72.みんなと私
「もちろん大反対されたさ。フロストはすぐにタニアと僕の家にチクったよ。」
「私たちは家での立場を失いました。」
「アイリスもタニアも部屋に閉じ込められちまった。」
常識や家柄に反した者を潰すのか。そんなこと、あっていいのかよ。あれ、でも二人はここに。
「そう、出てこれたんだ。まぁ、出して貰えたわけじゃないけど。」
「タニアを連れ出すのは、簡単だったよ。うちがずっとついてたから、ガーべで一発。」
「問題はアイリスだった。でも、置いていくなんて選択はなかった。アイリスのガーべでやり取りして、俺が最終的には突っ込んだんだ。」
難しい問題をたくさん乗り越えてる。この四人の信頼関係や雰囲気はそこから来てるんだ。そして、初めて会った時、キキョウが狂犬みたいだったのも仲間を守るためだったんだ。
「あれ、でもキキョウとサフラは大丈夫だったの?」
「あぁ、俺たちはあまりフロストと関わってなかったからな。おかげで動きやすかった。」
そんな過去があったんだ。今は家出中ってことか。そりゃ話しずらいよな。家に追いかけられたりしないんだろうか。
「今は放っておかれてるよ。家で話に出たりはしてるみたいだけど。まぁ珍しいことじゃないんだよ。」
「現にねねも家を出てるだろ?」
「たしかに。」
異世界の家事情は、私の知ってる世界とはかけ離れてる。
「私は家の事情とか、全部を理解できる訳じゃない。だから、意見が合う仲間として、みんなに手を貸すよ。たぶんこれから色んなことが起こる。このことを知った上で私を貫くよ。」
「そうしていただけると、嬉しいです。」
みんなは過去を話してくれた。私はどうだ。まだ思い出すのが辛いか?違う、私は過去から目を背けたいだけなんだ。
「大丈夫ですか?」
タニアさんが心配そうに顔を覗き込んでくる。私はタニアさんたちのおかげで、変われそうなんだ。タニアさんたちは、しっかり過去と向き合ってる。嫌な記憶のまま、心の奥底に沈めていない。私は?私はみんなみたいに強くない。なりたくてもなれなかった。だから、現実を見なくなった。
「カリノ、焦らなくていい。カリノのペースでいいんだ。僕達は、フロストとの事があったから、話したいと思った
。前にカリノも言ってただろ?自分が話したいって思ったタイミングでいい。僕たちも待ってるから。」
アイリスは私の肩に手を置いてくれた。私はみんなの顔を見た。なんて暖かいんだ。その暖かさに触れて、自然と涙が流れていた。
読んでいただきありがとうございます!