62.迷子捜索開始
馬車で着いた先は、広い草原の中にポツンと佇む一軒家だった。え、こんなんどうやって探すの。
「夜になるまで依頼主は帰って来ないらしいから、適当に探してみるか。」
「え、こんな何もない場所で探すって。目に見えて何もいないってわかるじゃんか。」
依頼主がいないってことは、家の中なんて探せないだろうし。こんなに広いとデカくても分からないよ。
「カリノには知らないんだったな。今回探すのは、シヤンっていうんだ。」
「成長しても手のひらサイズくらいで、すっごく可愛いんですよ!」
うん、私にはそれを言ってるタニアさんが可愛く見える。なんて、癒されるのだろうか。こんな可愛い生き物なかなかいないぞ。
「よっしゃー入ってくぞー」
「え?!」
私は思わずキキョウの肩を掴む。ドアに鍵をかけない人も悪いけど、こんな堂々と不法侵入するのかよ。
「堂々としてたら、ありだね。」
「いやいやいや、そんなわけないでしょ?!」
「冗談だよ。」
アイリスはケタケタ笑っている。どういうことだ。いつもはまともなアイリスまで。まさかこの世界には、不法侵入というものがない、
「いや、あるよ。」
「じゃあなんで」
「依頼主と連絡をとった時に、家の中は自由に入ってくれって言われたんだ。」
あぁなるほど。その情報は出来るだけ早く教えて欲しいよ。
「そんじゃ入るぞー」
入っていいとは言われたみたいだけど、やっぱり気が引けるな。知ってる人ならまだしも、知らない方だし。みんなはどんな感じだろうか。あ、普通に入っていくじゃん。躊躇いとか全然なさそうじゃん。
「よし、探すぞー!」
「タマちゃーん、どこですかー?」
各々タマを探し始める。
「サネ、タマを探すの手伝ってね。」
「お任せ下さい、主。このサネが必ずやお役に立って見せましょう!」
「うん、頼んだよ。」
サネが異常に張り切っている。出番がなくて、お留守番ばっかりだったからかな。ほんとにごめん。よし、私は私で探し始めるか。
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