86.ドキドキの理由
みんなで朝食を食べ終わり、いよいよサリュへと向かう。サネが小さい姿でトコトコ歩いているところは、とても可愛らしいが、街中でモンスターを見たことがない。というわけで、街ゆく人を怖がらせないよう、サネはタニアさんが抱えることになった。
「タニア、よく似合ってますよ。」
「どうも!」
タニアさんの満面の笑みが尊い。なんで私じゃなくて、タニアさんが抱えるのかって?そりゃあ、タニアさんが持ってた方がぬいぐるみっぽくて可愛いからだ。私が抱えるよりも、よっぽど絵になる。
「カリノが見たかっただけじゃなくて?」
アイリスがニヤニヤしながらこっちを見ている。
「べべべべ別に、そういうんじゃなくて!単に一般的に見てって話であって、私が見たいとかじゃないし。サネも私なんかじゃなくて、タニアさんみたく可愛い人に抱えられてた方がいいだろうし。このペアの方が映り良いし、可愛い人と可愛いモンスターでもっと可愛くなるとかそんなんじゃなくて、、、あれ?」
「カリノ、焦りすぎだ。」
私なにを言っていたんだ。自分が口にしたこと、全然覚えてない。でも、アイリスは腹を抱えて笑っている。
「カリノさん、どうしたんですか?」
「なんでもないです!!ほんと気にしないでください!」
タニアさんの上目遣いは、ドキドキする。私は思わず、目を逸らしてしまう。
「アイリスと二人だけの秘密なんて、ずるいですよ!」
そんなことを言われても、さすがに言えない。やばい、ムッとして口をふくらませている姿が可愛すぎる。心臓がはち切れそうだ。そんなことを言ってるうちに、始まりの道に来ていた。やっぱり、人が多い。
「みんなはぐれないようにね。」
ここで心配なのは、背の低いタニアさんだ。見つけるのは至難の業だろう。
「じゃあ、カリノが手繋いであげれば?」
「へ?」
いやいやいや、そんなご褒美、、、じゃなくて、アイリスでもいいんじゃないのか?!
「ん」
手に何かが触れた。と思ったら、タニアさんが私の手を握っていた。顔が熱い。動悸が治まらない。なんで、こんなドキドキするんだよ。
「いや、、ですか?」
また上目遣い。
「嫌なわけないじゃないですか!むしろ嬉しいくらいです!」
あれ、私何言ってんだ。最後のは、余計だろうが。
「へへへ、よかった。」
あぁ、可愛すぎる。こんなの耐えられるんだろうか。サリュに着く前に、倒れてしまいそうだ。できるだけ、このドキドキがタニアさんに伝わらないようにしなきゃ。
読んでいただきありがとうございます。




