65.依頼主とポチ
「おぉ、ベルグング様でございますか。」
感じの良さそうな、おじいさんが入ってきた。みんな緊張しすぎて勢いよく立ち上がる。
「お邪魔しております。左側からわたくしアイリス、キキョウ、カリノ、タニア、サフラでございます。」
アイリスが代表して私たちを紹介してくれた。その声は少し震えていて、緊張が痛いくらい伝わってきた。
「そんなに緊張なさらんで、腰掛けてくださいな。」
「失礼します。」
みんな体がガチガチだ。私もさっきまではそんなことなかったはずなのに、いざ依頼主本人を目の前にすると足が震えてしまう。それに、なんだろう、依頼主から変わったオーラのようなものを感じる気がする。
(カリノもか。僕もそんな感じするんだよね。)
あ、アイリスも感じてたのか。この依頼主、何者なんだ。
「おぉ!タマ、やっと出てきてくれたか!」
タマと呼ばれ、ムスッとしている。やっぱり気に食わないんだな。
「あのすいません、そのシヤンについてなんですけど。」
「ん?なにかあったかい?」
「しばらく依頼主さんの前に現れなかったのは、名前が原因だったそうで。」
「名前、とな?」
「はい。本人曰く、タマじゃなくて、ポチがいいと。」
依頼主は驚いている様子だ。そりゃ、いきなり名前がって言われてもピンと来ないだろう。好きで付けただろう名前を否定するのは少し気が引けるが、ポチが言ってる以上、無視することもできない。
「そうか、ポチか。いいじゃないか、ポチ。」
「そんなあっさり、いいんですか?」
「本人が気に食わないのなら、仕方のないことだ。君たちにはその子の声が聞こえるのだろう?」
「はい。」
ポチが話すってことを知っていたかのような口ぶりだ。
「これは推測でしかないがね、ポチの声が聞こえるか聞こえないかの差は、エネから来ていると思うんだ。」
「どうして、」
「初めポチを見つけたのは、声が聞こえたからだった。だけど、その一回を聞いたきり、声は聞こえなくなった。そして、ガーべも使えなくなった。長年使っていたが、期限が来てしまったんだろう。」
依頼主は、もの寂しそうにポチを見ながら語る。ポチも依頼主を見ている。
「だからな、ポチ。お前はその人たちについていけ。私じゃあ幸せにしてやれない。言葉の通じる人の所へ行って、自分が進みたい道に行くんだ。それに私はそんなに先が長くない。な?ポチ。」
今回依頼主がクエストを出したのは、先が長くないとわかって、最後に会いたいと思ったからなのだろうか。ほんとにポチのことが大好きなんだ。
「そんなの嫌に決まってんだろ!」
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