70.VSフロスト
「そんな雑魚連れてないで、さっさと戻ってこい。」
フロストは無理にタニアさんを引っ張る。必死に抵抗しているが、体格の差で力が負けている。
「雑魚とは、誰のことですか!このパーティには雑魚なんていません。私にはあなたの方が雑魚に見えます!」
「なんだと?」
もう居ても立ってもいられなくなった。私はタニアさんを掴んでいる手を思い切り掴んだ。
(この手の主を氷漬けにする!)
すると、私が触れている部分からメキメキと音を立てて、フロストを固まらせた。私は凍ったのを確認し、素早くベンチの上に移動した。だがすぐに、
「馬鹿か、俺に氷が通じるわけ、!」
私の狙いは、フロストをずっと凍らせておくことじゃない。ベンチから助走をつけ、全体重が乗った拳をフロストの顔面目掛けて飛ばした。
「がっ!」
フロストは反動でタニアさんの手を離した。その隙に、私はタニアさんとフロストの間に入る。こんなこと、私がしていいのか分からない。だけど、勝手に体が動いていた。
「てめぇ!」
「私は完全に部外者だから、何があったかなんて知らない。けど、タニアさんが嫌がっているのを放っておくことなんて、私にはできない。」
「ちっ。」
フロストはたいそうお怒りのようだ。私が殴った方の口から少し血が出ていた。それを拭いながら、フロストは立ち上がる。
「気が済むまでやってろ。俺はその邪魔をするだけだ。」
「ええ、勝手にやります。」
ほんとに何があったんだ。気になるけど、みんなが話してもいいって思えるタイミングまで待つことにしたんだ。
「それとアイリス。お前は一家の恥だ。実家にお前の居場所はもうないぞ。」
え、それってまずいことなんじゃ。
「わざわざ忠告ありがとう。元々あんな家に残る気なかったし。どうでもいいよ。僕は僕で自分のやりたいことをやる。あんたらに指図なんてされずにね。」
フロストはアイリスの言葉を聞いて、すぐにギルドを出ていった。ギルドの中はシーンとしている。これでパーティのイメージも最悪になっちゃったかな。
「あんたらすげぇよ。」
そんな声と同時に、拍手がギルド中に響き渡った。
「フロストを退散させるなんてやるじゃねーか!」
色んな声が聞こえてきた。
「最悪どころか、最高になっちゃったね。」
アイリスも驚いているようだった。世間の常識から外れたことを言っていたはずなのに、みんなが慕うナンバーワンを殴ったのに。もう引き下がれないぞ、カリノ。
読んでいただきありがとうございます




