94.アイリスのガーべ
アイリスっていつも指示をくれるから、アイリスが戦ったらって考えたことなかった。
「助けられんくてごめんな、」
サフラは私を抱えながら言った。キキョウは黙り込んでしまっている。まぁ、この世界に来てから誰かからの打撃で倒れたことなかったしな。そう考えると、運がよかったのかもしれない。
「ありがとう、サフラ、キキョウ。」
「自分がまだまだ未熟だって、思っちまった。ちんちくりんを巻き込んで、助けることもできなくて。」
キキョウもそんなことを考えていたのか。これに関しては、私が焦って突っ込んだ結果なんだけどな。
「私たちももっと強くなろう。もう誰にも負けたくない。たぶん、全員そう思ってるから。」
「そうだな。」
アイリスはというと、ナハトとずっと向かい合ったままだ。アイリスなら、大丈夫。そう思うことしか出来ない。
「今さら戦うってか?欠陥品のお前が?大したガーべも授からず、逃げ出して、お仲間ごっこか。くだらん。俺は昔からお前の雰囲気が嫌いなんだよ。何考えてるか分からないし、なぜか見透かされているように感じる。気持ち悪いんだよ。」
ん?何かひっかかる。だって、アイリスのガーべは、
「ごっこ遊びでもないし、見透かしてるよ。ずっとね。」
「は?お前何言ってんだ。」
「私の本当のガーべは、氷結型じゃないよ。」
そうだ、さっきの違和感。なぜか見透かされているように感じるって言ってた。私にとって、アイリスに見透かされるのは当たり前になっている。アイリスが氷結型?
「じゃあなんだ、お前は複数持ちってことか?」
「まぁそうなる。」
知らなかった。たぶん、私の前では一回も出てない。でも、複数型じゃないってことは、その二つだけ。
「だからなんだよ!お前の雑魚みたいなガーべじゃ、一つも二つも変わらねぇよ。」
「どうだろ、あんま一緒に使ったことないからな。」
相手がイラつき始めてる。イラつきで動くと大抵の攻撃は少し雑になる。でも、火力が上がったりもするから、今日と出るか吉と出るか。
「いいさ、お前らを潰すのは俺だからな。」
その瞬間、ナハトが姿を消した。これがナハトのガーべの強いところ。どこから来るのかが全く分からない。感覚が鋭いとわかるのかもしれないが、あいにく私の感覚は普通だ。
アイリスは、静かに直立している。集中している、真っ暗な世界に沈黙が流れている。その沈黙を破ったのは、ナハトだ。下からアイリスを狙う。が、アイリスはすぐそれに反応し、腕を掴んで暗闇からナハトを引っ張り出した。
「な?!」
ナハトが驚いている間に、アイリスは手に氷を纏い、一撃入れた。
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