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魔法杖職人のすごしかた  作者: 夏みのる/もく
一章「聖女殺しの公爵令嬢」編
1/51

1 公爵令嬢アナスタシアの大罪



 中央諸国で二番目の領土を誇る『ラクトリシア王国』は、この先いつまでも世に語り継がれるであろう偉大な女人の出生国である。


 クリスタシア・テイル・ラクトリシア。

 またの名をクリスタシア・ヴァンベール。

 その名を知らぬ者は、おそらくこの国にはいない。


 かつて王女であったクリスタシアは、『聖女』として穢れを浄化する使命を聖堂より受け負った。


 穢れとは、大気中に漂う魔力の素が何らかの変化により毒素として形を変え、害を及ぼす非常に厄介なものである。

 世界が穢れに満ちると、魔物の活発化や自然災害が頻繁に起こりやすくなり、誰もが世界の終焉に怯え日々を過ごしていた。

 その穢れの根源と言われていたのが、当時『世界樹』の頂上を根城にしていた黒きドラゴンである。


 聖女クリスタシアは、仲間と共に世界樹の頂上までたどり着き、戦闘を交えながらも黒きドラゴンの浄化に挑んだ。

 聖女クリスタシアによって浄化された黒きドラゴンは、みるみると姿を変え、美しい鱗を持った白きドラゴンへと生まれ変わった。

 聖女クリスタシアに感謝を伝えた白きドラゴンは、世界樹を離れ大空へと飛び立ち、元の住処へと帰っていったという。


 浄化の旅を終えた聖女クリスタシアと、苦楽を共に過ごした仲間たちは、国に帰り皆から祝福された。



 これは、ラクトリシア王国の歴史に深く刻まれ、未来永劫に語り継がれるだろう。


 聖堂の予言書に記された綴り通り、聖女クリスタシアの名声は、世界中に轟くことになる。

 それは聖女クリスタシアが王家から公爵家に嫁ぎ、自らの子を成してからも変わらなかった。


 クリスタシアは皆から愛され、敬われ、この平和が訪れた世界の象徴として、幸せな日々を送っていた。



 ――十年前の、あの日までは。


 十年前、ヴァンベール公爵邸内で事件が起きた。


 その悲報に誰もが悲しみにくれ、そしてどうしようもない感情の矛先は、ある一人の少女に向けられたのだ。


 ――アナスタシア・ヴァンベール。

 ヴァンベール公爵の長女であるアナスタシアは、齢六歳でありながら大罪を犯した。

 その罪を、誰もが許すことは出来ないのだろう。

 誰も信じられなかった。信じたくなかった。こんな事態、誰も予想していなかったから。


『聖女殺し』


 十年前のその日を境に、アナスタシアは国民から憎まれる存在となった。


 『妻殺し』『姉殺し』『娘殺し』『母殺し』――父親に憎まれ、叔父に憎まれ、国王王妃両陛下に憎まれ、実の兄、また片割れである双子の妹からも憎まれた。


 少女、アナスタシアの大罪。

 それは――魔力の暴走を起こした結果、母と、そしてお腹の子の命を奪ってしまったことである。


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