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超高速うらしまたろう

作者: たぐまに

挿絵(By みてみん)


 はいどうもー。というわけでですね、今回はこれ。どん。

 「浦島太郎」の最速クリアを目指したいと思います。どんどんぱふぱふー。


 まずは名前をデフォルトの「うらしま たろう」から数文字消して「うら たろ」としておきます。


 さあ、それではスタートです!


 まずはチュートリアルで木の枝を採取し、店でクエスト報酬として糸を入手、釣り竿をクラフトするのが基本の流れとなります。

 が、愚直にこれをこなさなくてもですね、皆様ご存知の通り、裏手の納屋(なや)の中に最初から釣り竿が置いてあります。


 納屋の鍵は木登りをして、いくつかあるカラスの巣から¼の確率で手に入れないといけないので、ちょっとばかり面倒です。序盤はスタミナも少ないですからけっこう大変なんですよね、これ。

 ただまあこちらも知っている人が多いと思いますが、実は納屋の右手奥に穴が開いているのでそのまま入ることができます。木の陰になっていて見づらいですが、壁に沿ってうらたろを進めていたら納屋に侵入できるはずです。


 釣り竿を入手するとイベントフラグが立つので海辺へ移動します。

 うらたろが「釣り餌を手に入れないと」とか言いますが無視します。釣りをするのではなくお前をジジイにするのが目的なので。


 海辺に出てからは松林に沿って移動すると、3人の悪ガキがカメをしばいている音が響いてきます。

 最後の松から3歩分ほど手前で、海側に5歩ほど進んだあたりで砂を掘りましょう。さほど深く掘る必要がないので素手で大丈夫です。


 名前を「うらたろ」にしたことで乱数が調整されているので、ここで「傷んだ貝」が手に入ります。あと左に2歩ほど逸れると悪ガキとのイベント戦闘が始まってしまいますから、くれぐれも位置取りには注意します。後述しますが歩数も重要です。


 「傷んだ貝」は、本来、悪ガキに投げて当てると弱体化させることができるアイテムで、低レベルクリアではほぼ必須のものですが、後で使うので絶対に捨てないようにします。


 さて貝拾いをしている間にもカメは殴られ続け、痛々しい効果音が響いてきます。

 ですがこのダメージ判定は音と関係なく、うらたろの歩数に連動しています。具体的には6歩ごとにカメの体力が1減ります。


 ここで重要なのが、ダメージ判定のほうがイベント処理よりも優先されることで、つまりカメがダメージを受ける瞬間にイベントの発生を被らせれば、イベントを発生させずにスルーして先に進むことができるのです!(通称カメタイマー)

 悪ガキ戦発生のイベントマスはこれを想定してか帯状に配置されているようなのですが、悪ガキたちには用がありません。


 貝を掘った地点で4歩足踏みしたあと、松林をあとにします。

 こうすると、普通ならうらたろが「音が気になる」と言い出して、他の場所に行けないはず。ですがその移動不可イベントがスキップされ、そのまま高台に行けるようになります。

 高台には助けていないカメがいますが、その場で5歩足踏みをしてから再び浜辺に戻ります。


 実は浜辺に移動した段階でカメ救助フラグが立ち、高台で海を見下ろしながら、カメからお礼に竜宮城行きの話を持ち掛けられるという一連のイベントをカメタイマーによりスキップした形になります。

 カメは勝手に助かったことになっていますが殴られている音は響き続け、内部的にカメの体力も6歩ごとに減り続けていますが気にしなくていいです。

 我々の目的はカメを助けることではなく、うらたろをジジイにすることなので。


 浜辺に着いた段階でカメに乗って竜宮城へ行くことになります。

 助けてもいない初見のカメの背に動じることなく乗るうらたろ。シュールな図ですね。


 竜宮城に到着して、きらびやかなBGMに混じって殴打音が鳴り続けています。ここで3歩踏んでおき歩数調整し、直進して大広間へ。


 ここからタイやヒラメの踊りやら乙姫様との謁見イベントが本来入るのですが、ちょうどカメタイマーが発動するのでこれをスキップ。

 微動だにしないタイやヒラメを躱しながら、これまた直立不動の乙姫様の左隣に立ちます。


 ちなみにタイやヒラメ、昆布に当たると竜宮城からの強制脱出を企てたパターンと認識されるようで戦闘に入り、数々のイベントをスルーしてきたうらたろに勝ち目はないので、絶対に当たらないようにしましょう。

