に言えなくなる謎。


「ミア様でいいです?」

「ミアッ⁉」


 面倒だから勝手にあだ名を付けたら、真っ赤な顔でプルプルされてしまった。ダメだったかなぁと思ったら、結構な勢いと圧で「ぜひ、ミアと呼んで!」とゴリ押された。

 どうやら、ミア様は気に入ったらしい。


「お腹が減りました! ミア様はどっちから食べます?」


 仕方ないから分けてあげようと思い、プリンとムースが入った箱をパカリと開けると、ミア様が驚愕の表情をしていた。

 どう見ても真っ青である。


「っ…………ばん、のう……やく」

「あ、そうだった。プリンは万能薬でしたね…………えー……プリン」


 それでもプリンが食べたいと言ったら、ミア様にドン引きされた。

 

「買い取らせていただきますので、どうか譲って下さい」

「え……プリン」

「お願いいたしますっ」

「うぐっ……」


 瞳うるうる攻撃はズルい。ハムスターみたいな、何か純粋無垢そうな顔はズルい。


「いい……ですけどぉ、コレ、賞味期限は今日までですよ?」

「保存魔法があるので大丈夫です」


 魔法って便利だな。

 わりと渋々感を出してしまいつつ、ミア様にプリンを譲った。




 次話は16時くらいに投稿します。

 今日中に完結予定です。

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