60.再始動
私が退院してから、二日が経った。異世界に来て十日目。また徐々にクエストをこなして行くことになった。ウキウキしながら、掲示板を見に行くキキョウの姿が少し懐かしかった。
「最初だから討伐じゃない方がいいと思ってよ、これ!」
キキョウが持ってきた紙には、「見つけてください。」と書かれてあった。迷子探しかな?
「こういう系統はやったことなかったね。この機会に色々触れておこうか。」
写真を見る限り、可愛いわんこだ。でも、それは私がいた世界線での話だ。この世界はなんでもデカすぎる。
「今回はキキョウの足が役に立ちそうだね。」
「ほんとか、ちんちくりん!」
「うん、機動力が一番あるから、状況に対応しやすいだろうし」
キキョウがすごい前のめりだ。目もキラキラしている。クエストが楽しみで仕方なかったんだろう。
「サネには匂いで探してもらおうかな。」
「お任せ下さい!このサネ、必ずやお役に立って見せましょう!」
サネの様子を見ると名前気に入ってくれたんだなと思う。でも、その分サネの仲間のことも考えてしまう。あいつが帰ってきたという情報が未だに入ってこない。私は倒れて動けないときもあったから、なんか色々溜まってる。疑うのは好きじゃない。だから、早く話がしたい。
「おーい、行くぞーちんちくりん!」
いつの間にか席に座ってるのは、私だけになっていた。みんな出口に向かって歩き出している。もうちょっと早く声掛けてくれよ。私はみんなの元に走っていった。サネもちゃっかりこっちにいるし。
「言っておくけど、結構声掛けたからね。」
「え、ごめん。」
「悩むのもいいけど、まずは強くならなきゃね。」
「うん、がんばるよ!」
ガーベ発表会のとき、氷結型を使えたのはいい。だけど、実力差があった。そこをなんとか埋めたい。かけている年月が圧倒的に違うのはわかってる。転移されたからには、やってやらなきゃじゃん。そんな短時間じゃ無理って思われるだろうけど、オタクだしさ、色々憧れちゃうのさ。
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