81.危険なモーヴェ
「じゃあ、噂の複数型も」
「うん、私だよ。」
「そうかそうか、頑張ってるんだな。」
兄ちゃんに認められることが一番嬉しい。目の前に兄ちゃんがいる、そんな現実が信じられない。私も死んでこっちに来たから、兄ちゃんもそんな感じなのだろう。
「それじゃあ、久々に思い出話を聞きたいところだが、まずは仕事の話をしよう。」
兄ちゃんは、私に席へ座るよう促した。私は大人しく兄ちゃんの目の前に座る。私だけの証言では、心もとないのではと思い、みんなも呼んだ。
「さて、モーヴェのことについてだ。」
モーヴェ?あの集団の名前なのだろうか。聞き馴染みのない言葉だ。
「カリノが証言した集団の特徴から言って、モーヴェで間違いないと思っている。奴らは、あの古城で儀式をしていたそうだな。」
「うん、我が主に命の盃を捧げろーみたいなこと言ってた。暗かったし、全員マントがぶってたから、顔までは確認できなかった。」
思い切り閃光弾とか投げて、目を眩ませるべきだったか、今考えてもどうしようもないが、やはり気になってしまう。
「君は通信型だったよね。」
「はい!」
アイリスがガチガチになって、緊張してる。兄ちゃんは、それほど凄い人なんだ。
「声ではなく、変な音がしたと?」
「はい、個人差はありますが、多くの人の心は、軽くエコーがかかって聞こえるんです。でも、古城で聞いたのは、なんと言いますか、人の声のようには聞こえませんでした。」
人の声じゃない、か。あいつらの言う、主ってのは誰なんだ。もし、その主っていうのが人間じゃなかった場合、アイリスはそいつの声を聞いていたことになる。でも、アイリスはモンスターの声は聞こえないはずだ。一体、何を聞いていたんだろうか。
「そうか。」
「ごめん、あまり力になれそうにないね。」
「いや、そんなことは無い。実際、モーヴェと遭遇したってケースが相当珍しいんだ。危険な集団だから、早めに対処したいんだけどね。」
遭遇が珍しいってことは、アジトとかも掴めていない。そもそも、どんな人達がいるのかってのも分かってないんだ。
「まぁあれだ、君たちのパーティは優秀だと俺は感じる。もしかしたら、頼み事をするかもしれない。その時は、協力してくれるかな?」
「もちろんです、僕たちにできることがあれば、協力します。」
みんなを危ない目には会わせたくないけど、世界を救うって、目標はこういうことも含まれているんだろう。
「?!」
なんだ、今の視線。なにか、おぞましいものを感じた。背中が凍りつくような、殺意?なのか。
「どうした、カリノ。」
「いや、なんでもないよ。」
「そうか、ならいいんだが。じゃあ、こっからは緩く行こうぜ!」
なにか良くない予感がする。私たち、大丈夫なのだろうか。
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