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第7話 突撃! 岐阜市イラスト展2020と未来からの来訪者(前編)

 良く晴れた週末の午後、岐阜公園駐車場にぎやかな話し声が響き渡る。


「マコト、はやく行くよ!」

「のうかちゃん待ってよ。そんな急がなくても大丈夫だよ」


 四人は岐阜市イラスト展の会場へ向かうため、川原町に足を踏み入れた。


「趣のある街並みが良い雰囲気を出していますね」

「聞いていたようにどこかゆっくりとした時間が流れているように感じるな」


 もとことふゆうの二人はこの雰囲気を楽しんでいた。趣のある街並み、行き交う人の笑顔、どこか非日常の空気が漂うこの空間が心地よい。


「冷やしいちごあめにわらび餅、鮎菓子? マコト、これ全部買い占めて!」

「だめだって! どれか一つにしなさい。」

「ぶぅ。じゃあ、冷やしいちごあめ買って!」


 二人が冷やしいちごあめを買うためにお店の中へ入っていった。二人の姿が見えなくなったことを確認したふゆうが話しかける。


()()()()()()()()()という人の気配はありますか?」

「いや、まだみたいだな。微かに()()()()()()がある。今日で間違いないな」

「あの人らしいですね。せめて、もう少し詳しく教えてもらえると助かりますが……」


 二人がため息をついているとカップを両手に持った二人が戻ってくる。


「ん? どうしたの? ため息なんかついて。二人の分買ってきたよ」

「今日から販売開始らしいよ。最近暑かったし、これ食べて一息つこうか」


 どこかほっとする甘さとひんやりとするのど越しがたまらない。この場所のゆったりと流れる雰囲気が一層美味しさを引き立てているような気がする。


「よし、食べ終わったら会場に向かおうか。もうすぐそこだから楽しみだね」

「早くいこうよ! ガチャを当たるまでやらなきゃいけないんだから……」

「はぁ? 誰が当たるまでやるって?」

「手ぶらで帰れっていうの? ()()()()()()()のが面白いんじゃない!」

「どんだけ引くつもりなの? あ、ちょっと待ちなさい!」

「聞こえなーい、聞こえなーい」


 おなじみとなった二人のやり取りに思わず笑みがこぼれる。そして、会場のスギバコに到着する。


「ほんとに一軒家まるごとなんだね」

「すごい、すごいよ! 早く見に行こう!」


 入口で検温と消毒を済ませて中に入るとそこはまさに別世界だ。玄関から続く土間を挟み、程よく日が入るリビングに配置されたイラスト。そして、キッチンには数々のグッズが並ぶ。


「来てくれてありがとう! ゆっくり楽しんでいってね」

「お母様、お久しぶりです。本日は楽しませていただきますね」


 主催者でありふゆうの生みの親の由愛乃先生が出迎えてくれた。


「見て見て! ママの色紙! のうかが描いてある!」


 グッズコーナーを見ていたのうかが目をキラキラさせながら喜んでいる。ほかにもミニ掛け軸やポストカード、ガラガラくじや千本引きのお楽しみコーナー、作家さん渾身のグッズが多数並んでいる。


「のうかちゃん、二階にもママの展示があるよ。ほかにもたくさん作品があるし、景色もすごくきれいだからゆっくり見てきたら?」

「うん! 見てくる! 早くいかなきゃ!」

「あ! 走ったら危ないって!」


 急いで階段を上ろうとしたのうかをマコトが追いかける。少し離れた展示を見ているふゆうに小声で話しかける。


「ふゆう、心配していたことも含め、ゆっくり話して来いよ」

「でも……いいの? もとこ姉さん」

「あの二人のことは任せとけ。ちょうどほかのお客さんもいないからな」

「ありがとう。お母様と話してくるわ」


 曇りがちだった表情が明るくなり、由愛乃先生のところへ駆け寄る。二人でイラストを見ながらゆっくり談笑を始める。


(ほんとにこの二人は姉妹のように楽しそうに話してるな。二階の二人は……大丈夫か。さてと、私も楽しませてもらおう)


 階段を上り、二階の各部屋の展示を順番に見て回る。窓から見える長良川の景色と相まってどの作品も生き生きとしているのが伝わる。そんな時、あの二人の騒がしい声が聞こえてくる。


「もとこさ~ん、助けて! のうかちゃんをとめて!」

「いったいどうしたんだよ」


 マコトの叫びを聞き、まだ見ていない展示スペースに行くと何やら二人がもめている。


「いったい何が……って、のうか、何しようとしているのかな?」

「あ、もとこお姉ちゃん。あのね、()()()を引っ張りだしてあげられないかなって」


 その視線の先にあった一枚のイラスト。もとこの生みの親の作品である。ただ問題なのは、そこに描かれている人物だ。


「のうかちゃん? どうしてそのイラスト選んだのかな?」

「う~ん、もとこお姉ちゃんのお父さんのイラストだし、女の子だし、ちょっと怖い見た目だけど一緒に遊んだら楽しいかもしれないじゃん!」

「のうか、ちょっと落ち着こうか。その娘を呼び出すのは非常にまずい」


 のうかが呼び出したいと言ってきたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。そんな人物を呼び出してしまったらどうなるのか容易に想像がつく。


「やだやだ! この娘と遊びたいの!」

「マコトもぼさっとしていないで早く止めるんだ!」

「僕止めてましたよね? とばっちり?」


 必死でのうかを説得していた時、()()()()()()()()()()()()が近づいてくる。二階の窓から庭に視線を送ると一人の女の子がこちらに向かい歩いている。


「すいません。展示見せていただいてよろしいですか?」


 声が聞こえた瞬間に疑念が確信に変わる。見た目は普通の女の子である。しかし、三姉妹だからわかってしまう。明らかに()()()()()()()()()()()()()を身にまとっているということを。


(ついに来たか、()()()()()()()()


 未来からの来訪者、水無月 莉乃(みなづき りの)と三姉妹。

 本来なら出会うことがなかった四人。一つのイベントが起こした奇跡の物語は新たな展開を迎えようとしている。


お読みいただきありがとうございます。

今回のお話は『時を超えイベント参加?~岐阜市イラスト展2022~』とリンクしていきます。

本来出会うことはなかった4人、これから様々出来事を通じさらなる軌跡を起こしていきます。

岐阜市イラスト展も現在開催中です。

お近くの方、ご興味がある方はぜひ足を運んでみてください!

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