74.誰かのヒーロー
「カリノさんもヒーローになりたいんですか?」
お兄ちゃんは私にとって、ヒーローだった。それは、あの時助けてくれたからじゃない。昔からずっと、ヒーローだった。私はお兄ちゃんに憧れてた。
「私は、なんだろう。ただ憧れてただけ。私はお兄ちゃんのようには、なれないです。私はあんないい人じゃない。」
笑えているだろうか、引きつってはいないだろうか。悲しい顔はさせたくない。もう過去の話が始まっている時点で暗い雰囲気だが、こんな話だからこそ、明るくありたい。
「別にお兄さんのようになる必要はないんじゃないですか?」
「え?」
「カリノさんはカリノさんなりのヒーローでいいんです。目指しましょうよ、カリノさんなりのヒーロー!」
私にはタニアさんが眩しく見えた。私なりのヒーロー。それでいいのか。それなら、私でもヒーローに。
「なれるさ、カリノなら。」
「ああ、なんたって俺たちの危機を救ってくれたやつだからな!」
「うちらの中でカリノは、もうヒーローだよ。」
私は少し、お兄ちゃんから卒業しないといけないな。ずっとお兄ちゃん基準だった。今度は、あの時伸ばせなかった手を伸ばすよ。だから、お兄ちゃんには見守っていて欲しい。まぁ、異世界まで見えてたらの話だけどね。
(俺をなめるな、ちゃんと見えてる。)
私は後ろを振り向いた。お兄ちゃんの声が聞こえた気がしたからだ。
「どうかしました?」
「いや、なんでもないです。」
「ちんちくりんの兄ちゃん、案外この世界にいるかもな。」
「いやいや、そんなわけ。」
もし居たら、私はどうするんだろうか。
「よし、気持ち切り替えていこう!今日はとりあえずいいか。明日からまたクエスト再開だ!!」
「頑張りましょう!」
私もこのパーティについていけるように、頑張ろう。
読んでいただきありがとうございます。