 最短距離でたどり着けた場合は2歩ほど歩数調整をしておきましょうね。


 棒立ちする乙姫様にアイテム交換を持ち掛け、ここで「傷んだ貝」を押し付けます。交換ではなく一方的に押し付けるだけなので、乙姫様の反応を待たなくて良いです。


 「傷んだ貝」は悪ガキとのイベント戦闘を有利に進めるだけの特殊なアイテムで、うらたろは普通に手放せますが、うらたろ以外が手にした場合は各種ステータス異常が発生します。それぞれ毒、攻撃力低下、呪いです。あと顔が紫色になります。


 ここで重要なのが呪い効果です。

 呪いによって「傷んだ貝」を手放せなくなるのですが、乙姫様は服などの装備品以外にはアイテム枠を一枠しか持っていません。

 そこには唯一、玉手箱が収まっており、しかし捨てられない「傷んだ貝」を押し付けられた結果、何が起こるか。そう。玉手箱をドロップします。


 ドロップ位置はその場が最優先ですが、乙姫様の位置には豪奢な椅子があり、次に優先される左隣、つまりうらたろの足元に玉手箱が転がり落ちますので、即座に拾います。


 ここを逃すと、仮に貝を持ってきていても乙姫様に物理的に近付けるチャンスがほぼないんですよね。

 普通にイベントをこなして玉手箱をもらう直前か、より困難な乙姫様との駆け落ちルートのフラグを立てるかの二択になります。そんな面倒なことはしていられません、はやくうらたろをジジイにせねばならないので。


 玉手箱を拾ったことによってうらたろの行動が終了し、「傷んだ貝」の毒ダメージを受けた乙姫様からは敵対と見なされ、紫色の顔から繰り出す頭突きを浴びますが、攻撃力が低下しているので一撃なら耐えられます。

 乙姫様渾身の頭突きによるノックバックで1歩後ろに下がったところでカメタイマーが発動し、玉手箱入手して地上へ帰還するイベントがスキップされるので、その場で乙姫様まで巻き込んで玉手箱を開封します。


 戦ってもいない悪ガキ、高台からカメとともに見下ろしたことになっている一面の大海原(おおうなばら)、見てもいないタイやヒラメの舞い踊り、海底から見上げて郷愁を感じさせるはずだったボンヤリと滲む月、飲み食いしていない宴会の様子が浮かんでは消えていき、楽しかった竜宮城での日々(幻想)のバックでカメの殴られる音を聞きながら、うらたろ爺と巻き込まれた紫色の乙姫婆が映し出されたところでタイマーストップです。


 お疲れ様でした。

【脚注】

● クラフト

 作る(craft)の意。素材、アイテムを組み合わせて新しいアイテムを作ったりする。

 そうやって物を作る人をクラフターと呼ぶこともある。素材で家を建てたりする人のことはビルダーと呼ぶ。

 魔物の素材や魔術と組み合わせて魔道具を作る人のことを魔道具技師といい、技師が籠もる作業スペースを魔道工房という。



● フラグ

旗(flag)の意。立った、フラグが立った!

「イベントの発生条件を満たした」ような場合に、その目印が立ったという意味合いから「フラグが立つ」と言います。立たなくても「いくじなし! もう知らない!」と(なじ)ってはいけない。



● 乱数調整

 一見して規則性がなくランダムに動いている(ように見える)ものを、特定の行動や入力を与えてやることによって望みの数値を出す行為、またはその技術。



● カメタイマー

 元ネタはFF6のバグ技、マッシュタイマーもしくはシドタイマー。

 ご興味のある方はおググりください。



● タイやヒラメの舞い踊り

「むっかしー むっかしー うっらしっまはー」から始まる童謡「浦島太郎」の二番の歌詞から。奴らは踊る。かなり踊る。



● ドロップ

 落とす(drop)の意。おはじきではない。



● ノックバック

 攻撃をした、もしくは受けた反動で後退すること。攻撃を受けた硬直を意味合いの中に含む場合もある。

 ノックバックさせ続けて一方的に殴り続ける「ノックバックハメ」のような技が存在したりする。

 一方的に殴られる痛さと怖さを教えてやろうか!

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― 新着の感想 ―
[一言] めっちゃ面白かったです! ほとんどゲーム実況は見たことないのですが、楽しく読ませて頂きました。昔話のいじり方のセンスが素晴らしいです!
[一言]  裏手の納屋のところで入手した釣竿を店で売ろうとしたら、「それは うちの しょうひんだ!」と言って店主が襲いかかってきて奉行所に叩き込まれたり、  クラフトしすぎて、するどさがカンストした釣…
[一言] エッセイ「なまこが紹介する、『お気に入り短編集』」の紹介でお邪魔しました。 私はいつも竜宮城から戻ったら、浦島太郎の家が「浦島太郎」という店名のアダルトDVDショップになっているシーンを見る…
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