第3話 三姉妹と柿泥棒(中編)
柿泥棒のニュースを聞いてから数日が経った。
地方のニュース番組では特集が組まれるほど被害は拡大していた。
「先週、○○市の柿農園で収穫間際であった富有柿が2日間で6万個近く盗まれ……」
「本日、△△市の柿農園で渋柿用の収穫直前の柿が1万個近く盗まれ……」
他にも農作物の盗難の被害はあるものの、ここ最近西垣農園周辺地区では例年にない規模で盗難被害が発生している。
「うちも数年前に被害にあったからな……警察とJAが見回り強化してくれているとはいえ何とかしないと」
朝の収穫を終え、昼ご飯を食べながら見ていたニュース番組を見ながら、過去の苦い経験を思い出していた。西垣農園も数年前に収穫直前の富有柿の盗難被害にあっていたのだ。
「どうしようもない奴らがいるもんだな!一発ぶちのめして……」
「ちょっと、もとこ姉さん!ノリと勢いでなんとかしようとするのはやめてって言っているじゃない」
「もごもごもご……(ちょっと私の話も聞いてよ!)」
「ほらほら、のうかちゃんはちゃんと飲み込んでから話そうね~」
「あ、ウインナー余っているじゃねーか!頂き!」
「あ、私のヤツ!返せ!」
これがここ最近の日常である。午前中は誰か手が空いていれば収穫を手伝ってくれて、お昼になると全員が集まり、こうしたにぎやかなランチタイムの始まりである。
「それで、だいたい何時くらいにその被害は発生しているのですか?」
おかずの取り合いを始めた二人を横目にふゆうがマコトに対し確認をする。
「だいたい被害にあうのは夜中みたいだね。それも一人や二人でやるような次元じゃないよね」
「ですよね。組織だってやっているとしか考えられないですね」
三人の中では分析に長けており、理論派であるふゆうとどの時間が狙われやすいか話していると、おかず争奪戦の激闘を終えた二人が参戦してくる。
「夜中に被害が多いのか。そうなると、夜の見回りもやらないといけないよな。」
「えっ……夜? しょ、しょうがないから私もがんばらないといけないわね!」
「おい、のうか。怖いんだったら無理しなくてもいいんだぞ?」
「べ、べつに怖くないもん!」
「ほらほら、のうかちゃん。テレビで子猫の特集はじまったわよ」
「え!!見る見る、きゃわいいー」
いつもの三姉妹の言い争いがひと段落した所で、ふうっと息を吐いた。
(今までこんなにぎやかな事ってなかったよな)
三姉妹が現れてから確かに騒がしくなった。だけど、一人で黙々と作業することもなくなり、なんだかんだ言いながらも手伝ってくれる三姉妹に感謝していたのだった。
ここで、ふと先ほどの会話を思い出し、嫌な予感がしてきた。
「夜中に見回りを増やすって言っていたけどそれはいったい誰が? 警察やJAの人たちならもう回っているけど……」
「ん?そりゃ俺達(私達)で見回るにきまっているでしょ」
この流れは嫌な予感がするとマコトは思った。しかしもう手遅れであった。
「よし!今晩から早速見回りやるぞ!」
「夜の早い時間は、ふゆうとのうかの二人でよろしくな」
「はーい」
「明け方は私が回る」
次々と提案されていく様子に一つ疑問がわいてくる。
「えーっと、ところで俺は誰と一緒に回るんでしょうか?」
「ん?そんなの夜中に決まっているだろ(よね)(でしょ)」
「またこの流れかよ! ねえ、俺の扱いだけ毎回ひどすぎません??」
こうして決まった夜回り当番。
マコトに決定権いや、三人に意見を聞いてもらえる日は来るのだろうか?