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妄想大好きオタクの私が異世界最強になれるってほんとですか?!  作者: 志波ゆき
第五章 もう一人の仲間
66/128

66.勇者

「そんなの嫌に決まってんだろ!」


ポチはそう叫んだ。その目は怒りと涙が溢れていた。依頼主がそっと頭に触れようとした時、ポチは依頼主の手を噛んだ。


「大丈夫だよ、ポチ。」

「大丈夫なわけねぇよ。オレは嫌だよ。」


ポチの涙は怒りではなく、悲しみに変わったように見えた。依頼主がポチを大好きなように、ポチもまた依頼主が大好きなんだ。


「オレは絶対に出ていかないからな。お前が死ぬまで隣にいてやる。タマでもなんでもいい、お前が好きな名前をたくさん読んでくれよ。」


私たちはポチが何を言っているのか、依頼主に通訳をする。


「ポチ、お前は人と話せるんだ。意見の通じるところの方が生きやすいぞ?」

「そんなことどうだっていい!言葉が通じていなくても、心が繋がってると思ってる。だから、ここにいさせてくれ。頼むよ。」


ポチは下を向いて泣いている。そんなポチを依頼主は両手で持ち上げ、自分の膝に乗せた。


「下を向くんじゃない、ポチ。お前はまだまだ先が長いんだ。上を向け!この世界にはお前の知らないことがまだまだある。私が見れなかったものをお前に見て欲しい。」

「わかった。お前の分まで色んなものを見る。でも、最後まで付き添わせてくれ。」


この二人は互いを想いあってる。私たちは、今回のクエスト報酬を受け取らなかった。あの二人の少ない時間に使って欲しいからだ。ポチは依頼主に最後のときまで寄り添うことを選んだ。依頼主もまた、それを了承した。逝ってしまった後、旅することを約束して。


「そういえば、あの人のオーラの正体、私わかったよ。」

「え、なんだったんだい?」

「元勇者なんじゃないかな。リビングに飾ってあった写真を見て思ったんだ。」

「たしかに勇者なら、あの風格で納得できる。」


私が見たその写真の隣には、私たちと二人の集合写真、そして二人の写真が新しく飾られた。


「僕たちも依頼主さんより、もっとたくさんの景色が見られるように頑張ろうか。」

「うん!」



読んでいただきありがとうございます。

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