84.時間切れ
あれ、今何してたんだっけ。
「おいおい、寝不足なんじゃないのか?ちゃんと寝ないと、ガーベにも影響出てくるぞ。」
兄ちゃんは、ニッコリと笑った。いつもと変わらない兄ちゃんだけど、キキョウはずっと威嚇している。さっきよりも怒ってる気がするけど。
「カリノがタニアの未来予知の人物だとすると、今後重要な人材となってくる。頑張るのもいいが、体調管理は怠るなよ。」
「うん、肝に銘じておくよ。」
一回ガーベの使いすぎで倒れてるしな。兄ちゃんの言う通り、体調管理をしっかりしないと大事な時に動けないとか最悪だ。
「おっと、そろそろ時間だ。」
「もう行っちゃうの?」
兄ちゃんがこの世界で忙しくしているのは分かっている。でも、久々に会えたから、もっと一緒にいたいと考えてしまう。
「あぁ、このあとも会議があるんだ。ごめんな。」
兄ちゃんはそっと私の頭をなでる。
「それじゃあ、またいつかな。」
そう言って、兄ちゃんはギルドから出ていった。それを見送るために人が出ていき、ギルドの中は私たちだけになった。
「おい、ちんちくりん。」
「どうしたの?」
キキョウの表情はやっぱり強ばっている。でも、それを押し殺しているように見える。
「ギルドマスターは、カガチは、本当に兄なんだな?」
「うん、そうだよ。」
「俺の勘違いかもしれないが、なんかあの人、嫌な予感がする。いや、ごめん。人の兄ちゃんに何言ってんだろうな。忘れてくれ。」
「わ、わかった。」
とは言ったものの、あんなに苦しそうな表情をされたら、忘れられるわけがない。なんでそんなに辛そうなんだよ、聞きたいけど聞けない。そんな表情をしている。
「まさか、ギルドマスターがカリノさんのお兄さんだったなんて。」
「私もびっくりしました。」
「そりゃあ、カリノも強いわけやな。」
この世界で再会するなんて思わなかった。でも、目標とする人物が現れた。私は、兄ちゃんのようになりたい。昔のようにまた、追いかけることができるんだ。
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