77.音
タニアさんとキキョウが聞こえている声の正体を確かめるべく、私たちは古城の奥に進むことにした。
「本当に行くんですか?」
「これは古城の探索クエストや、行かないでどうするん。」
珍しくサフラが前に出てる。心做しかワクワクしているような気がする。
「サフラは、意外とオカルト好きなんだよ。」
アイリスが耳元でコソッと言ってきた。たしかに意外ではある。だって、サフラ目開けれないじゃん。雰囲気で感じ取ってるってこと?
「そこは気にしないであげて」
アイリスも今気がついたようで、クスクスと笑っている。私は震える二人に締め付けられながら、歩き出した。奥に入るにつれて薄暗くなっていく。まだ声は聞こえていない。
「ちょっと待って!」
サフラが急に声を出して止まる。なにか感じたんだろうか。
「うちにも声が聞こえるようになった。でもこれ、おばけじゃないんやないか。」
「サフラ、もう少し近ずいて見よう。とりあえず私とアイリスが聞こえる距離まで。」
「カリノ、待って。」
そう言ったのは、タニアさんでもキキョウでもなく、アイリスだった。私の服の裾を掴み、震えているのが伝わってきた。
「アイリス、大丈夫?」
アイリスの顔は青ざめていた。あ、そうかアイリスは人の心が読めるから。ということは、向こうにいるのはおばけじゃない、人間だ。サフラの感は当たってる。
「カリノ、この音聞きたくない。こんな感じ初めてだ。聞こえるのが声じゃないんだ、音なんだよ。」
「これ以上進むのは危険かな。」
でも、誰がいるのか謎にしたままはよくないかも。でも、こんなに震えてるアイリスを初めて見た。ただ事じゃない、それだけはわかるんだ。
「一旦戻ろうか。アイリスもこれ以上は無理そうだし。二人も怖そうだし。」
「でも、それじゃあクエストが、」
「そこは心配いらないよ。三人をベーアの所に送ったあと、私が確認してくる。」
それが最前の方法だろう。無理に行かせてしまっても、危険にさらしてしまう。
「うちは動けるよ?」
「動ける人がどちらか三人のそばにいた方がいい。それに何かあった時、サフラなら三人を連れて移動できる。」
「うちは戦うことが不利やしな。わかったで。」
外に出ると、少し日が傾いて来ていた。早めに終わらせないと、古城の中も真っ暗になってしまう。
「ベーア、四人をよろしく頼むよ。」
「任せてくだされ。」
私だって、怖くないわけじゃない。不穏な音ってのが気になるけど、行ってみないと何も分からない。私はみんなで歩いた道を戻り、奥に入っていく。
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