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第6話 ふゆうの心配事

 四月の心地よい昼下がり。お昼ご飯を食べてゆっくりしていたのうかがこんなことを言い出した。


「マコト~、どこか遊びに連れてってよ~」

「どこかってどこに? もう少しで作業がひと段落するからそれからでいい?」


 四月になり、事務作業も落ち着いてきたこと、桜がきれいな時期だから、みんなでお花見兼ねて出かけてみるものいいかと思い始めていた。そんなことを考えていたら、電話で話していたふゆうが戻ってきた。


「今、お母様とお話していたのですが、岐阜市でイラストレーターさんの展示会が開催されているみたいですよ。それで、もし時間があればみんなにぜひ遊びに来てほしいとのことです」

「あ、もうそんな時期なんだ。去年も開催していたし、お邪魔したな~。今年の会場ってどのあたりだっけ?」

「会場は、長良川沿いの一軒家らしいですよ。川原町って言っていたような……()()()()()()()()()()()()()()()だそうですし、今回は一棟丸ごと借りて展示していると教えてもらいました」

「一棟丸ごと会場に? 去年の秋のアマビエ展も一棟だったよな。川原町か、確かレンタル着物があると聞いたし、みんなで散策しながら遊びに行くのもいい考えだよな……」


 それを聞いていた農家の耳がピコピコと動き出す。


「決定! ママも展示しているって言っていたし、行きたい!きっと()()()()()()()()()()()()()()()だし……ねぇ、みんなで行こうよ~」


 何か聞き捨てならない不穏な単語が混じっていたような気がしていたと感じるマコト。そんな時、出かけていたもとこが帰ってきた。


「ただいま。お? なんか楽しそうな話をしているな?」

「おかえり。お昼は食べた?」

「おう、おやっさんのちょっと手伝いの帰りに一緒に食べてきた。今度の展示会で()()()とかいうのをするからってことでちょいと手伝ってきたぜ」


 これ以上ない面白い言葉が飛び出してきたのを聞き逃すはずがないのうかがニコニコしながらマコトに詰め寄る。


「ほら、もとこお姉ちゃんもお手伝いしてきてるんだし、これはやっぱり行くしかないよ! ……()()()()()()()()()()()()()()(ボソッ)」

「のうかちゃん? なんか最後小声でとっても不吉なことを言っていない?」

「ナンノコトカナ? ノウカ、コドモダカラワカラナイ~」

「めちゃくちゃわざとらしいんですけど?」


 いつも通り二人がギャーギャー言い始めているのと対照的に、少し曇った表情で窓の外の景色を眺めるふゆう。


「どうした? 何か心配事でもあるのか?」

「もとこ姉さん……実は先ほどお母様と話したときにちょっと調子が悪くて病院で検査されたと聞いて……元気だから大丈夫だよ! と言ってくれてはいたんですが、やはり、気になってしまって」


 ふゆうにしては珍しく元気がない。誰よりも心優しく、皆のことを心配しすぎて抱え込んでしまう癖がある。


「なんでお前まで暗い顔をしているんだよ! お前がそんな様子だと元気づけようとして、逆に心配かけちまうぞ!」

「うん……頭ではわかっているんだけどやっぱり心配で……」

「大丈夫だ。()()()()()()()()()()()のか思い出せ! そうだ、二人でゆっくり町の散策でもしてこいよ。お互いにいい気分転換になるだろうしな」

「ありがとう、もとこ姉さん」


 少しふゆうの顔に元気が戻った。さすが三姉妹の長女である。

 ここで、珍しく真剣な顔をして小声で話しかけてきた。もとこがこういった話をするときは重大な要件が多い。


「ここだけの話なんだが、私たちを()()()()()()()()()()()()()()()()()()覚えているか?

 」

「もちろんですよ。誰だったか……()()()()()()()()()()()()()()()()()()ですよね?」

「ああ、アイツから念話が来てな。()()()()()()()()()()()()()()()()から頼むと。なんでも自分の資料に手を出そうとした……ということを言っていたな」

「あの人ならやりかねないですね……それで、どこに? まさか……」

「そう、そのまさかだ。今度のイベントに合わせて送り込んだらしい。ま、にぎやかになるから私は構わないし、マコトなら何とかしてくれるだろ?」

「もとこ姉さんもまた……そうですね。マコトさんならきっと大丈夫ですよね」


 ここで言い争いを中断し、のうかとマコトがふゆうたちのところにやってくる。


「あーまた私を差し置いて二人だけで内緒話? ずるい!」

「二人で何の話をしていたの? 何やら真剣な雰囲気だったけど」


 興味津々といった形で二人が詰め寄ってくる。


「ん? 今度イベント行くんだろ? マコトに何買ってもらおうかと話していたんだ。食べ物屋もたくさんあるし、会場で面白そうなグッズもあるみたいだしな」

「そうそう、()()()()()()()()()ならきっと期待に応えてくれると話してました」

「ちょっと! サラッと恐ろしい計画立てているのかな?」


 今度は三姉妹とマコトの日常が始まった。四人集まると始まる楽し時間。

 イベントに行く日も決まり、ワクワクが止まらない四人。

 そして、思わぬ来訪者が待ち受けているとも知らず、春の心地よい訪れが西垣農園にも訪れていた。


 岐阜市イラスト展来場まであと3日


お読みいただきありがとうございます。

今回のお話は初短編小説「時を超えてイベント参加? ~岐阜市イラスト展~」へとつながります。

まだお読みでない方は、ぜひお読みいただけると次のお話をより楽しめると思います!

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