93.脱獄
私たちは、サネが取ってきてくれた鍵を使って、牢獄を出た。石階段を上がり、屋敷内に入る。
「おいアイリス。なんかおかしいな。」
「うん、僕たちは完全に遊ばれてる。」
たしかに、牢獄の入口にも出口にも人がいなかった。大したセキュリティもある訳でもないだろう。いや、先代のガーベが最大のセキュリティになるのか。
「そういうことだね。」
移動しても向こうからは丸わかり。裏をとってもわかるなら、正面突破の方がいいか。
「こんなに人のおらん屋敷、初めて見るな。」
私たちは牢獄を出てから、様子を見るためゆっくり歩いていた。
「うん。でも、廊下に出てないだけっぽいな。」
人の声が聞こえない私からすると、この屋敷はもぬけの殻のようだ。こんだけでかい屋敷は静かだと、不気味だな。もし今が夜だったらって考えると、鳥肌が立つ。
「会いに行かなくてええの?声、聞こえてるんやろ?」
会いに?誰のことを言ってるんだろ。アイリスを見ると、少し寂しそうな顔をしている。それだけ、大切な人なんだろうか。
「いいよ、別に。もう五年も前の話だ。子どもの出来心だろ。」
ほんとにそうなのか?出来心なら、なんでそんな顔するんだよ。
「会わなくていいの?」
「うん、会わない方がいいような気がしてる。」
アイリスの作り笑い、わかりやすいんだよな。切ないというか、無理している感が。
「会いたくなったら言えよ、俺たちも付き合うから。」
「うん、ありがとう。」
気になる気持ちは、しまっておこう。アイリスのことだ。私が入ることじゃない。
「タニアさん、大丈夫ですかね。」
「継がせるために捕えてるんだ、手を出すことはないだろう。」
そうか、ならいいんだが。もしタニアさんに何かあったら、また怒り狂ってしまいそうだ。ここに来て、自分の感情が大きくなっている。前の私じゃ、仲間もいなかったし、これだけ怒ることもなかった。
「ここまでだ。」
「誰?!」
振り向くと、私たちのいる空間が真っ暗になっていた。近くにいるみんなの顔はわかる。でも、この空間がどれだけ広がっているのか、距離感が全くわからない。
「この能力、ナハトか。」
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